「ラストワンマイル」を勝ち取るのはどちらか?

 第25回は「Amazonフレッシュとネットスーパーの違い」です。

 あなたはAmazon Prime会員になっていますか? この会員になると、首都圏(東京23区、神奈川県、千葉県)在住の人は「Amazonフレッシュ」(食材ネット宅配サービス)を享受できますが、最近、ビジネス系の雑誌や新聞等で、この「Amazonフレッシュが既存リアル店舗小売業を侵食しつつある」という記事をよく見掛けます。

 Amazonフレッシュについては、リアル店舗中心の小売企業経営幹部からも「やはり脅威だ」との声も聞きますが、もちろん、リアル店舗勢が黙って指をくわえているわけではありません。総合スーパーやスーパーマーケット(SM)も「ネットスーパー」に注力し、EC小売業(例:楽天西友ネットスーパー等)なども含めたEC勢の侵攻に対抗しています(例えば、イトーヨーカ堂では自社のネットスーパー強化のためにアクスルと提携し、「LOHACO」の物流網を活用した1時間ごとの指定配送を実現しています)。

アマゾンもアリババもチャネルシフトを始めた

 ここで、消費者視点でAmazonフレッシュとネットスーパーを比較してみましょう。

 まずAmazonフレッシュですが、このサービスは年会費3900円のAmazon Prime会員増加策の一環で行われています。Amazonにとって、この有料会員を増やすことは収益の安定につながる他、顧客データの有効活用も図れるという意味があります。後者はいわゆるビッグデータですが、この分析から顧客ロイヤリティを高めると同時に、一人一人に見合った高精度の購買予測による購買喚起もしようというのです。

 Amazonには今まで、この顧客購買データがEC(ネット)に限られるという弱みがありました。しかし、近年はAmazon GoやAmazon Books、さらにはリアル店舗小売りのWhole Foods Marketを買収し、「ネットからリアル店舗」へチャネルシフトをしつつあります(この動きは中国におけるAlibabaやテンセントも同じです)。

利便性や効率性だけでは購買意欲を囲い込めなかった

 ここで重要な視点は『ネット小売りに強みがあると言われている「利便性」や「効率性」だけでは、消費者の移ろいやすい購買意欲を囲い込めない点』です。AmazonやAlibabaはネット小売りだけではいずれ限界がきて、それ以上の成長は見込めないことに気づいたのでしょう。

 また、ネット小売りはチャネルシフトした店舗を「単なる売る場」(タッチポイント)とは捉えておらず、「ネット小売りの利便性(例:Amazon Prime)を知ってもらい、最終的にはネット小売りでの買物行動へつなげていきたい」と考えているはずです。それは『消費者はスマホアプリを通じ、ネットとリアルをシームレスかつストレスレスに移動しながら買物する「オムニチャネルカスタマー」だ』と、ネット小売業は知り尽くしているからです。

ネットスーパーは生鮮、惣菜で差別化せよ

 では、もう一方のリアル店舗勢が推進するネットスーパーにはどのような強みと弱みがあるのでしょうか。

 強みは、店舗を倉庫代わりにしているため、ネット小売りに比べ、倉庫等の新規設備投資が要らず、店舗在庫の有効活用(需給調整機能)が図れる点でしょう(特に、生鮮、惣菜は消費期限までの期間が短いため、有効です)。

 また、店舗を中心にした限定エリアでのサービスのため、商圏内の顧客シェア向上につながる可能性があるのです(特に、高齢者のシェアが高いエリアでは有効です)。実際、ストアロイヤルティの高い店舗で扱う生鮮や惣菜はネットスーパー事業の目玉になっており、生鮮、惣菜はネット勢への差別化ポイントになり得ます。

 よって、これらをいかに商圏内の消費者に安心して継続的に買ってもらえるかが、ネットスーパー事業の成否の鍵を握っているといっても過言ではないでしょう(ネット小売りの土俵であるグロサリーや日配品の低価格、配送料の安さや時間帯指定などの利便性で勝負してはいけないのです)。つまり、リアル店舗同様、ネットスーパーでも生鮮、デリカの売上比率を50%近くにまですることを目指すビジネスモデルを構築すべきなのです。それが実現できれば、リアル店舗とネットスーパーを合わせた最適な収益ミックスを実現できるはずです。

 リアル店舗小売業は(スマホの特性を生かしながら行うことが重要ですが!)、店舗で普段行っている「消費者の食に対する問題解決」を一緒にしていけばよいのです。ミールソリューションはその1つ。リアル店舗が持つ生鮮の鮮度、安全性、おいしさ等の強みの向上にもっと注力し、いかにその品質を保ちつつ、自宅まで適切に配送できるかに挑戦すべきなのです。