左:パナソニックスマートファクトリーソリューションズ 足立秀人常務取締役
中央:トライアルカンパニー 楢木野仁司代表取締役
右:日本電子決済推進機構 廣崎善啓事務局長

トライアルカンパニーは福岡市に最新テクノロジーを活用したスマートストア「トライアル クイック 大野城店」を2018年12月13日にオープンした。AI(人工知能)カメラによる分析やキャッシュレス決済をさらに進化させると同時に、商品選択から決済までを行えるスマートフォンの店舗公式アプリも導入。今後は店外で商品を注文し、来店での受け取りまたはデリバリーに対応するとのことで、オンラインとオフラインをシームレスにつないでいく。この店を皮切りに、同社は本格的にスマートストアの出店を加速していく。

 「トライアル クイック 大野城店」では生鮮食品や惣菜、日用品などをそろえるが、店舗面積は約286坪と同社の主力業態であるスーパーセンターに比べて小型の店舗となる。商圏人口の少ない地域への出店が可能になると同時に、同規模のスーパーマーケットに対してこの店に導入したスマートストアの技術を提供していく上でのモデル店舗にする狙いもあるようだ。

 同社は既にスマートストアを展開しているが、今回は新たに①AI冷蔵ショーケースを導入し欠品商品を自動発注、②夜間完全無人での営業、③キャッシュカードでチャージ可能なプリペイドカードチャージ機を導入する。

パナソニックとの連携によって導入されたAI冷蔵ショーケース
お客側を向いたカメラで属性分析を行い、棚側を向いたカメラで商品動向を取得


 一部の冷蔵ショーケースに商品を検知するカメラと人を検知するカメラが付いている。パナソニックが持つディープラーニング(深層学習)技術を活用し、商品在庫の状態を把握、お客の性別や年齢といった属性と商品に対する行動を認識することで、非購買データの取得を可能にした。また商品在庫の状況から自動発注を行うことで、欠品による機会ロスを回避し、最適な品揃えが実現できる。

AIカメラによる属性分析などを基に、デジタルサイネージで最適な情報を発信する実証実験もしていく

 さらに取得したお客の購買行動のデータを活用し、棚回りに設置したデジタルサイネージにお客の属性に応じた効果的な広告を表示することも可能になる。トライアルはオープンイノベーションという形を取り、メーカーとともに効果的な販促方法を探ってきたわけだが、ここに1つの形が見えてきたといえるだろう。

 併せて、同社のスマートストアにも導入している独自開発のAIカメラを約200台設置し、お客の買物行動を捉え、棚への立ち寄り率や商品への接触率を計測することで商品動向を分析し、最適なレイアウトをつくり上げていく。

 また深夜22時〜朝5時の間は無人店舗として運営をする。入り口でプリペイドカードもしくはアプリのQRコードをかざして入店。その後、レジカートやアプリを使って商品の選択から決済まで手元で完結させる。レジカートまたはアプリを使用しないお客もセルフレジで決済を行うことで無人化を実現した(初期はお客のサポートや欠品補充などのために夜間も従業員を配置するが、今後、完全無人での営業に向けて検証を重ねていくようだ)。

              アプリでの買物方法

商品もしくは電子プライスカードのバーコードをスキャンする
商品が買物籠に追加される。レジカート同様に、商品に関連したレコメンドが表示される
アプリ上で会計を行う(アプリはプリペイドカードとひもづいており、チャージした分が残高として表示されている)
会計後、表示されたQRコードをレジカート、アプリ専用レーンの読み取り部にかざす
発行されたレシートを受け取り、退店する

 

 店舗の決済に使用するプリペイドカードには日本電子決済推進機構が運営するJ-Debitサービスを活用。プリペイドカードのチャージ機に金融機関のキャッシュカードを挿入することで、現金を引き出すことなく銀行口座から直接プリペイドカードへのチャージが可能になった。今後はキャッシュカードを介さずスマートフォンでの操作で銀行口座からプリペイドカードへチャージする仕組みをつくっていく。

 その他、店舗では全商品に電子プライスカードを採用(店内で約1万2000万枚)し、状況に合わせ柔軟に価格を変更できるようにした。

 同社のスマートストアでは、店頭をメディア化していく「リテールメディア」を進めており、この店でも40台弱ほどのデジタルサイネージを設置し販促を実施している。さらにレジカートやスマホアプリでもクーポンを発行するなど、各デバイスの組み合わせにより効果を高めていく。

               レジカートも導入

タブレット決済機能付きのカートもアプリと同様にその場で決済を行え、レジ待ちを解消する

 

 レジカートで商品をスキャンした際に商品にひもづいたレコメンドを表示してきたが、今後は属性分析、購買履歴によってよりお客のニーズに合ったパーソナルなレコメンドをしていくという。店外でもアプリ上でそろそろ買い足しが必要であろう商品のレコメンドやクーポンを発行することで店舗利用につなげていく考えだ。

「クイックキッチン」では、バイオーダーで出来たてを提供する

 興味深いのは弁当類を販売する「クイックキッチン」だ。これは店内で買物をしている間に調理し出来たてを提供するサービスで、現在は来店時に注文し出来上がった段階で通知され、受け取るが、今後は店外からアプリで注文し来店時には受け取るのみの仕組みもつくっていくという。

 店内商品についてもアプリで購入を済ませ、従業員がオーダーされた商品を集めておくことでお客は店頭もしくはコインロッカーでピックアップするだけ、もしくはデリバリーまで行うというサービスの展開も視野に入れている。

進むリテールAI、技術提供で起こす流通情報革命

 オンラインとオフラインをシームレスにつなぎ、テクノロジーの活用によって快適な購買体験を提供する新たなリテールの形を打ち出す同社。「まずはグループ内で仕組みをつくり、今後、その仕組みを広げることで業界全体の生産性を高め、消費者がより良い買物体験をできることを目指していく」とトライアルカンパニーの楢木野仁司会長。同社のスマートストアの技術を国内、そして海外にも提供していくことを考えているという。

 スマートストア先進国である米国や中国との戦いはあるだろうが、よりコストがかからず、技術の精度が高く、そして利便性の高いものを打ち出せれば、その市場を取ることも可能かもしれない。

 AIカメラやレジカートは徐々にコストダウンを実現しており、発展途上ではあるもののコストに見合うだけの高い生産性を生み出すまでになっているようだ。省人化も進み、運営コストを約4割下げることに成功している。

 同社の進めるオープンイノベーションによって、国内の優れた技術を結集させ、情報を共有することでより現実に即した形での開発が進むことが期待される。

「この店の年間売上目標は最低10億円で12億円ほどになれば高収益の店と言える。19年は九州北部を中心に10店前後の出店を考えている。最終的には年間50~100の出店をし、全国でドミナントを形成していきたい。スーパーセンターとこうした業態2つのエンジンをつくることで、さらなる成長を目指す」と楢木野会長は話していた。

 

 

※本記事は『販売革新』2019年1月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。
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