小売業や飲食業など、多店舗展開を行うチェーン企業にとって、今や商圏分析は当たり前のマーケティング手法となっています。その有効なツールとして活用されてきたのがGIS(地図情報システム)です。
GISは、地図上にさまざまなデータを重ね合わせ、距離・空間的な解析により商圏ボリュームや商圏特性、競合店との比較分析を行うものです。
地図に重ねる各種データは多くの種類がありますが、地図上にマッピングする施設や店舗の情報(ポイントデータ)は、競合するチェーンや店舗の分析に欠かせないものです。
今回は、全国の5万店弱の店舗データを収録した「日本スーパー名鑑(ポイントデータ版)」と、当社のGIS「MarketAnalyzer™」を使い、競合店の影響を加味した自社店舗の吸引力をシミュレーションする分析手法(ハフモデル分析)を紹介します。

店舗商圏のマーケットサイズを知る

 GISでは、店舗に対して「半径○○km」や「自動車・徒歩○○分圏」といった商圏を設定し、国勢調査や家計消費支出のデータなどを使って、商圏内のマーケットボリュームを算出することができます。
 図表①は、日本スーパー名鑑をGIS上の地図にプロットし、「食品を主体にしたスーパー」のみを表示したものです(日本スーパー名鑑の「業態区分」の属性項目により表示)。
 地図上の円は、中心の店舗から半径2kmの商圏を設定したものです。四角いマス目単位の緑色の濃淡は、125mメッシュ単位の世帯数の分布を表し、緑色が濃い区画ほど世帯数が多い地域になります。
 また、画面右下の「統計データ」は、半径2km商圏内の人口や世帯数などの集計値です。この数値の大小が商圏全体のマーケットのサイズを表しています。

図表① 商圏内の競合分布とマーケットデータ集計値

競合の影響を加味するとは?

 統計データでは、この商圏内の世帯数が約47,000世帯になっています。しかし、商圏内にはほぼ必ず競合店があり、生活者は競合店を含めて利用するため、実際の自社店舗のマーケットボリュームはその世帯数に届きません。
 そこで、競合店の影響度を加味した分析によって、真のマーケットボリュームを知ることが重要となります。このような課題について、GISを活用した分析手法の一つが「ハフモデル」です。
 ハフモデルとは、ニュートンの万有引力の法則を応用した、アメリカの経済学者デービット・ハフ博士が考案した商圏算出モデルです。
 図表②の概念図を見て下さい。家の周辺に店舗が3つあります。ハフモデルによる分析を行うと、中央の家から右の緑色の店舗には60%、左の青い店舗には10%、左下の赤い店舗には30%の確率で買い物に行くという推定が導かれます。
 このハフモデルでは、家からの距離と各店が持つ魅力値(概念図では売場面積)から吸引力を求め、それを買い物の確率としています。

図表② ハフモデルの概念図

 GISでのハフモデルの場合、概念図にある家が商圏内の小地域単位(町丁目やメッシュ)に当たります。つまり、ハフモデルを使うことで、「○○丁目からの自社店舗への吸引率は○○%」というアウトプットが得られるわけです。