ウォルマートスーパーセンター、ニュージャージー州セコーカス店にある高さ約5メートルの自動ピックアップタワー 【出所】筆者撮影

 Eコマース事業拡大に拍車を掛けるため、ウォルマートは3年前、都市型消費者を顧客に持つジェットドットコムを傘下に入れ、その後、D2Cとも呼ばれるデジタリーネイティブブランド8社を買収、ウォルマートドットコム自体もデザインから機能までアップグレードするなど、デジタル戦略強化に力を入れている。

 同時に店舗側でも、オンライン購入商品の自動ピックアップタワーや在庫管理ロボットなど、テクノロジーを導入した事業効率化とオムニチャネル戦略を推進してきた。

 この結果、調査会社インターナショナルデータコーポレーション社によると2018年のIT投資額でウォルマートはアマゾン、アルファベットに続いて世界第3位となった。トップのアマゾンは推定136億ドル、ウォルマートは同117億ドルだ。

 同社のデジタル戦略を統括してきたチーフテクノロジーオフィサー(CTO)、ジェレミー・キング氏は、ウォールストリートジャーナル紙レポーターとの質疑応答でその詳細を語った。

NRF1月13日講演より、右からチーフテクノロジーオフィサー(CTO)、ジェレミー・キング氏、ウォールストリートジャーナル紙レポーター、サラ・カステラノス氏 【出所】筆者撮影

まずは「テクノロジー部門の組織改革」に着手

 最初の話題は組織改革だった。キング氏は「2年前にダグ(・マクミロン)と私はテクノロジーチームを2つのグループに分けることにし、チーフインフォメーションオフィサー(CIO)は社内システムの統括を行い、CTOである私は小売事業(へのテクノロジー導入)にフォーカスすることにした。これにより私は100%顧客に向き合えるようになった」と述べ、それぞれのチームでのメリットを紹介した。

 ITチーム側ではグローバルサービス組織の統合が進み、その結果、オフィスの共用化、APプロセス(買掛勘定処理)、人事管理の福利厚生などの領域で効率化が進んだ。これは世界中に200万人以上の従業員を抱える同社にとっては大きなメリットだ。

 リテール側では顧客データベースの高度活用を推進し、例えば、①ウォルマートペイを店舗で使った顧客がオンラインでも購入するというような予測可能な情報を利用するようになった②プロクター&ギャンブルなどサプライヤー側と店舗・オンライン両方のデータを1つの視点から共有できるようになった、などのメリットを得た。

 さらに、過去には対応できなかった、マーケットプレース第三者出店企業の商品返品を店舗でも手助けするなど、オムニチャネル戦略の要である全販路でのシームレスな顧客サービスを拡充した。

注目の取り組みはロボット、機械学習、ヴァーチャルリアリティ

 ウォルマートは現在、80店舗を除く全店にハイスピードインターネットを導入し、店舗のデジタル化を推進している。リテールテクノロジーチームには約2000人の技術者が常勤している。

【ロボット】トラック後部に乗り込み、クレートを降ろすなども手伝う

店内在庫管理ロボット 【出所】ウォルマート社ウェブサイト

 ロボットは後方部門、店舗両方で活用範囲を広げている。店舗での商品入荷作業では、ロボットがトラック後部に滑り込み、クレートを降ろし、パレット上の商品を分別し、迅速に棚入れするプロセスを手伝っている。また、店内在庫管理専用ロボットも一部の店舗に導入されている。キング氏は「従業員の数は減らさず、ロボットとヒトをバランス良く活用することで成長を続けられる」と述べた。

【機械学習】アマゾンよりもきめ細かい推測を提案に生かす

 チーム内に博士号を持つ人材を多く抱えており、いかにショッピングを楽にするか、リピート購入を増やすか、生活常備品を10秒以内にカートに入れられるか、などの課題解決に機械学習を活用している。

 キング氏は「このお客はこれを買ったから、あれも買うかもしれない」という(アマゾン他で行われている)推測以上のものを提供することが大切だ。顧客が店舗に来てミルク、おもちゃ、子供用パジャマを買ったなら『このお客には恐らく子供がいて、何歳くらいで、これが必要かもしれない』というレベルまで推測したい。われわれには多くの優れたマーチャンダイザーがいて深い商品情報を持っているので、機械学習と商品専門家の情報を活用して、それができる」とコメントした。

 また機械学習の活用にはより多くの時間をかけており、現在使っているアルゴリズムが効果的かどうかを常に確認しているそうだ。

【ヴァーチャルリアリティ】従業員のトレーニングに活用している

 ヴァーチャルリアリティ(VR)は従業員トレーニングに利用している。「短いVRセッションが200あり、どのように荷物を降ろすかなどの細かい指導を行う。従業員はとても楽しんで受講しているし、何百万人もの従業員を素早くトレーニングできる素晴らしい方法だ」とキング氏は説明した。

テクノロジーでもっと簡単、迅速な買物が可能になる!

セコーカス店内食品売場にある、ウォルマートのアプリをダウンロードすればスナック菓子を無料でもらえるキオスク 【出所】筆者撮影

 参加者からの質疑応答では、ウォルマートの将来についての質問があった。キング氏は「今、全てのCEOがテクノロジーだと述べている。ストアピックアップや返品だけでなく、店舗に以前からあるマネーサービスやファーマシー、自動車用品部門などでのサービスも、テクノロジーによってもっと簡単に迅速にショッピングすることが可能」とテクノロジーの重要性を強調した。

 また、アマゾンゴー他のレジレス技術として注目されているコンピュータヴィジョンについては、「エキサイティングなテクノロジーだ」とコメントし、「まだ小さい商品は(カメラが)クローズアップしなければならないという課題があるが、店内データ、特に顧客を知るためのデータと機械学習は店舗を大きく変化させるだろう」と店舗革新の方向性を示唆した。