無人精算は無人運営でも無在庫販売でもない

 無人精算を実現しても無人運営が実現するわけではなく、荷受けや品出し・補充などの店内マテハン業務が残る。RFIDによるリアルタイム在庫管理や画像認識AIでフェイシング管理・補充発注は自動化できても、物理的な品出し・補充は無人化できない。ロボットによる補充作業は可能だが、顧客のピッキングを長時間妨害してしまうし危険だから営業時間中の運用は非現実的で、当分は人手以上にコストもかさむ。物理的な解決策は80年代から試行されてきた後方からの傾斜補充だが、バックヤードが肥大して売場が狭くなるという致命的欠陥が解消されるめどは立っていない。

 C&Cも無人精算も無人運営でも無在庫販売でもなく、店舗販売が抱えてきた販物一体流通の弊害を解消するものではない。全てのコストとロスの元凶となってきた店舗在庫が無くなるわけではなく、在庫が存在する限りマテハン作業と保守管理の人件費、在庫を置くスペースの家賃が発生する。その壁を越えるには販売と物流を分離するしかなく、ECのプラットフォームに店舗販売をのせて販物分離するショールーミングストアや受け取りお試しのTBPPこそニューリテールの本命だと思われる。

優先すべき投資はいずれか

 販物一体の店舗販売だと売上対比運営経費率はテナント店舗では40%に迫り、フリースタンディングの大型店でも20%台が限界だが、ECで一千億円を越えれば20%を切り15%も可能だ。ECのプラットフォームにのせるショールーミングストアは在庫の分散と物流をミニマムに抑制し、家賃も人件費も販物一体店舗より格段に圧縮されるから、ECに近い運営効率が期待できる。サンプル在庫も置かないTBPPやデジタル型ショールーミングストア(大半はTBPP兼務になる)なら店舗在庫はゼロになる。自社ECを確立した企業にとってはシステム投資や大きな店舗投資を要せず販売機会を拡大できるから、お試しが不可欠な衣料品や靴などでは無人精算より普及が先行するのではないか。

 認知があってネットの情報だけで買える商品はECで、宅配コスト回避や鮮度が求められ近隣購入の方が手っ取り早い日常商品は無人精算店舗で、お試しやコンサルティングが必要な商品はショールーミングストアやTBPPでと使い分けられるなら、貴社にとって優先すべき投資はいずれであるべきか。業界の空気に流されることなく、冷静な判断が求められよう。