ムスリム向けフードメニューのキラーコンテンツとして「牛肉の角煮」をラインアップした。

2018年11月1日、横浜高速鉄道みなとみらい線・日本大通り駅近くに「日本食レストランMINATO」(以下、ミナト)がオープンした。ビルの1階テラス席(15席)と地下1階に60坪(75席)を擁する同店は、フードダイバーシティ(食の多様性)に対応したレストランだ。日本大通り駅に隣接する馬車道駅、元町・中華街駅の一帯は港町としての異国情緒がある中、オフィス街が同居し、横浜スタジアムも存在することで多くの人々が訪れるエリアとなっている。冬場は寒いことから人通りは少ないが、これからの季節は多くの人々でにぎわうことになる。ここにオープンしたフードダイバーシティのレストランには非常に多くの可能性があるといえるだろう。

大阪で創業し、2号店を横浜に出店した

「ミナト」をオープンさせたのは佐野嘉紀(よしのり)氏。大阪・福島区の阪神電車・野田駅より徒歩3分のところにフードダイバーシティ対応の「日本食レストラン祭」(以下、祭)を2016年5月にオープンさせて、間もなく丸3年が経過する。

 同店については本連載の第8回『大阪・野田「祭」のフードダイバーシティ経営』で紹介しているが、当初はハラール対応を行い、約22坪25席の店にムスリムが1日100人以上来店するという実績を持つ。その後、同店はオリエンタルベジタリアン対応も行い、外国人観光客が訪れるフードダイバーシティのレストランとして知名度を上げた。 

 佐野氏にとって飲食店の「ミナト」は「祭」に次ぐ2号店となるが、大阪からいきなり横浜へ出店するには大きな決断が必要であったと思われる。しかしながら、そこにはさまざまな展望が託されている。

「ミナト」をオープンさせた佐野嘉紀氏(右)とフードダイバーシティの食品卸売業を行うグローバル社の菅谷照之氏

 本連載ではたびたびフードダイバーシティ(株)(本社/東京・台東区、代表/守護彰浩)を紹介してきたが、「ミナト」の出店は同社の活動による縁で実現した。フードダイバーシティ社ではムスリムの「ハラール」をはじめとしたフードダイバーシティの情報発信やコンサルティング活動を行い、またこれらに関わる事業者を対象としたビジネス交流会を行っている。

 さて、「ミナト」の物件は(株)グローバルの菅谷照之氏(食品事業部営業統括部長)より佐野氏に紹介された。佐野氏と菅谷氏はこのフードダイバーシティ社のビジネス交流会をきっかけに情報交換を重ねていた。

食品卸売業のパイロットショップを兼ねる

 グローバル社は中古タイヤの輸出や特殊タイヤの輸入など、タイヤがらみの商社として事業を展開してきたが、2015年にムスリムが入社したことをきっかけにハラールの食品事業に取り組んだ。マレーシアからハラール対応の冷凍食品を輸入することから始め、2017年7月よりハラール食品の卸売業としての事業を整えた。そして、取り扱う食品分野をフードダイバーシティに広げていき、取扱商品は約200品目、取引先は300を超えるまでになっている。

 同社がハラール食品の卸売業になる前は、ムスリムの観光客が著しく増える中、この分野のメーカーがハラール食品を必要とする飲食店に向けて個々に営業をしていた。それが、グローバル社が卸売業を始めたことでハラール食品の物流は著しく効率化した。さまざまなハラール食品の仕入れが一本化されただけではなく、しょうゆやみりんなどの調味料を1本単位で仕入れられるようになった(それまではケースで仕入れなければならなかった)。

 その後、ハラール食品に対して日本のメーカーもよりクオリティの高い商品づくりに意欲的に取り組むようになり、今ではグローバル社の取り扱う商品は約8割が日本のメーカーのものだという。

 また、ハラールからフードダイバーシティへと事業を拡充していくことによって、グローバル社は商品を届ける飲食店に「アップデートした情報」も届ける役割を担うようになった。例えば、「フードダイバーシティの需要は、これからどのようになっていくか」ということ。そこで菅谷氏は、自社としてパイロットショップを構える必要性を感じるようになった。