X未来餐庁の1号店で。料理が出来上がると、ウエーター役のロボットがテーブルまで自動運転で料理を運んできてくれる。

 中国のEC(電子商取引)モールでアリババ集団に次ぐ第2位のEC企業、京東(ジンドン)集団(北京市)がデジタル技術を活用した新型店舗の本格展開に乗り出す。11月にはロボットが調理をする省力化レストランの1号店を天津市に開業、今年1月から実験していたスーパーマーケット(SM)の本格的な多店舗化にも着手した。無人コンビニも今後出店を加速する。同社はオンライン(EC)とオフライン(実店舗)、物流機能の境をなくし融合する「無界小売」(ボーダーレスリテール)を提唱しているが、それを具現化する実店舗の開発と展開に拍車が掛かる。

[X未来餐庁]ロボットが調理する省力化レストラン

 天津市の浜海新区にある環境配慮型の次世代都市、天津エコシティ内に11月10日、ちょっと変わった中華料理店が開業した。店名は「X未来餐庁」(餐庁はレストランの意)。中国で初めて注文から調理、配膳まで全工程をロボットが担う省力化レストランだ。

 お客は400㎡・100席の店に入ると、テーブルに設置されたメニュー画面から注文する。スマートフォン(スマホ)でQRコードを読み取り、アプリ上からオーダーすることも可能だ。注文と同時に会計も完了する。

厨房内の調理ロボット。切った食材を人間が入れると、プログラミングされた味付けや料理方法で調理してくれる。

 注文情報はキッチンにある4台(他に予備1台)の調理ロボットに自動的に振り分けられ、ロボットが片栗粉を付けたり肉や野菜を炒めたりして調理する。レシピはプロの料理人が監修し、温度や時間、味付けを標準化。四川や広東、山東など中国の8大料理・40種類を作ることが可能だ。

 4~6人分を10~20分で料理すると配膳ロボットがお客の元に運ぶ。京東の自動運転と高精度地図の技術などにより、障害物を避けて最適な配膳ルートを自ら選んで店内を自動運転する。

 将来的には無人化を目指しているが、現状は人手が必要だ。キッチン内のロボットの管理に1人、食材を切ってロボットに入れるなどの準備に4、5人、利用方法などを説明するフロアの案内役が3、4人。それでも通常の飲食店に比べ、半数の人員で済むという。

 価格は一般的で、客単価は1人当たり30~50元(490~810円)を見込む。同社はこの1号店で実験・検証した後、多店舗化を始め、2020年までに1000店の展開を目指している。

X未来餐庁の店内。京東のキャラクターであるジョイくんがコックを装っている。
調理ロボットは四川料理、広東料理、福建料理など8大料理40種類を作れる。

京東が提唱するボーダーレスリテール構想とは?

 店名にもある京東集団のX事業部はこのレストランや無人コンビニなど店舗の無人化技術の開発とそれを使った新業態を開発・展開している部門だ。

 京東集団は中国のECモール「京東商城」(JD.com)を運営。リアル店舗も含めた2017年の総収入は約6兆127億円とアリババの約4兆3000億円を上回る中国で最大の小売会社だ。

京東集団は中国全土に築いた自社物流網が強み。6万5000人以上の配送従業員を抱えている。

 同社は中国全土に自社物流網を築いている。大型のスマート物流センターを全国15カ所に配置。倉庫も500カ所以上有し、約7000カ所の配送&ピックアップステーションを持つ。配送網は中国の人口の99%をカバー。ドローンによる配送や無人配達ロボットの実用化にも乗り出している。

 同社は強い物流網を背景に、オンラインとオフライン、物流機能を融合した「ボーダーレスリテール」を実現し、各段階で得られるビッグデータを生かしてサプライチェーンを合理化。消費者がECと実店舗の境界線を超えていつでもどこでも欲しいものを手にできる快適な環境を実現したい考えだ。

[X無人超市]レジがない無人コンビニ

 実はこの日、省力化レストランの隣に同じX事業部が展開する「X無人超市」の天津3号店がオープンした。

X無人超市の天津エコシティ店の店内。

 売場面積は49坪。菓子や缶詰、酒類、ソフトドリンクといった加工食品やシャンプーなどを扱う。超市はSMの意味だが、むしろコンビニに近い。ただし営業時間は9~22時だ。

