「僕はコンビニに行くのすら面倒くさく感じることがあり、できることなら全てネットで購入できて家まで届けてほしいと思っていた」との伊本氏の発言に渡辺氏は?

流通アナリストとして活躍する渡辺広明氏とAI・IoTコンサルタントの伊本貴士氏という異色の2人が「ミライのコンビニ」をテーマにあらゆる角度から対談するこの連載。第2回は「コンビニの新しい活用法」がテーマです。

自販機にしてしまえばいいのだろうか?

渡辺:お客さまの便利さを考えると、まずはレジ待ちを解消しないといけません。私が以前、2、3品の商品をレジに持ち込んでから会計が終わるまでの時間を調査したところ、現金だと約36秒、電子マネーだと約26秒と10秒ほどの違いがありました。さらにセルフレジはもっと短く約12秒で済みます。コンビニでの1日の平均来店客数が1000人前後であることを考えると、大きな違いです。

伊本:まさに塵も積もればということですね。でも渡辺さんは、いっそのことコンビニを自動販売機にしてしまえばいいのではないかと思ったことはありませんか?

渡辺:僕は小売業者なのでそれは嫌なんです。必要なものだけを買うのではなく、余計なモノを買うのが楽しみだと思っているほどですから。だから自販機よりはお店に入って、自分が欲しいモノをピックアップするところが必要だと思っています。

伊本:なるほど。僕はコンビニに行くのすら面倒くさく感じてしまうことがありまして、できることならお菓子とかジュースとか、全てネットで購入できて家まで届けてほしいと思っていたんです。

「ローソンフレッシュピック」は朝スマホで注文したら最短14時以降に最寄りのローソンでスーパーマーケット食材が受け取れる。

渡辺:そういう方には、ローソンが東京・神奈川の一部で実施している「ローソンフレッシュピック」がいいかもしれません。朝スマホで注文したら最短14時以降に最寄りのローソンでスーパーマーケット(SM)食材が受け取れるサービスがあります。とはいえ、家まで届けるとなると配達コストがかさみますからね。いわゆるラストワンマイル問題です。

伊本:はい。渡辺さんの話を聞きながら考えていたんですけど、僕がコンビニに行くのが面倒くさいと感じるのは多分買うものが決まっているときで、欲しいものが決まってないときの方がある意味では買物が楽しいのかもしれません。

渡辺:ちょっとしたストレス発散であったり、コンビニに楽しみに行ったりしているんですよね。もっと言うと、買うものが決まっているものはAmazonダッシュボタンでもいいわけですよ。

伊本:確かに。日用品は一定の頻度で買うことが決まっているので、楽しい買物ではありませんね。

渡辺:今後、高齢化がますます進むと厳しくなると言われているのがSMです。高齢者は700メートル以上歩かず、近場でしか買物をしないという小売業の定説もあるので、ネット通販とコンビニが占める割合が高くなるでしょう。もう1つ、あまりに多様化している商品を店舗に陳列することが非効率になっている点も見落とせません。例えば、シャンプーなら「メリット」(花王)、「パンテーン」(P&G)、「ラックス」(ユニリーバ)という3大ブランドを全て合わせてもシェアが15%以下。上から順に13ブランド並べてやっと25%にしかならいほど超多様化が進んでいます。となるとドラッグストアで買うよりもネットで購入する方がより多くの中から選べることになっていきます。ただし、食べ物だけはこの理屈とは別です。伊本さんが明日のお昼に食べたいと思うものは明日にならないと分からない。だからこそコンビニの役割で食はとても大きいと思います。

私はエンタメスペースとして評価しています!

伊本貴士氏

伊本:そうですね。Amazonダッシュボタンでいつも同じご飯では寂しいからですね。軽減税率の導入でコンビニのイートインコーナーがなくなるかもしれないという話はどう思いますか? 僕は高齢者の居場所を奪うという点では、とんでもない話だと思っています。

渡辺:財務省はイートインを休憩施設に位置付ければいいと言っています(笑)。お客さまが不便になるのでイートインで食べると、軽減税率適用外になることには僕も反対です。

伊本:誤解を恐れずに言えば、僕はコンビニを小売店としてではなく、エンタメスペースとして評価しています。SMにない魅力がそこだと思っていて、渡辺さんのおっしゃるように独自の商品が置いてあることもそうですが、個人的に一番面白いと思っているのが「一番くじ」。これはSMでは売れないだろうし、Amazonでも売れない商品だと思います。

渡辺広明氏

渡辺:見た目でワクワクするものですからね。ラストワン賞とか、ただのくじよりも買いたくなる工夫もいろいろと施されてします。

伊本:僕は特別ディズニーが好きというわけではないんですけど、コンビニでディズニー関連の一番くじが目に入ると「こんな賞品があるんだな。ちょっとやってみようかな」と購入してしまいます。

