軌道修正は本気なのか?

 下方修正を発表したアナリスト向けの説明会では『非常に情けなく思うと同時に、大変申し訳なく思います』『125億円は高い勉強代になってしまった』と謝罪し、『新しい体形予測エンジンを今期末に実装する』『カジュアルアイテムについてはZOZOSUITによる計測なく購入できるようにする』『PB事業については他企業との協業も視野に低リスク中リターンによる収支均衡を図る』と軌道修正も発表したが、ZOZOARIGATOについては『9割のショップが賛同してくれている』と撤回の気配はなかった。

 ZOZOARIGATOの実施で商品取扱高の伸びは第3四半期までの19.3%から約26%と6%強しか加速しておらず、値引き分のZOZO負担による経費の肥大(結局は新規テナントの手数料率引き上げにつながる)に加え、有力アパレルの離反を招く弊害の大きさに見合うとは到底思えないが、撤回の検討さえ匂わせなかった。PB事業にしても他企業と協業してリスクを抑え、継続するわけで、今後も投資が分散してプラットフォーム事業への集中が削がれ(ライバルにつけ込む隙を与える)、圧縮されるとはいえ、赤字を垂れ流すことには変わりない。ZOZOSUITは見切るにしても新たな体形予測エンジンに替えるだけでバーチャル志向は変わらず、TBPP(お試し受け取り所)など実効性の確かなリアルサービスには目が向いていない。

 この3点を注視するなら軌道修正の本気度は極めて疑わしく、早期の業績改善は難しいと見るしかない。これまでの方向をテクニカルに軌道修正するだけで、大きな損失を招き、ライバルに付け入る隙を晒した誤てる戦略を抜本転換する意思はないと受け止めるべきだろう。

暴走を抑えるガバナンスが必要!

 ファッションECのプラットフォーマーとして寡占的地位を確立し18年7月には時価総額も1兆2000億円に迫った急成長企業が、わずか半年で失速し株価が6割も暴落してしまった根本要因は、創業経営者の暴走を止められなかったことに尽きる。

 創業経営者の独創性があったからこそ、ここまで急成長したのも事実だが、東証一部に上場し多くの取引先や株主などステークホルダーが広がるに至っては公正適切なガバナンスが問われざるを得ない。創業者の独創が暴走にならぬようアイデアを客観的に検証して作用と反作用を見極め、投資と収益を予測し、取引先や現場の意見も聞いて取締役会で決めるという当然のガバナンスが必要になるが、ZOZOSUITではまった『リープフロッグの罠』やZOZOARIGATOが招いたテナントアパレルの離反を見れば適切なプロセスを経て決定されたのか疑問が残る。

 どのような企業でも経営トップの意向に逆らって諫言するリスクは極めて大きいし、そのために招かれたはずの社外取締役も疎まれるリスクをあえて冒すのはよほどのケースに限られる。

 ZOZOSUIT への投資やPB開発、ZOZOARIGATOの実施が取締役会議決事項だったのか知る由もないが、ZOZOの役員リストを見る限り前澤氏に諫言できるような社外取締役(そもそも1人しかいない)は見当たらない。前澤氏が業績の失速を招いた自らの失策を本当に反省するなら、まずは社外取締役の陣容をそろえて自らを監督するガバナンスを確立するのが第一歩ではないか。