2月13日(水)から15日(金)まで幕張メッセ(千葉県)で、小売・中食・外食業界向けの商談展示会「FOOD TABLE in JAPAN 2019」が行われた。同時開催された4展の1つ、『第53回スーパーマーケット・トレードショー」(主催:一般社団法人全国スーパーマーケット協会)には、3日間でスーパーマーケット(SM)業界や食品流通の関係者など8万8412人が来場した。

 この展示会、食品メーカーや卸、設備機器、情報サービスなど2176の企業・団体などが出展し、地域産品や海外商品も紹介、今後のSMや食品流通、食のトレンドなどを占う意味でも注目されるものだが、今年、メインテーマに掲げたのは「創 ニッポン」。ECの台頭、AI・IT活用、人手不足、消費者の意識や行動の変化など業界を取り巻く環境が大きく変わる中で、さまざまな課題の答えを創り、豊かな地域社会づくりに貢献していくことを目指している。

安全・安心、日本ワイン、海外食材活用の特集展示も!

 メーカーの注目商品などは別稿に譲るとして、主催者企画を紹介すると、安全・安心では、国際基準のHACCPの取り組みが進む中、青果、鮮魚、精肉、惣菜での情報提供を行った(「食の安心・安全対策コーナー」)。

 

「てづくりNIPPONでは日本の伝統・伝承を重んじ、地域や質にこだわった作り手の技や想いを、地域の食生活や食文化、歴史を絡めて提案したが、今回は日本ワインをはじめ、各地の日本酒、焼酎を紹介。

 

 日本であまり知られていない海外食材を、家庭料理で活用する方法と一緒に紹介、レシピ動画やシェフによる調理実演も行われた(「世界の食材でつくるウチメシ」)。

 

未来のSMには「3つの役割」が求められる

 その主催者企画の中で最も注目されるのがFuture Store “NOW」。未来のSMを生活者と小売業の目線で中長期的・継続的に研究、「近未来に対応するために今解決すべき課題およびその先に考えられる未来」をテーマに展開している協会主導のプロジェクトだ。

 

 今回はVIVID MARCHE ~人に近づき、寄り添う~」をテーマに、これまで1年間の情報収集・研究の成果が発表され、生活者の調査をもとにした豊かなSMの役割として3つのスタイルを導き出した。

生産性向上に不可欠な費用対効果の高い壁

 (1)「スマートコミュニケーション」は、最新テクノロジーを活用した店舗のスマート化により、生産性の向上を実現し、顧客、従業員双方の負荷を軽減しようとする取り組み。AI/IoT/AR/モビリティカー/ドローン/5G/画像認識/レジソリューション/電子決済/デジタル家電/冷蔵ショーケース/受取ロッカー』での展開を想定している。

 生産性の向上は業界の長年の課題であり、負荷軽減も顧客サービスの向上も省力化・省人化による効率化が図られるが、ハードルの高い費用対効果の問題をクリアして具現化できるかがポイントとなりそうだ。

ウエルネスにどれだけコストをかけられるか

 健康状態のチェックや食事・食材に対するアドバイスによる健康サポートの2)「ウエルネスサポート」。想定する展開分野は『AI/センシング/キネクト/5G/ウェアラブル端末/画像認識/ヘルスケア/食品鮮度維持/シェアリングエコノミー/IoT/音声認識/ビッグデータ』。

「ウエルネス」は幸福で充実した人生を送るために、われわれの毎日の生活を見直し、改善が必要と気づいた生活習慣の改善をしていこうというもの(日本ウエルネス学会)で、健康より幅広くより積極的な概念。SMに限らず、ドラッグストアやコンビニ、ショッピングセンターなどでも対応が見られ、小売業界が取り組むべき課題の1つ。食を基軸にマーチャンダイジングだけでなく、利便性の高いサービスの提供や地域との連携も求められ、どこまで踏み込んで展開できるかが問われている。現時点では、生活者の相談や問題解決に対応する態勢づくり、有人やテクノロジー活用を問わず、どこまでコストをかけられるかが焦点となる。

リアル店舗に求められる家族や地域の活性化

 リアル店舗の存在理由が問われる中で打ち出したのが、3)「エンターテインメント」。空間演出やプロフェッショナル、AI・IoTの活用により、家族や地域のコミュニケーションを活性化させ、「新たな知識」や「ワクワクする価値・体験」を提供する店舗の実現を目指す。AI/IoT/画像認識/食品鮮度維持/ロボティクス/AR/プロジェクションマッピング/グローサラント/5G/VR/カリスマ人材派遣/キネクト』での取り組みを進めようとしている。

 こうした取り組みは、日常生活での利便性を追求してきたSMにとって、一部で展開は見られたものの、縁遠いもの。今後は『マグロの解体ショー』レベルにとどまるのではなく、来店動機になる魅力的なコンテンツを打ち出せるかが重要だ。ただ、『ワクワクドキドキの体験はSMで、商品の購入は利便性の高いネット』となっては本末転倒なので、しっかり売上げに結び付ける仕組みづくりも必要になる。

 この「Future Store “NOW”」は極めて興味深い取り組みだが、今回の展示からは方向性は明らかなものの、どのように着地するかは見えてこない。これから1年かけて、どのような具体的なコンテンツが出てくるのか。来年はいよいよ、5年から10年後の近未来のSMモデルを体感・共感できるデモ店舗をお披露目する予定で、注目される。

レジでかかる時間が30秒だけの新しい買物体験

 

 このプロジェクトのスポンサー企業である寺岡精工は、自社の出展ブースでスマートフォンを使い、売場の商品をスキャンしながらマイバッグに入れて買物をする次世代型スマホレジ「Shop&Go(ショップ アンド ゴー)」を披露した(専用のアプリとセルフ精算機の導入が必要で、既存のPOSシステムはそのまま使用できる)。

 同社が実施したアンケート調査によると、SMでの買物で嫌だと思うのが「レジでの待ち時間が長いとき」で55.9%と最も多い回答。3人に2人が買い忘れたものをレジ待ちが原因で追加購入しなかった経験があり、購買の機会損失を招いている。

 

 通常のレジとShop&Goで、商品の袋詰めまでの時間を比較すると(12品購入の場合)、通常レジでは546秒(レジ待ち360秒、商品スキャン48秒、会計42秒、袋詰め96秒)。これに対して、Shop&Goではレジ待ちがなく、レジでの商品スキャンと袋詰めが不要。レジでかかるのは会計の30秒だけと大幅に時間を短縮できるという。

 スマホで商品をスキャンしながらスマホで精算という新しい買物体験は、レジ待ちというストレスを解消し、スマートコミュニケーションにもつながるもので、寺岡精工はこの3月からサービスを提供する予定だ。

 今回のスーパーマーケット・トレードショーではSMが抱えている課題にどう対応し、どのような方向に向かうのか、うっすらと見えてきたように感じられた。来年はその流れがより鮮明になり、次代のSMの輪郭もはっきりしてくるだろう。