厳しい競争の中で生き残っていくために、顧客のニーズに応じた新規サービスを次々に打ち出していく必要があるのは、フランチャイズチェーン(FC)も同じです。

 しかし、それは必ずしも本部と加盟店との間で取り交わされた当初の契約書には明記されていません。このような新規サービス、本部は加盟店に対してどこまで導入を求めることができるのでしょうか?

「収納代行サービスと深夜営業」の実施に関する裁判例

 参考になる裁判例に、「収納代行サービスと深夜営業の導入を求めることの可否が争われた事例」があります(原審:東京地判平成23年12月22日判時2148号130頁、控訴審:東京高判平成24年6月20日公正取引763号54頁)。

 本部が加盟店に対し、これら業務の導入を求めることが「優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号ハ)」に該当すると、強要禁止を求めた事例です。

 収納代行サービスや深夜営業を内容とするFC契約(この事案では加盟店基本契約と加盟店付属契約とを併せて「本件基本契約等」と表現されています)が有効に締結された場合、加盟店が収納代行サービスや深夜営業を行うべきことは、その契約に定められた義務の履行として当然といえます。

 そこで、本件基本契約等が有効に締結されたものかどうか、言い換えれば、「本部が加盟店との関係で優越的地位にあることを濫用して本件基本契約等を締結したのかどうか」が問題となります。

本部が加盟店に対して「優越」するのはどの時点?

 そもそも、本件基本契約等の締結時点で、本部は加盟店に対して優越的な地位に立っていたのでしょうか?

 この点について、本判決は加盟店の本部への依存度、加盟店の初期投資、契約終了時の加盟店の不利益、事業規模の格差などを認定し、「本件基本契約等の締結後」には、本部が加盟店に対して優越的な地位にあるとしました。

 他方で、本判決は、「本件基本契約等が締結されるまでの段階」での優越的地位は認めませんでした

 もっとも、本判決は取引開始時の優越的地位の濫用をおよそ否定したわけではないことに注意が必要です。

 本判決は、本件の事実関係の下で、本件基本契約等の締結直前までは優越的地位がなく、締結した瞬間に優越的地位が発生したと認定したに過ぎません。

 独占禁止法の条文をみると、取引開始時に優越的地位の濫用が成立することは想定されているので、本件とは異なる具体的な事実関係によっては、取引開始時に優越的地位にあったと認定されることもあり得ます