花の都「パリ」

フランスのパリは「花の都」と呼ばれ、その洗練された生き方に憧れを込めて「パリジェンヌ」と世界中の女性たちの羨望を集めている。「パリコレ」はいうまでもなく4大ファッションコレクション(ミラノ、パリ、ニューヨーク、ロンドン)の中でも、最強コレクションとしてファッション界への影響力が十分にある。そんなファッションの街、パリで現在、起きている暴動が「黄色いベスト運動」だ。今回は、運動そのものが起こった背景や政治的な仔細といった事は他のメディアに譲るとして、ファッションからの視点で見た一連の騒動を解説してみたいと思う。

 まずは「黄色いベスト運動」に着用されているベストについての解説。これは安全対策として、車の運転者が路肩で車両を離れるときに高い視覚認識性を持った蛍光色の黄色いベストを着用するのが決まり。そのために車内に常備することが、2008年に法律でも決まっている。

 その結果、黄色い反射ベストは広く利用されることになり、安価で入手可能となったため、運動のシンボルとして選ばれるようになった。見た感じでは、日本でも夜の道路作業の人たちが身につけているベストと同じ物であろう。アマゾンでもポリエステル素材の米国3M社(アメリカの世界的化学・電気素材メーカー)の反射素材を使ったベストは1500円くらいから入手できる。

おそろいのファッションは戦国時代の日本でも

 今回のような抗議運動やイデオロギー(政治や社会に対する考え方)の主張を行うにあたって、おそろいのファッションを身にまとうのには、どのような意味や効果があるのだろうか。歴史を遡れば19世紀のイタリア統一運動で「赤シャツ隊」を率いたのはガリバルディ(統一運動の指導者)、同じくイタリアをファシズム(極右の全体主義)に導いたムッソリーニ(イタリアの政治家)が率いたのは「黒シャツ隊」。

 日本国内でも戦国最強と呼ばれた信州武田軍の赤備えと。社会運動から時に権威の象徴として集団として同じ色の服装に袖を通した。これには大きな意味合いが2つある。1つは群れた集団を大きな存在感として誇示する狙い。これは店頭のVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)テクニックにも通ずる原理で、遠方からの視認効果として大きな(集団)色の塊を作ると目立つというもの。もう1つは団結、連帯感が生まれることによって逸脱行為を防ぐという心理効果が付加されるのだ。

ファッションから見る「黄色」と「赤」

 こうして昔から、集団行動のシンボルとして活用されてきた装い。そして現在、新たな動きとして登場したのが「赤いスカーフ隊」。こちらは「黄色いベスト運動」の暴力に抗議する形でデモが行われたという。なぜ「赤」なのかというと、フランス共和国を擬人化したマリアンヌの赤のイメージからきているようだ。マリアンヌはいつも赤い帽子をかぶっていて、その帽子は「ボネ・フルジアー」(フリジア帽)と言う帽子。古代ローマ(ギリシア神話)に起源を持つ帽子らしく現在は「自由」を意味しているそうだ。

 正直にいって「黄色のベスト」は、ファッションとして見るとあまり格好良いデザインではない。ブランドVetements(ヴェトモン)のデザイナーのデムナ・ヴァザリアがDHL(国際輸送物流会社)の黄色い制服をファッション化したように、このベストもデザインしてもらった方が良い。対して「赤いスカーフ」は何ともフランスらしい知性の効いたアイテムとして好感が持てる。運動のコンセプトとともに応援してみたくなった。