「安さ」を訴求するために「理由」をつくる

――メニューは基本的にお1人さま向けのスモールポーションですね。これであれこれ注文できて、「BKSで食事をするとこの程度の金額」という感覚が刷り込まれるのではないでしょうか。

松本 客単価は2200円です。お客さまはグループよりもお1人さまないし2人などの少人数が多いです。このような形でリピーターが増えています。

フードメニューは約60品。客単価2200円

「ステーキな毎日で、ステキな毎日を!」というキャッチコピーをアピールしていて、これは現在商標出願中です。そこで、BKSでは「ステーキ」を看板メニューに打ち出しているのですが、初めて来店したグループのお客さまがメニュー選びに悩んでいたり、「こちらの店のお薦めは?」と尋ねられた場合は、メニューの左上にある肉メニュー5品を全て食べていただくことを提案しています。BKSはちょっとずついろいろなメニューを食べていただきたい、というコンセプトなので、最初に肉料理の5品を食べてみることで、BKSの楽しさを知ることができるのです。

「名物ビフテキ(50ℊ)」290円。「290円でビフテキを出そう」という発想で造り込んだ

 特に看板メニューの「名物ビフテキ(50g)」290円は、グラム数に対しての価格の低さが目立ちます。

 当初からビフテキを290円で売りたいという思いがありました。しかし、290円という低い価格で売るためには「意味」が必要です。商品が「安過ぎる」というイメージを抱かれると、「何か変なものを使っているのではないか」と思われるという懸念がありました。そこで「50g」と表記することで、「50ℊだから安いのか」と納得していただこうと考えました。

 私が塾生となっている経営塾で、ある地方都市のスーパーマーケットの会長からこのような話を伺いました。缶コーヒーを安く仕入れることができたので、1缶50円で売った。それが全然売れなかったという。そこで、全部の缶にハンマーで傷をつけて「訳あり缶コーヒー」として売ったところ、それが飛ぶように売れたということでした。

上場を視野に入れて社員教育を充実させる

――FC展開をするために、オペレーションの仕組みをどのように整えていますか。

松本 ステーキとハンバーグはオージーを使用してクオリティが安定した仕入れルートをつくりました。また、ビフテキのカット、ハンバーグの成形、その他の肉の調理は業者さんが行っています。

 人気メニューのポテトサラダはPBを仕入れて、各店舗で野菜を加えるなどして完成させています。この他、ステーキのタレ、唐揚げソース、ピクルスの素、アヒージョソースなどPB商品を充実させていて、調理はアルバイト中心で行うことができます。これらで、フードコスト34%、レイバーコスト22%を標準としています。

 BKSが訴求している「差別化のポイント」は大きく3つです。

 まず、「日本最大級の大衆ビフテキ&ハンバーグ酒場チェーンを目指す」ということ。その背景にあるものが、「流行り廃りがない大衆商材がメインで低価格」「調理未経験者でもハイクオリティの料理が出せるシステム」「チェーン店での安心感を目指す」ということです。

新橋店は7.64坪30席で坪売上げが75万円と坪効率ナンバーワン
歌舞伎町店(20坪60席)は月商1000万円。一様に客席の配置の仕方が巧みだ

 既存店の収益性も安定しています。新橋駅前ビル1号館の地下1階にある新橋店は7.64坪30席で坪売上げが75万円、アパホテル秋葉原店は昭和通り近くにあるアパホテルの1階にあり13.5坪35席で48万円です。また、売上げで最も多いのは歌舞伎町(20坪60席)で2018年12月に1000万円を売り上げました。

 このようにFC展開の体制を整えましたが、アルコールを提供するという業態特性から立地は限定されると考え、当面は200店舗と想定しています。直営店は年間2~3店舗のペースで出店する方針ですが、FCに関してはこの2年間で25店舗を想定しています。

――上場を視野に入れているのでしょうか。そのために店や会社はどのように変化し成長していくのでしょうか。

松本 「2023年上場」が目標です。それに向かって、BKSは時代に合わせて変化させていきながら、例えばセブン‐イレブンやスターバックスコーヒーのように、BKSのブランドを磨いていき、街に欠かせない存在にしていきたい。

 そして、会社を成長させていくために現在約30人の社員の教育・研修環境を充実させています。私が受講したMG研修を全員に受講させる他、“思考・行動特性を知り生産性を上げる”EG(emargenetics)研修も行っています。

 BKSが好調に推移していて、会社の経営も安定してきたことから、昨年は採用費と教育費に多くを費やしました。

 そこで、今年は投資があまり負担とならない直営店2店舗の出店と、FC店を増やしていく方針です。

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[千葉哲幸の取材後記]

 松本氏の談話から、奴ダイニングの成長の基軸が整っている様子を感じた。若いながら事業家としての風格があった。

 さて、アパホテル秋葉原店では、2月から土日祝日の営業時間を13時スタートにした。秋葉原という街がサブカルチャーの聖地として注目され、週末や祝日にはイベントや買物でたくさんの人が訪れることから、これらの人々に「昼飲み」を楽しんでもらおうと考えた。

アパホテル秋葉原店「昼呑みキャンペーン」に長蛇の列
2月中の土日祝日の13~18時限定で「ジムビームハイボール」が何杯飲んでも無料

 これらを印象付けるために同店では2月中の土日祝日の13時~18時の間、「ジムビールハイボールを何杯飲んでも無料」という「昼呑みキャンペーン」を行っている。このプロモーションの力は絶大で、13時スタート前から店頭に長蛇の列がつくられて、それが18時近くまで続き、無料の時間が終了しても店内はほぼ満席の状態となっている。

「何杯飲んでも無料」とは思い切った打ち出し方だが、これによってBKSを初めて体験するお客さまもそのメニューの楽しさを知り、この使い勝手が刷り込まれることになる。

 このようにメニュー設計しかり、プロモーションしかり、奴ダイニングのBKSにはフードサービスの新しい形があふれている。