顧客の離反が止まらないしまむらが、今度はAIを活用した顧客分析を導入するとか。自分の目で顧客を見ず数字と組織がデジタル変換したバーチャル像しか見ないから顧客が見えなくなったのに、AIまで活用すれば一段とバーチャル化して顧客の実像から遠のいてしまう。しまむらの経営陣はそんなに顧客を見たくないのだろうか。

しまむらは顧客を見ていない

 しまむらの売上げが下げ止まらないのは顧客の実像が見えず顧客と品揃えがすれ違っているからで、それは以下の3点に尽きるのではないか。

(1)顧客のお財布が見えていない

 しまむらは低価格衣料の代表のようにいわれるが、社会負担増で手取りが圧迫され、生計と生活に追われるしまむらの顧客層にとっては、必ずしもお手軽とはいえなくなっている。中途半端なPBが増えたせいもあって商品によっては低価格SPAチェーンと大差なくなり、ホームセンターなどのオフプライス品やメルカリなどのリユース品に顧客が流れている。メルカリの18年度取扱量最多ブランドに「ユニクロ」が挙がって注目されたが、「しまむら」も3桁価格でリユースに結構流れている。低所得層の価格感覚はそこまで下がっているのだ。

 しまむらもシーズン末期には値下げやオフプライス商品の投入で3桁価格が目立つようになるが、そこでようやく財布を開く顧客も少なくないと思われる。ならば、実需期からオフプライス商品を広げてもよいのではないか。品揃えの硬直化と価格の高止まり?を招きかねないSPA化より、顧客が求めるなら半ばオフプライスストア化するのも1つの選択肢ではなかろうか。

(2)顧客のウエアリングが見えていない

 しまむらの店頭に並ぶのは駅ビルやSCでメジャーになった実績商品のトレード・オフ品ばかりで、もとよりトレンド的な鮮度を期待するものではないが、それだけに顧客のウエアリングとずれてしまうリスクがある。

 近年は着やすさ、着回しやすさを求めて“ノームコア”から“ゆる抜け”とフィットが緩くオーバーサイジングになり、数年前と比べればワンサイズ以上大きくなった感があるが、しまむらは必ずしも対応できていない。新しいアイテムやコーディネイトへの対応も遅れ気味で、スポーツ/アウトドアアイテムとドームアイテムをリミックスする“アスレカジュアル”の奔流にも乗り損ねている。“ヤンキー”なTPOレス衣生活がメジャー化したともいえるものだから、しまむらの乗り遅れは痛い失策なのではないか。

(3)顧客のテロワールが見えていない

 トレンド後追いのしまむらが欧米の最新トレンド視察に大枚を投じていると自慢した時期があったが、あまりの愚かさに批判する気力も失せたと記憶している。ファストファッションが全盛だった当時はともかく、17年以降は世界的なローカル回帰が進行しており、各国のファッションマーケットがローカルに分岐し、地域やストリートでテロワールに分岐している。

 もとより近隣ローカルの顧客を対象とするしまむらはテロワールな個店対応が問われるが、個店の顧客を見ようとしないし、硬直化したCMIに徹して有能なパートさんたちの顧客を見る眼を活用しようともしていない。商圏が小さいほど顧客タイプ(ウエアリングの好み)の構成は大きく異なるから個店対応が問われるのに、しまむらは全体最適な中央集権体質を変えようとしていない。

 AIを導入しても全体最適スタンスで活用すれば混色滅彩してしまうだけで、テロワール対応力は高まらない。AI導入以前にリアルな顧客像をつかんでビジュアルに分類定義する必要があるのではないか。