『会員になれば誰でも常時値引き販売になるZOZOARIGATOが出店アパレルの反発を招いてZOZO離れが広がっている』という図式でライトオンのZOZO撤退がやかましく報道されているが、この話はちょっと怪しい。

モールサイト総撤収が実態だ!

 まず、ライトオンが撤退しているのはZOZOTOWNだけではない。18年8月期決算発表時にECを積極拡大するとして挙げられた7つの展開モールのうち、現在も稼働しているのは楽天だけで、アマゾンにもショップリストにもヤフーショッピングにも見当たらないし、マガシークとマルイウェブチャンネルはZOZOTOWNと前後して閉店している。ZOZOだけでなくECモールから総撤収しているというのが実態なのだ。

 新聞報道などによれば、『ジーンズショップからジーンズのセレクトショップを目指してNB軸のプロパー販売を強化していく過程だから、ZOZOARIGATOの常時値引き、とりわけ新規入会月の30%オフという値引き販売を許容できなかった』『自社ECサイトや実店舗で獲得した顧客が(価格差で)ZOZOに奪われてしまう』が撤退の理由とされているが、これだけが理由ではなかったはずだ。

 確かにNB軸のプロパー販売を強化したいなら、他の卸先と販売価格が異なってしまうプロパー期の値引き販売はNB側の理解を得られない。それは百貨店が単体売上げの7割近くを占めるオンワードとて似たような事情だったと推察される。ならばZOZOTOWNだけ撤退すればよいのに、どうして他のモールまで撤退しているのだろうか。

ZOZO撤退の本当の理由は何か?

 

 察するに、(1)買取仕入れのNBを販売手数料の高いモールサイトで売っては採算が合わない(2)ライトオンが扱うようなカジュアルNBは値引き販売に食われて売上げが伸びない、の2点が背景にあるのではなかろうか。

 当社主宰SPAC研究会のメンバーアンケートでも、ブランド品のセレクト調達はSPA的なオリジナル調達に比べ12〜18ポイントも荒利益率が薄くなるし、展示会発注では消化回転も年間2〜4回にとどまるから、交差比率もオリジナル開発の半分強ほどになってしまう。これでは儲かりようがないから、NB軸のセレクトショップは路面はともかく賃料負担のかさむ商業施設では成り立たない。それはECモールとて同様なのだと受け止めたい。

 故に『自社ECこそがわれわれの世界観を表現できる場であり収益性も高く、人材や資金を集中していく』という発言になる。17年8月期の赤字転落からようやく水面に顔を出したばかりのライトオンにとって収益性の改善は最優先課題であり、手数料率負担の重いモールサイト、とりわけ後発の出店で手数料率負担がかさむZOZOTOWNからの撤退は不可避だったのではないか。

 ZOZOARIGATOは決断のきっかけに過ぎなかったのが現実で、ZOZO離れとしてメディアが騒ぎ立てる意味はない。むしろ、ライトオンの収益体質の課題、とりわけ『NB軸のジーンズセレクトショップ』という基本構想の抱える矛盾を露呈したのではないか。

NB軸のマーチャンダイジングには限界がある

 

『NB軸のジーンズセレクトショップ』を標榜するライトオンの商品政策は空回りしているきらいがある。まず、必ずしも顧客が受け入れていない。

 既存店売上げ前年比の推移を見れば、18年の春夏以降は若干、上向きだしているとはいえ水面の攻防で、NB軸で客単価が上がった分、客数が減るというシーソーゲームを繰り返している。アスレカジュアル化してTPOレスになっていくカジュアル市場の価格抵抗感は極めて強く、NB軸で単価を上げていくという目論見には無理がある。加えて、NB軸のマーチャンダイジングには採算性の壁が指摘される。

 かつて路面店主体だったセレクトショップも駅ビルなど商業施設への出店が増えるにつれてオリジナル比率が上昇し、今日の大手セレクトチェーンではNBなどセレクト商品の比率は3割前後まで減っている。荒利益と賃料負担のバランスを求めた必然の帰結だったのかもしれないが、『賃料負担のかさむ商業施設ではセレクト比率の高いアパレルチェーンは採算が厳しい』という公理が定まったのは間違いない。

 

 ライトオンとて、かつては賃料負担の軽いロードサイドの定期借地店舗が中心だったが今世紀に入って以降、定期借家契約による商業施設テナント店舗が主流となり、18年8月期連結決算では賃借料と減価償却を合わせて売上げ対比16.5%も負担している。それらを含めて47.0%もの経費がかかっているのにNB軸のマーチャンダイジングでは荒利益率が48.5%に止まり(それでも近年の最高値)、販売不振で値引きロスがかさめば容易に赤字転落してしまう。

 48.5%という荒利益率もNB軸業態では突出して高く、オリジナルが過半を占めるセレクトSPAと比べてもそれほど遜色ない。それでも収益性が低いなら蓄積されてきた出店財務構造の問題であり、在庫コントロールやマーチャンダイジングの首尾で解決できる範囲を超えている。

 膨大な償却損失を覚悟で抜本的な店舗資産の入れ替えを断行するか、『NB軸のジーンズセレクトショップ』という基本構想に成算がないと腹をくくるかだが、前者は低収益なライトオンにとって現実的ではない。値入れが薄いのに回転も低い(3回転に届かない)というNB軸のマーチャンダイジングは商業施設では採算が厳しい、という現実をライトオンの経営陣は正視すべきではないか。