コンビニで長年望まれている医療品販売から課題を解決していきたい!

流通アナリストの渡辺広明氏とAI・IoTコンサルタントの伊本貴士氏による「ミライのコンビニ」対談。最終回は世界に誇る日式コンビニを「AIでこう変えよう!」という問題提起です。テクノロジーの力で「日本のコンビニ、もっと良くなってもらいたい!」

仕事をする人を評価できないか?

渡辺:AIが人の評価をすることはできるのでしょうか? 僕はローソンに勤務していた時代、3年半、店長をやっていたのですが、コンビニ店員の仕事は僕のようなお調子者タイプは向いていません。なぜなら、最初こそ仕事を覚えるのは早いけれど、慣れてくると手を抜くから(笑)。作家の村田沙耶香さんが著した『コンビニ人間』(文藝春秋、第155回芥川賞受賞作)のようにコツコツと同じ仕事ずっとできる人がコンビニ店員に向いていて、そうした地道な作業ができる人こそ評価されてほしいと思っています。

伊本:ある程度は可能だと思います。実際に製造業の現場ではカメラで従業員の顔を撮影し、どれくらいの生産量が見込めるかという判断にAIが使われていますから。人間なので気分の良い悪いがあるのは仕方がないという前提のもと、例えば、気分の悪そうな顔の人がいたら危険な作業をさせないようにしようといった使われ方があります。

セブン-イレブン三田国際ビル20F店では「顔認証による決済」の他、「ターゲット広告サイネージ」も導入されている。

渡辺:そうなのですね。では、レジにかわいい女性アルバイトがいると売上げがアップするという定説もAIで分析可能なのですか?

伊本:はい。「かわいい」かどうかはどれだけ結果に影響するか分かりませんが、店員の顔写真をデータの1つとして入れ込んでおけば、AIが「こういう店員がこんな表情のときに売上げが上がる」と予測する可能性があります。

渡辺:つまり、AIは「かわいい」を理解するということですか?

伊本:いや、厳密にはちょっと違いますね。人間はこの子は目鼻が整っているとか肌がきれいだとか、人間の視点から見たいろんな条件から「この子はかわいい」と演繹的に思考をしていますが、AIの思考は帰納的なのです。100万人の顔を見せて、50万人がかわいい、50万人がかわいくないと判断したデータを入れたときに、じゃあそれぞれの50万人共通する特徴は何なのかと、答えから法則を導いています。おそらく、その法則は人間の感覚とは全く違うでしょう。

つまらない仕事はAIに置き換わってもらおう

渡辺広明 浜松市出身。2児の父。マーケティングアナリスト、日本唯一の流通アナリスト、コンビニ評論家、流通ジャーナリスト、約700品の商品開発に携わるマーケター、元コンビニバイヤー、元コンビニ店長、現コンビニアルバイター、「浜松市やらまいか大使」(観光大使)など、さまざまな顔を持つ。フジテレビ「ホンマでっか⁉TV」レギュラー評論家として活躍する他、スポーツ紙「東京スポーツ」に連載を持ち、ニュース・ワイドショー・新聞・週刊誌・ラジオなどのコメント・講演会・アドバイザリー・顧問業などでも幅広く活動中。趣味は「ドラゴンズ熱烈応援」「時折フルマラソン」「発展途上国の教育支援(ガーナ・ラオス)」。

渡辺:なるほど。では、発注の単位を間違えてアイスを1000個発注してしまいました、皆さん、助けてくださいという〝炎上発注〟は生まれませんよね?

伊本:そうです。あれは今までになかったクリエイティブな手法ですからね(笑)。僕はつまらない仕事はAIに置き換わってもらって、人間はコミュニケーションやクリエイティブな企画の仕事をやるべきだと思います。運動会でおにぎりが売れそうなら発注の個数はAIに任せて、おにぎりを買ってくれたお客さんにさらに何が売れるだろうかというところを人間が担った方がいい。

渡辺:いわゆる関連販売発注ですね。

伊本:繰り返しになりますが、結局AIは優秀なアドバイザーなのだけれどうのみにするだけではいけない。今まで起こったことがない天変地異レベルのことは学習データにないので、その状況も踏まえた予測をすることは絶対にありません。AIをどう学習させて、どう活用するかは人間が判断しなければなりません。その特性を理解した上で、AIをどう学習させて、どう活用するかといった人間とAIが協働する姿は人間が創造しなければなりません。

渡辺:はい。今の話を聞いてソフトバンクの「Pepper」を思い出しました。レンタル契約の継続率が低いことがニュースになっていましたが、Pepperをどう活用するかは企業側に問われているということでもありますよね?

