株式会社奴ダイニング 代表取締役 松本丈志 氏

 昨年10月にFC(フランチャイズ)本部を立ち上げて、この1月から加盟店の募集を開始した「BEEF KICHEN STAND」(以下、BKS)という肉バルの存在を知った。同店を経営するのは(株)奴ダイニング(本社/東京・秋葉原、代表取締役/松本丈志氏)である。同業態は2016年3月に1号店がオープンして以来、直営で東京・神奈川に計7店舗を出店、これらの実績を踏まえてFC展開を行うことになったという(全社では計11店舗)。

 この話を聞いて早速、新橋店アパホテル秋葉原店を訪ねた。率直な印象は、まず、小さな物件に客席を効率よく詰め込んでいるということ。そして、価格が驚くほどに安い。

メニューの左上のキラーコンテンツの肉メニューを5品集めた。価格の低さに驚く

 A4見開きのメニューを開くと、左側の上に「MEAT 肉料理」という囲みがあり、「名物ビフテキ(50g)」290円、「オールビーフハンバーグステーキ(120g)」380円、「牛ハツのレアロースト」290円、「四元豚ポークステーキ」380円、「大山鶏のチキンステーキ」380円がラインアップされている。これらが同店のキラーコンテンツであることが伝わってくる。 

 それ以外は「ALL100円」2品、「ALL110円」5品、「ALL130円」6品、「ALL150円」7品、「ALL199円」16品、「ALL290円」9品、「ALL380円」8品と、価格で分類されたものを含めて約60品目がラインアップされている。

 アルコールは一般的な価格である。ハイボール、ビール、日本酒、ワイン、カクテル等々、大衆的なものをほとんど取りそろえていて、角ハイボール390円、プレミアムモルツ生399円、こぼれワイン(赤・白)390円となっている。

 この業態はどのような発想から生まれたのか、利益は出ているのか、どのような展望を描いているのか。これらを同社代表取締役の松本丈志氏に聞いた。

創業当初から店舗展開するための仕組みを作る

――飲食業を手掛けることになったきっかけはどのようなものですか。

松本 私は1978年10月生まれ、横浜の出身で、祖父は横浜・野毛で寿司店を展開し、父は横浜・磯子で寿司と和食の店を営業するという飲食業の家で育ちました。

 高校生のときに将来、飲食業の経営者になることを志して、将来、料理人を束ねる上で調理技術を身に着けておくべきだと考え、高校卒業後に“指導が厳しい店”と知られていた東京・西荻窪にある寿司店に入りました。同店で5年間修業して、その後、父の店に入りました。

 父の店は年商約2億円の規模で推移していたのですが、商いを大きくするという意向がなく、拡大を望む私とは意見が合わず、私はそこを抜け出して起業しました。

 2008年9月に創業の店をオープンしたのですが、父の店がある隣駅の街に出店したので、同じ商売をしてはいけないだろうと考え、寿司と和食の技術を生かした和食ダイニングの業態にしました。その後、2010年11月、2号店を出店するタイミングで(株)奴ダイニングを立ち上げました。

 同店は努力のかいがあり繁盛店となりましたが、街の雰囲気との違和感を抱いていたことから、営業を開始して1年半が経ってからもつ鍋の店にリニューアルしました。また、もつ鍋と同様に少人数でオペレーションが可能なもつ焼きの店をつくりました。このような具合に、飲食店の店舗展開を志して、そのための仕組みづくりを考えていました。

研修・セミナーに参加して業態のアイデアを生む

――店舗展開は、順調に進んで行ったのでしょうか。

松本 それが、5~6軒の業容となった2013年当時、経営に行き詰りを感じるようになりました。ここから経営に関する勉強を熱心に行い、研修にも盛んに参加するようになりました。この間に受けた経営シミュレーションのMG(マネジメントゲーム)研修は、現在、当社の主力業態となっているBKSのアイデアをもたらしたのです。

 MG研修の中にはMQ会計というものがあります。これは「荒利を高める」という経営の考え方をたくさん模索するというものです。例えば、経営のセオリーとは「売上げを上げて経費を下げる」ということですが、「原価をかけて売価も上げて、お客さまの数を減らして荒利をとる」という考え方や、「売価を下げて、原価が上がるけれども、お客さまが増えることで荒利をとる」等々、たくさん想定されます。ここで私は経営に対する考え方が広がるという経験をしました。

 この当時、9坪の物件を獲得しました。「この物件をFCに加盟して生かそう」と考えて、FC展開で成長している飲食業界のさまざまな先輩にFC加盟の相談を持ち掛けたところ、「狭い」という理由で断られていました。

 では、自分でこの物件を生かせる業態をつくろうと考えて、日頃、店舗展開が可能と考えていた他のさまざまな業態を研究し、テーブルの高さや客席を詰め込むポイントなど、先輩のアドバイスを参考にしながらそれぞれの要素を取り入れて、BKSの1号店である新杉田店をオープンしました。「ビーフキッチンスタンド」と店名に「スタンド」を付いているのは、この店を立ち飲みにしたからです。

――BKSはどの段階でFC展開を想定するようになったのでしょうか。

松本 それは最初からです。飲食店をFC展開するためには「大衆」の業態であることが重要だと考えて、BKSの形を造るまでにはその感覚を大切にしていました。

「焼き鳥」を筆頭に「串カツ」「餃子」など、店舗展開をしているところには、それが持つ「大衆感」があります。そして、既に大きな勢力となっています。今からこの領域に飛び込むのは避けるべきではないかと考えました。

 そこで、「ステーキ&ハンバーグ」に目を転じたときに、この業種はファミリーを想定した食事が中心の大型店がほとんどであることと、これらをつまみにお酒を飲むというコンセプトの店がないことに気付いたのです。

 そして、メニューの軸を「洋風」として、「ステーキ&ハンバーグ」をメインに他のほとんどは大衆感のある肉バルとしてまとめ上げることにしました。

 BKSの一番の特徴は、「大衆」で親しみのあるメニューがバラエティに富んでいて、フードメニューで一番高いものが380円で、商品の価格が安いということです。ここにMQ会計が生かされていて、荒利ミックスによって荒利を生んでいるのです。

 具体的には、原価率80%のものがあれば10%の商品もあります。価格は低くいですが、全部の商品が黒字になります。