セブン-イレブンでは陳列棚を改善することにより、コンビニで特に多い陳列差作業の必要時間を、平均40%も短縮している。

作業生産性を高めるために、意識的に「工程の改善」をしたところがほとんどなかった日本の小売業。だが、そこにこそ、人による作業が多い店舗の生産性向上のポイントがあると、吉田繁治先生は言います。今回から商品作業を動画で撮影し、改善に生かす方法を紹介していきます。

意識的に工程改善をした企業は少なかった

 編集部:今回は、売場の商品作業の生産性向上の方法を解説いただきます。小売業では、作業生産性を上げるための「工程の改善」を意識的に行ったことは、ほとんどないように思います。

 人員の配置は前年と同じで、店舗売上げが上がると人的な生産性が上がり、売上げが下がると生産性も下がってきたところが多いでしょう。 

 パート比率が80%や90%を占めた後は、人員を削減するときでも作業方法は前と同じでした。人員配置数を減らすだけだったので、店長からすれば「店舗が回らない(科学的ではないアイマイな観察)」という障害も出ていたようです。

 吉田:実態は、鈴木さんの言う通りでしょうね。法人と個人経営の店舗数が99万店、働く人が765万人もいる大きな産業の小売業ですが(経済産業省:産業センサス:2016年の最新データ)、方法をもって意識的に売上生産性(売上高÷労働時間)を高めるための、道具、工程、作業方法の改善を行ってきたところは、ほとんどないでしょう。

 このため、「人的な生産性を上げる必要がある」と言っても、どうすればいいのとなるでしょうね。

 前回も示したように、まず作業分類ですが、これは、以下のようにするといいでしょう。まず、この作業分類が肝心になります。

①入荷/検収作業、②棚陳列作業(商品搬送を含む)、③棚調べ作業(生鮮の鮮度管理)、④発注計算/処理作業、⑤売場の販売/接客作業、⑥店内調理/加工作業、⑦レジ作業、⑧陳列商品変更作業、⑨値札・POP作業、⑩クリンリネス作業、⑪会議・書類作成、⑫コミュニケーション、⑬その他の管理作業

 それぞれの現状の作業時間は、店舗の担当に、これらの作業をあらかじめ表にした「作業日報」を渡し、終業時に記入してもらって、本部が集計する(2週から4週間)ことで得られます。

 個々人の作業に分割したときの作業時間は、ある程度、つまり10%や20%不正確でも、合計の労働時間ははっきりしたものですから、全員の作業時間を合計すれば、実態の作業時間が集計されます。

トヨタの「カイゼン」に終わりがない理由

 編集部:問題は、それぞれの作業を改善する方法ですね。

 吉田:IE(産業工学)の方法では次の方法をとっています。

 (1)まず作業を分類する。これが上記の13分類です。

 (2)次に、現状の個々の作業を細かい動作の工程に分けて名前をつけ、フロー図として描くそして、個々の作業時間をストップウォッチで計る。個人によって、現場の作業方法が異なっているときは、平均的な方法を描く。これが分析です。

 (3)それぞれの作業工程、作業方法のムリ、ムダ、ムラを探し、それらを排除して、改善した作業工程と方法を作る。現場の作業方法が違うのは、「ムラ」になります。

 これは、トヨタの工場のQC運動として、今日も行い続けられていることです。1年に3000件の「改善提案」が、現場から出るといいます。つまり、改善には終わりがない。

 現在は、多くの組み立て工程がロボット化されていますが、感覚器にあたるセンサーをもつ自動工具であるロボットそのものにも、改善があるからです。

 トヨタの企業としての強さ、つまり、①他社より故障の少ない品質の高さと、②1人当たり生産台数の多さは、工場の現場のQC、つまり工程改善によって得られています。

 ③改善後の作業工程と方法を、現状と対比して、図にまとめ、全工場で行えるように、教育と動作訓練をするこれが、標準化教育です。

 ④全部の工場で、それを実行する。

 ⑤実行した後は、次の改善サイクルに入って、工程改善、方法の改善を続ける。

 これを最初に自分の工場で行ったのがテイラーでした。100年も前のことです。このテイラーの方法により、マイケル・カレンの部門別管理(経営管理)と合わせて、米国のスーパーマーケット(SM)チェーンが誕生したのです。

 新しかったSMチェーンの労働生産性は、米国でも多かった家業店より、数倍は高いため商品を安く売ることができ、チェーンストアの登場が、生産性が低かった家業店を閉店に追いやり続けました。商品価値(品質÷価格)で劣位になったからです、

 チェーンストアの登場から数十年をへて、米国はチェーンストアの国になっています。米国でも100年前は、百貨店以外は駅前に集まっていた個人商店でした。今でも、南部の田舎には寂れきった商店街が残っています。ニューヨークなどの大都市部の中心にも食品で残存しています。ビル街には大きなSMと広大な駐車場を作る立地が少ないからです。