デジタル什器「クローガー・エッジ」 [出所]マイクロソフト社

 スーパーマーケット(SM)最大手のクロ―ガ―は昨年、3年間にわたる成長戦略「リストック・クローガー」を開始し、オンライングローサリー事業の低コスト化、配送拠点拡大およびマイクロソフト社との提携で小売業界そのものを変える取り組みに着手している。

3つの取り組みでオンライングローサリー事業は次の段階に

 クローガーは昨年5月に英国の食品ネットスーパー オカド・グループと提携し「オカド・スマート・プラットフォーム」の米国独占使用を発表した。これは完全自動フルフィルメントセンターを中心に低コストに迅速でさまざまな状況にフレキシブルに対応するロジスティクスシステム(オンライン購入からフルフィルメント、配送までを一元管理する)。今年度中にオハイオ州他に3カ所、3年間で20カ所以上のフルフィルメントセンターを開設する。

 その後、8月、クローガーはオンデマンド配送企業インスタカート社(オンライングローサリーの要である顧客への配送を担う)との取り組みを、700店舗から年内に1600店舗、全店の約6割にまで拡大。

 12月には未来型小売業を先取りするプログラムに着手した。1つはベンチャー企業 ヌロ社との提携による無人走行自動車配送で、アリゾナ州で開始。即日もしくは翌日に配送し、1回当たり一律5ドル95セント。最低購入金額は設定していない。

ウォルグリーンズ内インショップ「クロ―ガ―・エクスプレス」 [出所]クロ―ガ―社広報資料

 もう1つはウォルグリーンズ(ドラッグストアチェーン最大手)への初のインショップ「クローガー・エクスプレス」の開業だ。

 ケンタッキー州北部の1号店は2300品目および15分で料理できる食材宅配サービス「ホーム・シェフ」のミールキットを販売している。同フォーマットは今年中に州北部に追加12店舗に拡大する予定だ。

「アマゾンに対抗した結果ではない。アマゾンを予測したのだ」

 NRF初日に登壇したロドニー・マクマレンCEOは、CNBCアンカー、サラ・アイゼン氏との対談で、クローガーのオンライングローサリー事業拡大は2014年にハリス・ティーター(南東部に約250店舗を持ち、デジタル化が進んでいたSM)買収をきっかけに加速したと語った。

「われわれはこのプロジェクトをアマゾンがホールフーズを買収するずっと以前から始めていた。どこかのタイミングでアマゾンはリアル側で何かをするだろうと予測していたからだ」と述べ、その後のオカド・グループ、ヌロ社、マイクロソフト社との提携に触れて、「事業モデルは一晩では変えられない」と中長期視点で取り組んできたことを強調した。

NRF対談より。左からロドニー・マクマレンCEO、CNBCアンカー、サラ・アイゼン氏 [出所]全米小売業協会

 これらの戦略により、クローガーのオンライン売上高は2018年度の50億ドルから「2019年度には2倍近くの成長を推測している」とコメントした。10年後にオンライングローサリー市場はアマゾン、ウォルマート、クローガーの3社が独占するのではないかという質問に対してマクマレン氏は「クローガーがその中の1社になることは間違いないね」「食品販売は1兆5000億ドルという大きな市場だから、大勢の企業が存在する余地があると思う」と答えた。

 クローガー・エクスプレスについては、「非常に便利だ。テスト地区ではクローガーおよびウォルグリーンズの店舗のどこへでも1マイル以上運転せずに来店できる」と述べ、フィジカル側でも利便性向上の可能性を探っている。

マイクロソフトとの提携でアマゾン、ウォルマートとの未来型店舗競争が本格化

 NRFの展示会では、クローガーは提携先のマイクロソフト社のブース内で新たに共同開発したデジタル什器棚「クローガー・エッジ」を紹介した。

 棚什器の棚板側面はデジタル値札、栄養成分表、動画広告、クーポンの表示が可能。現在、顧客のスマートフォンともコミュニケートできるアプリを開発中で、これが完成すると、顧客がアプリ上に作成した買物リストの商品の場所を棚が教えてくれたり、商品のバーコードをスキャンして決済を終えるセルフレジが可能になる。また、オンラインオーダーを店内ピックアップする従業員に商品の所在を教えることもできる(値札部分を光らせる)ので、作業効率を高める効果も期待されている。

 同什器は現在、クローガー本社に近いオハイオ州とワシントン州の2店舗でテスト中で、今後200店舗にエンドキャップとして導入する計画だ。マクマレン氏は「現在はまだ学習中の段階だ。両社共同でいかに消費者に今できていないこと、例えば、より迅速な支払いなどを提供できるかに取り組んでいる」とコメントした。

 この什器はマイクロソフトとクローガーが共同で進めているRaaS(サービスとしての小売リ)事業の製品の1つという位置付けで、今後もIoTとスマートテクノロジーによって店舗事業の効率化を進め、顧客満足を高める製品を他企業にも販売していく計画だ。

 この領域にはアマゾンのレジレス店舗「アマゾン・ゴー」やウォルマートのセルフレジ店舗「サムズクラブ・ナウ」が昨年開業した。ゴーは間もなく10店舗体制となる。クローガーが今年猛烈な追い打ちをかければ、状況は変化するかもしれない。