 この店にもレジがない。店頭案内に従いスマホにミニプログラムをインストールし携帯番号を登録。表示されるQRコードを入り口のゲートでかざすと正面にお客の顔が映し出され、顔認証が完了。ゲートが開き入店できる。

スマホに表示されたQRコードをかざして入り口のゲートを通過、正面のディスプレーにお客の顔が映し出される。
商品にはICタグが付けられている。店頭の価格表示には電子値札を採用。価格変更が瞬時にできる。

 店内の商品にはICタグが付けられ、店頭の価格表示には電子値札を採用。天井には30台のカメラが設置され、お客の動きを常にキャッチしている。

 商品を選んで出口のゲートを通過すると突き当たりにカメラがあり、顔認証されて精算が終了。購入した商品と金額はメールでお客に通知される。

出口のゲートを通過すると突き当たりにカメラがあり、顔認証されて精算が終了。
X無人超市の天津エコシティ店の外観。

 X無人超市は昨年10月北京市にある京東集団の本社1階に1号店を開設した。

 当初は天津エコシティ店と同様に、商品にICタグを付けるRFID(無線自動識別)技術を使っていたが、コスト高もありRFIDを使用しない仕組みに方針を転換。顔認証も廃止した。

 カメラの台数を増やし商品棚に重量センサーを設置するなどの工夫で精度を高め、RFIDからの脱却を実現した。人体認証も導入した。

 X無人超市は既に20店を超えており、今後さらに出店を加速するという。

[セブンフレッシュ]オン・オフライン統合の生鮮強化SM

 天津のX未来餐庁とX無人超市の開店翌日の11月11日、京東集団は北京市に近い河北省にSM「セブンフレッシュ」の3号店をオープンした。

 今年1月に北京市郊外の商業施設内に1号店を開いて10カ月余り。北京市内の2店で実験してきたが、いよいよ本格的な多店舗化を始めたのだ。

 年内には北京、成都、西安などの主要都市に全て直営で十数店舗を出店し、一気に20店程度に店舗網を拡大する。その後パートナー企業と連携し全国展開。5年以内に1000店体制を築く。

セブンフレッシュ1号店の大族広場店。在庫回転日数は5日と超高速で、従来型のSMは30~40日というから驚く。
鮮度にこだわり、葉物類は入荷から24時間で売り切る。パッケージにもその旨が表示されている。

 セブンフレッシュはオンラインとオフラインを統合し生鮮食品を強化した新タイプのSMだ。実店舗で販売している商品はECでも販売し、オンラインで注文すると、半径3㎞以内なら30分以内に店舗から無料で宅配する。将来はオン・オフラインの売上げを半々にしたいという。

イートインのレストランでは購入した食材を渡すと料理してくれる。
オンラインで注文した商品は売場からピックアップされ、天井近くのレールにつるされてバックヤードに運ばれる。

 1号店の大族広場店は4200㎡。営業時間は8~22時。フルーツの売上比率は約13%と高く、野菜は6%、精肉が10%、パンが5%で、飲料や菓子などグロサリーが35%。残りは鮮魚やイートインのレストランなど。

 新鮮さにこだわり独自に販売期間を設定。例えば葉物類は24時間たてば廃棄する。ビッグデータをAI(人工知能)で分析しロスを削減している。

袋に貼られているバーコードを中央下のリーダーにかざすと、上の大型モニターに産地などのトレーサビリティ情報が表示される。
いけすを泳ぐ魚にもQRコードが付けられ、スマホで読み取ると産地などの情報が表示される。

 食の安全性に対する意識の高まりを受け、ほぼ全ての商品でスマホでQRコードを読み取るか、商品のバーコードを専用のリーダーにかざすと、産地や出荷時間、重量、食べ方、フルーツであれば糖度、入荷時間、消費者の口コミ評価などが表示される。これらのトレーサビリティ(追跡可能性)情報はブロックチェーン技術を活用し、改ざんができないという。

 決済も決済アプリとひも付けておけば顔認証で購入できる仕組みを導入。現金やクレジットカードを使う旧来のレジは2台だけ。26台が自動レジになっている。

 

 

 
 

※本記事は『販売革新』2018年12月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

※『販売革新』はオンラインストアや紀伊国屋書店など大手書店で発売しております