伊本:その通りです。「はま寿司」ではPepperがお客さまの受付・座席案内をすることで、全店でいなくてはならないスタッフとして大活躍しています。成功の要因は、Pepperに高いコミュニケーションを求めるのではなく、予約受付とそれに付随する案内と目的を絞っているところだと思います。家族客が多い回転寿司店で、正確に待ち時間を伝えられるという「はま寿司」の事情に合わせた課題解決に絞って使っていることがぴったりハマっているのでしょう。僕はAIBO(SONY)のように小型のオモチャだったら、もう少しPepperも普及したと思います。しかし、Pepperは企業向けなので面白いだけではなく実際に役に立たないといけません。あのルックスと存在感で発売当初は高い誘引力があったことは間違いないと思います。ただ、AIに対する幻想に似たようなところもあるのですが、動かすだけで高いコミュニケーションができるというイメージが、結果的に導入した企業を混乱させた部分かもしれません。

インターネットで「医療の問題」も解決できる

伊本貴士 奈良県橿原市出身。3児の父。メディアスケッチ(株)代表取締役、サイバー大学客員講師。技術コンサルタントとして全国のさまざまな業界の企業に対して、技術戦略の立案や、研究開発などを行うサービスを提供。各企業や自治体などのアドバイザーや顧問なども多数行っており、経済産業省主幹の地方版IoT推進ラボメンターなども務める。全国でIoTやAI、ブロックチェーンなどの講演を行っており、日経ビジネススクール、日経技術者塾、日経エンジニアリングスクール講師なども務めている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」やテレビ朝日「サンデーLive!!」などに出演。著書に「IoTの教科書(日経BP)」「IoTの問題集(日経BP)」など。

渡辺:ところで、コンビニで長年望まれているにもかかわらず、なかなか進んでいないのが医薬品販売です。「急に熱が出た」とか「歯が痛くて」という緊急ニーズに応えられたらよいのに、薬剤師や登録販売者など資格を持った人がいないと販売できない。

伊本:はい。ドラッグストアで薬剤師が必要というより、「いること」が義務になっているイメージはありますね。僕が風邪薬を買うにしても、パッケージを見ればだいたいのことは分かるので、薬剤師さんに相談することはあまりありませんから。

渡辺:ローソンはドラッグストア機能を備えた「ヘルスケアローソン」の約180店舗で医薬品を販売していますが、登録販売者がいない時間帯は売れないし、試験と業務経験が必要な登録販売者を一挙に増やすことは不可能。全店に医薬品を置けるようにしろとは言いませんが、医薬品販売はコンビニ業界の悲願となっていると言っても過言ではありません。

伊本:インターネットでは一般用医薬品が買えるのにコンビニで買えないというのは不思議。政治的な話なのだと思いますけど……。

渡辺:1店舗に1人いなくても店頭にテレビ画面を置いて薬剤師と会話できるシステムでもいいと思いませんか?

伊本:いや、それならわざわざお店でやらなくても、事前にインターネットで薬剤師と話して相談した上で「あなたがこの薬を買うことを認めます」といった情報を登録し、それでもって薬を買える仕組みがあればいいと思います。

 

渡辺:ローソンは昨年行われたCEATEC JAPAN 2018で、バイタルセンサーによって来店者の心拍数や血圧、心音、肺音などを測定してそれを基に遠隔地の医師の問診を受けられるデジタルコンシェルジュというサービスを展示していましたが、これを生かすにもまず薬の販売が可能になってこそ。なかなか難しいとは思いますが、コンビニで医薬品が販売される日がきてほしい。

伊本:そうですね。いろいろな事情があるのだと思いますが、コンビニは困ったときに開いているという点に社会的価値があるので、より便利になってほしいという気持ちが届いてほしいものです。

渡辺:はい。僕も、世界一の小売り業態ともいえる「日式コンビニ」は無人コンビニなど極端な方向を目指すのではなく、カスタマーファーストを重視する路線で進むべきだと思っています。これから先、人口減、超高齢化の中、コンビニの人手不足が深刻化することは間違いありません。そのためには省力化を見据えてAI・IoTと共存する店舗運営がますます必要となっていくでしょうし、インターネット通販に唯一対抗できるリアル小売業として、コンビニの存在感は増していくはず。その中でどのような進化を遂げていくのか、考えるだけでワクワクします。

伊本:僕もテクノロジーの力でコンビニを良くするお手伝いができればと思います。