SPAで小売業界は変化対応をしてきたが……

 ただ、これまでと異なるのは人口が2008年から再び減少に転じ、それにつれて日本の“胃袋”全体も縮まっている点。超高齢社会の日本では“胃袋”がさらに縮小することは容易に想像でき、同時に内食から中食、外食への「食の外部化」も進んでいる。社会全体を見渡せば、構造の大きな変化やAI、IoTなどテクノロジーの急速な進化が起こり、AIが人間の知能を超えて社会が大きく変わる「シンギュラリティ」の到来も予測されている。

 このように人々の意識や価値観が大きく変わろうとしている中、消費マーケットは多大な影響を受けるだろう。その変化を見据えてニーズに対応しながら、一方で新たな需要を喚起する価値創造の試みも必要となるわけだが、小売業は変化に対応するだけでは単なる生き残りしかできない。新たな成長を目指す未来を切り開くには、新たな潮流を生み出す変化創造業にならなくてはならない。

 そこで、改めて思うのは、生産者が作った暮らしに必要なものを生活者に届ける最終的なランナーである小売りの役割だ。商品を仕入れて小分けにして小さく売る「仕入れ小売業」が連綿として続いてきたが、昨今はSPA(製造小売り)というモノづくりまでさかのぼった事業モデルも登場。現状、SPAは仕入れ小売業をはるかに上回る収益力を誇り、フランチャイズビジネスのコンビニと並ぶ、小売りにおける有力な勝利の方程式となっているが、これらを超えるものは今のところ出現していない。

インターネットが買物を変え、情報格差をなくした

 そうした小売業界に今、大きな影響を与えているのがインターネットの登場で生まれたBtoCのECなのだが、これはリアル店舗では不可欠な売り手と買い手が同じ空間にいる「時空同一性」を否定。24時間365日どこでも取引可能な利便性が生活者に支持され、台頭している。また、インターネットがあることでプロや専門家とアマチュア、素人の「情報格差」も概ね解消され、消費者と販売者の関係でも後者の優位性が大きく揺らいでいる。

 こうしたネットとリアルの構図の中で、リアルの店舗小売業はネットの利便性とは異なる価値を追求、ネットを活用して集客に結び付ける施策などを行い対抗する一方で、自らECを手掛けて需要の取り込みを図ろうとしている。

 イオンは2020年のEC売上比率を16年の0.7%から一挙に12%まで引き上げる計画で、社員にハッパを掛ける意味もあり「将来的にはリアルとネットの売上げを逆転させる」という岡田元也社長の発言も漏れ聞こえてくる。

 経済産業省によれば、2017年のBtoCの物販のEC市場は8兆6008億円、そのうちスマートフォンによるものは3兆90億円で35.0%を占めている。今後もスマートフォン経由の消費は増え続けると思われ、消費マーケットに可能性のある主戦場の1つとなるため、アプリ開発を含めたプラットフォームをどのように構築するかが問われている。

 これに先立ち、ECの台頭ともにインターネットを活用して顧客との接点を拡大する「オムニチャンネル」が一躍脚光を浴びた。しかし、セブン&アイ・ホールディングスの「オムニセブン」がリアルとネットの相互の融合に力点を置いて、理論先行の概念的な全体モデルを構築したため失敗したように、今まで大きな成果を得られたケースは見当たらず、いつしか下火になっていった。

 これに対し、「無印良品」はネット(スマホ)を使ってポイント付与や情報提供などでリアルの店舗に誘導する単純明快な集客戦術で大成功を収めており、今ではセブン&アイもこの戦術に転換するなど多くの企業が採用している。今のところ、ネットとリアルの融合を難しく考えるのではなく、ネットをリアルの集客・販促のツールとして活用するのが正解ではないか。