NB軸で採算を取る方法はある!

 それでは『NB軸のジーンズセレクトショップ』という構想を捨てるしかない、かというとそうでもない。「定石」と「逆説」、ふた通りの選択がある。

「定石」とは多くのセレクトチェーンがたどった選択で、SPA的なオリジナルで値入れと回転を稼ぐ一方、NBのセレクトや別注でリミックスを掛けて品揃えの魅力を訴求するというもの。このやり方では、需要予測を外さず在庫コントロールがうまくいく限りは(離陸までの数シーズンはうまくいかなくて当然)PLは改善されるが重在庫になりがちで、キャッシュフローに余裕がないと苦しくなる。

 極端な話、『売れ残れば無理に値引き処分せず持ち越せばよい』と割り切るぐらいの図太さとそれが可能な定番性が必要だ。ロードサイドの紳士服店など、そんな在庫政策に徹しているし、ワークマンは定番商品の10年継続保証!と需要予測のアルゴリズム精度向上に注力している。

 需要予測と在庫コントロールがうまく回り出せばオリジナル比率を高めて収益性を改善できるが、そのゴールはセレクト比率が低い『セレクトスパイスSPA』であって『セレクトショップ』ではないかもしれない。収益性とセレクトショップ的なリミックスの魅力やNB商品の継続提供を両立するバランスがどこに帰着するかは結果論だが、経験値としてはセレクト比率40%(別注品を含む)あたりが理想ではないか。

「逆説」とはNB本来の期中補給力を最大限に引き出すVMI(Vendor Managed Inventory:納入業者に品揃えと数入れ、在庫管理を委託する方法)の活用だ。本来NBベンダーは店頭消化と生産を直結する看板補給が売り物のはずだが、ジーンズのNBベンダーは長年の市場萎縮で期中の補給機能をほとんど放棄している。ジーンズやシューズなどサイズ補給が要となるカテゴリーではVMIによる看板補給がNBの存続条件となるが、その崩壊がジーンズ専門店業界の衰退を加速したと言っても過言ではあるまい。

 VMIではシーズンごとにカテゴリーの棚割りとSKUフェイシング数量を定めて立ち上げ在庫を買い取り、以降はリンクしたPOS情報に基づいてベンダーがEOS(発注書不要)で補給する。量販店の衣料部門で利益を出しているのはSPA的ロット買取のアパレル部門ではなく、VMIでEOS補給する肌着・靴下部門だということは知っておくべきだ。

 ワークマンでもベンダー商品の87%はアルゴリズムに基づくEOSで発注書なしに補給されており、どちらも継続する定番商品が大半ということもあってベンダー商品とPB商品の荒利益率には全く差がない。NB商品のVMIはライトオンにとって画期的な突破口になる可能性がある。 

ライトオンの抱える根本的課題

 モールサイトを撤収して自社ECに注力するとはいえ、EC売上げは全社売上げの5%未満としか公表していないし、自社EC売上げはその半分以下ということになる。全社売上げから見て15億〜20億円程度なのだろうか。

 サイトを見る限りコーポレートサイトとも連携したシンプルな構成で、最新のパッケージをベースに親切で使いやすく構築されており、店舗在庫検索も店舗受け取り指定(店舗決済)も容易にできるし、チャットのカスタマーサービスもある。惜しむらくはカテゴリーやブランドが前に出てヘッドページに一覧性がなく、最上部にあるのに検索枠が見つけにくく、さまざまな属性検索が可能なのに見つけるまで何回ものクリックを要することだろう。ECフロントの仕組みは合格だがヘッドページの構成とデザインはいまひとつ、といった評価だろうか。

 それもともかく、スタッフスタイリングをどう検索しても今風の鮮度あるストリートスタイリングが出てこなかったのには正直、ショックを受けた。店頭で見ても昔ながらのジーニングとアメカジにチャンピオンのスウェットとディッキーズのワークウエアが加わるだけという数年続く陳腐化した品揃えには腰が引けるが、若い店頭スタッフの感性が反映するスタッフスタイリングには期待していた。それでも古典的なアメカジとジーニングの枠を出られないというのはどうしてか、検索条件のブランドリストを一覧して腹に落ちた。今どきのエクストリームスポーツやスニーカー軸のストリートブランドが全く見当たらないのだ。これでは昔ながらのスタイリングしか出てこないのは致し方ない。

 “ノームコア”以来の6年間でカジュアルは根底から一変した。作り手側のクリエイションやこだわりから使い手側のウェアリングや生活感にカジュアルの主導権が移行し、“アスレジャー”でアメカジとジーニングからスポーツウエアとドームウエアにカジュアルアイテムの軸が移った。ストリートのスタイリングを見ていれば誰でも分かる変化だったのに、業界人的なこだわりで視野をふさいだ人たちには見えなかった、いや見たくなかったのだろう。

『NB軸のマーチャンダイジングには限界がある』としたが、多くの顧客に支持されて高い販売効率を実現すればその限りではない。ライトオンの年間坪販売効率は96.4万円と100万円にも届かず、国内ユニクロ(343.5万円)の3.6分の1にすぎない。それだけ顧客層が薄い、あるいは人気がないということだろう。ライトオンの可能性を閉ざしているもの、それは自らを縛るカジュアル観とNB観ではなかろうか。