農林水産省は、日本チェーンストア協会や日本フランチャイズチェーン協会(コンビニなどが加盟)など7団体に、恵方巻きの"需要に見合った販売"を会員企業へ周知するよう要請した。これは食料資源の有効活用の観点から行われたもの。

 昨年、Twitterを中心としたSNS上で恵方巻きの売れ残りの廃棄画像が多数、拡散されたのを覚えている人も多いだろう。その際、"鬼退治には、豆じゃなくて恵方巻きをぶつけた方がよいのでは"などという不謹慎な意見も数多くツイートされたわけだが、日本の食品廃棄量(食べられるのに捨てられたもの)は647万トン(平成27年度)にも上り、その象徴的な事例として、今回の異例の通知となったのだろう。

バレンタイン縮小で恵方巻きがますます重要に

 

 恵方巻きは年ごとに決まった方角の「恵方」を向いて食べると縁起が良いとされる太巻きで、この風習は江戸時代末期から明治時代初期に大阪から始まった。その後、商売のための“人工催事”として、ここ数十年で近畿から全国へ広まり、コンビニとスーパーマーケットが販売強化をして市場規模を拡大させていった。

 小売業にとっての2月は需要期の年末年始と春夏の新商品が発売になる3月のはざまで、かつ日数も少ないため、販売の鬼門。高度経済成長期からバレンタインは人工催事として売上げを獲得するイベントであったが、義理チョコの衰退などで市場規模が縮小。小売業にとってその売上げを埋めるために、恵方巻きは予約商材としてうってつけだったのだ。

予約活動は結果がはっきり出るので施策に重宝

 特に、立地によって売上げの大枠が決まってしまうコンビニでは、店舗売上げを短期間で上げる施策として予約商品の獲得はとても有効。クリスマスケーキ・年賀状印刷・母の日のギフト・土用の丑のうな重・中元 お歳暮と予約商品の獲得が、ファストフードの販売コンクールとともに店舗の一体感を出し、士気を上げる施策に育っていった。

 この予約商品の獲得、ファミリーマートやローソンと比べて、セブン-イレブンが約3倍の獲得件数を誇ると言われており、平均日販で他の2チェーンと差をつける1つの要因とも言われている。

 本部・店舗巡回員の評価でも、担当店の売上げやその前年比は立地や競合環境などで評価がしづらい部分があるが、予約活動は「獲得件数を争う」というシンプルで分かりやすい結果が現れ、施策として重宝されるようになっていった。

改めて思う「仙台 広瀬川 クリスマスケーキ事件」

 あるチェーンの逸話としてコンビニ関係者の間で語り継がれているものに、『仙台 広瀬川 クリスマスケーキ事件』がある。これは、エリア責任者の予算への落とし込みが厳しく、店舗巡回員が自腹購買したクリスマスケーキを仙台の広瀬川に流して抗議をしたという事件だ。

 思惑通り、翌週のチェーンの全国会議で問題になったものの、エリア責任者が叱責されると思いきや、逆に社長がその徹底力を賞賛したという。ただ、これは1990年終わり頃の話で、今は方針が大きく変更していると思われるが、コンビニにとっての予約商品の重要性が分かる話だから、きっといまだに語り継がれているのだろう。

増え続ける「当日販売分」が廃棄になる

 ここで、賢明なる読者はなぜ予約商品なのに廃棄が出るのだろうと、疑問を抱いたのではないだろうか?

 恵方巻きは特に他の予約商品と比べて、200円台からと単価も低く、当日に気付いて買ってくれるお客さまが多い。また、販売側の都合として、この催事予算達成のために当日販売する恵方巻の発注数を年々増やしていった歴史がある。そのため、催事後に売れ残った「当日販売分が廃棄になってしまう」というわけ。その行き着いた先が、昨年にSNSで拡散した一部店舗での大量廃棄と今回の農林水産省からの通知となっていったのだろう。

今年は例年以上に知恵の絞り合いになる

 ただ、商売をしていく以上は機会ロスを減らし、販売のポテンシャルを最大限、追求する努力は続けていくべきだ。無駄な廃棄によるフードロスを考えるにあたり、昨年の予約数を把握し、店頭の販売状況も鑑み、当日販売の発注数を吟味することが必要。昨年の節分は土曜日で今年は日曜日。通常、発注は曜日と店舗の立地特性を踏まえて決定することが重要だが、今年も休日のため、発注数は決定しやすいと思われる。

 農林水産省から通知が出たことで、今年はいつも以上に注目が集まりそうな恵方巻き。販売数の最大化と無駄な廃棄縮小のために、本部と各店舗が例年以上に知恵の絞る勝負となりそう。当日の店舗巡回員は商品が足りない店と余りそうな店の恵方巻きの在庫を店間移動する仕事が例年以上に重要となりそうだ。

私も「古い商品から買うようにします!」

 

 そんな中、ローソンは1月22日、節分に向けた商品「カルビーポテトチップス 恵方巻味」(税込 178円)を数量限定で発売。賞味期限が通常の恵方巻きよりも長いため廃棄にはなりづらく、パッケージを持って口元に近づけると、恵方巻きを食べているようになり、SNS映えする商品設計にもなっている。

 こうした取り組みも含め、今年の節分のコンビニ店頭はどんな売場展開をするのだろう。巡回して変化を確認してみようと思う。

 フードロスについては店舗の取り組みの進化が絶対条件だが、消費者側の意識改革も必要。私自身、牛乳を買うときなど後ろの新しい日付の商品を引っ張り出して買うのではなく、古い商品から買うように徹底していこうと、今回の農林水産省からの要請を見て思った。