渡辺:それこそ買物の楽しさですよね。だから、くじだけでなく食品でも選ぶ楽しさが必要なんですよ。伊本さんだけじゃなく、日本人にとってコンビニは空気のように当たり前の存在になっています。でも、ちょっと冷静に考えて世界を見回すと、あんなに便利があふれているコンビニは存在しないのも事実だし、それくらい進化を遂げています。当たり前のことが当たり前にできることがもはや当たり前になっていますけれど、レベルは高い。

伊本:はい。僕はもっとエンターテインメントとして進化してほしいと思っています。先ほどレジ待ちの話を聞きましたが、お客さんがレジに並ばなくていいようにすることは現状の問題解決であり、そこに新しい価値はありません。僕は「解決」を超えて、最新のテクノロジーならこんな面白いことができるんだという「新しい価値」を提案していきたいと思っています。

渡辺:お客さんをどのように楽しませられるかという角度ですね。例えば、こんなアイデアはどうでしょう? 伊本さんが同じコンビニの店舗に100回通ったら、伊本さんの好きそうな食べ物がプレゼントされて、僕だったらファンである中日ドラゴンズのグッズがもらえるとか。

伊本:面白いですね。顧客がいつ何を購入したのかというデータは取れるので、その人に合わせたサービス提供があってもいいと思います。

渡辺:いざやってみようとすると「お客さまはみんな平等だ」という意見が出てくるのでしょうが、海外の企業にとってはロイヤルユーザーの管理をますます重要視しています。

伊本:普通に商品を買うという行為にゲーム性を取り入れるゲーミフィケーションの考え方も使えるかもしれません。クレジットでマイルを貯める人はこの要素を楽しんでいるんです。

渡辺:そういえば昔、マイルを貯めたいがために無駄な出張をしている上司がいました(笑)。

エンタメ化することで新たな価値提案が進む!

伊本貴士 奈良県橿原市出身。3児の父。メディアスケッチ(株)代表取締役、サイバー大学客員講師。技術コンサルタントとして全国のさまざまな業界の企業に対して、技術戦略の立案や、研究開発などを行うサービスを提供。各企業や自治体などのアドバイザーや顧問なども多数行っており、経済産業省主幹の地方版IoT推進ラボメンターなども務める。全国でIoTやAI、ブロックチェーンなどの講演を行っており、日経ビジネススクール、日経技術者塾、日経エンジニアリングスクール講師なども務めている。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」やテレビ朝日「サンデーLive!!」などに出演。著書に「IoTの教科書(日経BP)」「IoTの問題集(日経BP)」など。 /渡辺広明 浜松市出身。2児の父。マーケティングアナリスト、日本唯一の流通アナリスト、コンビニ評論家、流通ジャーナリスト、約700品の商品開発に携わるマーケター、元コンビニバイヤー、元コンビニ店長、現コンビニアルバイター、「浜松市やらまいか大使」(観光大使)など、さまざまな顔を持つ。フジテレビ「ホンマでっか⁉TV」レギュラー評論家として活躍する他、スポーツ紙「東京スポーツ」に連載を持ち、ニュース・ワイドショー・新聞・週刊誌・ラジオなどのコメント・講演会・アドバイザリー・顧問業などでも幅広く活動中。趣味は「ドラゴンズ熱烈応援」「時折フルマラソン」「発展途上国の教育支援(ガーナ・ラオス)」。

伊本:僕も空港でラウンジが使えるメリットは分かりませんが、それぞれの要求や嗜好に合わせたサービスを提供することで、みんなを喜ばせるようにAIが使えたらいいなと思います。僕だったら「一番くじ」の当選確率が数%上がるとかでも喜びます。そのために、なるべくこのお店で買うようにして、頑張ってポイントを貯めようとするでしょうね。

渡辺:ロイヤルユーザーの管理はコンビニだけでなく、メーカーにもメリットがあって、例えば、缶コーヒーの「ジョージア」をずっと買い続けている人はローソンで買おうがファミマで買おうがポイントがたまって還元できる仕組みを作ったらいい。広告代理店に莫大な広告費を投下するより効率的だと思いますよ。

伊本:自分が好きなことをして褒められるのは誰でもうれしいものですからね。ゲーム性を取り込みながらコンビニをエンタメ化することで新たな価値提案が進むと思います。こうした店舗を通じてお客さまにどのような価値を提供するのかが設計できれば、あとは私のような技術者が、具体的に人工知能などどのような最新技術を使えば面白く実現できるかという技術設計に入ることができます。

【第3回 ここが間違い!「日本企業のAI・IoT活用」に続く】