13の作業分類別に日報に作業時間を記入していく

 編集部:人時生産性という言葉は、皆が使いますが、その内容は「よく分かっていない」というのが実情ではないでしょうか。毎年、計算している小売企業の数字をみたこともありません。

 経営面で、高めるべき最も重要な経営指標でありながら、上場企業の有価証券報告書にも、人時生産性は載っていません。作業時間の計測が行われてないからでしょうね。

 吉田:おっしゃる通りです。私が人時生産性を計算するのは、載っている正社員と非正規雇用の人数と全体売上高からです。日本チェーストア協会のデータでも同じで、パートは便宜的に1日4時間労働としています。

 しかし、これでは会社全体の人時生産性の推計値しか分からない。図表の13の作業ごとの人時生産性は不明です。1960年代にドラッカーは流通は闇の中としていましたが、それが続いていると思っています。

 編集部:どうやって図表の実績に数値を入れていくのでしょうか。作業時間をストップウォッチで図るのですか。大変な手間ですね。小売業がこれを行うでしょうか?

 吉田:正確には13の作業種類別にストップウォッチで計測します。しかし、全店でそれを行えば、本部の必要な作業時間(つまりコスト)は膨大になります。そこで、次の方法で行うのです。

(1)売上げと利益で平均的なモデル店を3店選択する。1店では偏りが出るので、100店あっても3店を選びます。

(2)モデル店舗の各部門に配置された正社員、パート・アルバイト、嘱託社員を含む全員に、標準フォーマットの作業日報に記入してもらいます。

 図表の左の1から13の作業種類をあらかじめ、記入した表を使いますが、手書きではなくエクセルにして渡せば、集計は省力化できるでしょう。例えば、ある担当部門の棚調べの時間が1.5時間、発注計算・処理が30分、クリンリネス作業が1時間、コミュニケーション30分……といった要領です。1日1回、終業時に各人が行い、店長に日報を提出してもらいます。3店で2週間(14日)続けるといいでしょう。

(3)2週間分を部門ごとに作って集計します。部門ごとに行うのは、例えば鮮魚の部門とグロサリーの部門では作業内容と時間が大きく異なるからです。

 店舗のレジは全部門の商品を一時に処理しますから、部門の2週間の売上高で比例配分して、その部門の作業時間とします。他の部門を手伝った場合も、手伝った先の部門の作業時間として記録して入れなければなりません。

 編集部:なるほど、作業日報という形式で行うのですね。これならできます。作業日報のフォーマットは13の作業分類をあらかじめ書いておき、その欄に今日の個人の作業時間を記入(またはエクセル入力)すればいい。

 吉田:作業分析と改善は、難しく言えば、IE(産業工学)で確立された方法です。IEのもとになったのはフレデリックテイラーの「作業種類に分けたタイム・スタディ(時間研究)です。これを、フォーマット化された日報で行うのです。

 なお、図表には店長、次長、主任がその部門に対して行っている修正作業・管理作業の時間も入れます。「売場を見て回る」のも、その部門への管理作業になります。

 以上のようにして、部門ごと、作業種類ごとの2週間(14日間)の合計人時が集計されます。それを2倍して4週分にすれば、ほぼ1カ月分の売上げと商品処理個数になるでしょう。

 重要なことは個人の作業種類ごとの時間報告が「10%や15%」くらい不正確でも構わないことです。合計時間は固定していて、どの作業かに割り振られるからです。少ない時間報告と多い時間報告が合計されると全体はほぼ正確になって行きます。

 まず、部門ごとの人時生産性の統括表の実績を完成させてください。多くの発見があるはずです。店舗マネジメントとは実は、店長と次長による作業管理のことですが、それは行われていないので、発見があるのです。

 部門の生産性統括表の実績表ができた後は、その右に改善の目標値を、部門合計で10%改善として、本部(店舗運営部の担当)が記入して行きます(注・10%の改善は毎年、行うべきことです)。

 合計作業時間の10%短縮が10%分、人時生産性を高めることになります。

 改善目標を記入した後は「どんな工程改善を行って人時生産性を上げるかに移っていきます。