第23回は「サブスクリプションの本当の意味」です。

 皆さん、最近よくサブスクリプションという言葉を耳にしませんか。これはどのような意味なのでしょうか。

 サブスクリプションとは『従来の製品やサービスの購入ではなく、消費や利用に関して、その正当な対価(代金)を支払う方式』のことだとよく説明されます。分かりやすく記すと、『買うのではなく、必要に応じて借りる方式』ということで、そのタイプには従量(課金)制や定額制などがあります。

 皆さんも、スマートフォンの利用で月額従量制のサービスを利用しているのではないでしょうか。また、後ほど、少し触れますが、アマゾンプライムなどは、まさに定額制の象徴といえるサービスといえます。

「顧客経験価値の醸成」のために重要!

 このように、サブスクリプションはわれわれの日常生活に深く、浸透しつつありますが、このことは小売業、サービス業にとってどのような意味を持つのでしょうか。

 その答えは「顧客経験価値の醸成」に尽きます。従来のマーケティングでは、物やサービスの販売に主眼を置いた「交換価値」の考え方が主流でしたが、物やサービスがなかなか売れない時代には交換価値だけでは不十分。顧客経験価値の醸成が重要になっています。

 では、顧客経験価値である「購買後の消費価値」はどのようにして生まれるのでしょうか。それは、これまで本連載でも何度か取り上げてきた「場(タッチポイント)」をきっかけにします。

 そのステップはこう。〈1〉タッチポイントで消費者と企業が相互作用(コミュニケーション)をする。〈2〉消費プロセスを通じ、企業が消費者の抱えるニーズや課題等への価値提案、問題解決をする(ここでマーケティングという手段が使われます)。〈3〉そうすることで、消費者の心の中で、「顧客経験価値」が醸成される。

 これはまさに「価値共創」の概念そのもの。価値共創を図る上で、今後、重要になってくる概念が、この「サブスクリプション」というわけなのです。

アマゾンプライムも「快楽性」「満足感」は不十分

 ここで、サブスプリプションの具体例として、アマゾンプライムを取り上げます。

 皆さんはアマゾンプライムの会員でしょうか。日本ではアマゾンプライムは年会費3900円の定額制のサブスクリプションサービスです(ちなみに、アメリカでは、日本よりはるかに高く、年会費99ドルのサービスとなっています)。

 このサービス内容は主に3つ。①「魅力的なコンテンツサービス」(例:映画やお笑い等の動画配信サービス、音楽の配信サービス、Kindle端末を用いた書籍の配信サービスなど)、②「配送サービス」(例:アマゾンプライムナウによる短時間無料配送サービス)、③「利便性」(例:アマゾンプライムナウによるレストランサービスなど)となっています。

 皆さんは、このサービス内容を見て、大切な概念「価値共創」が行われていると感じましたか?

 確かに、「利便性」は十分満たされていると思います。しかし、サブスクリプションの真の目的、「顧客経験価値」は醸成されているかというと、疑問符がつきます。

 消費者にとって「利便性」は重要です。しかし、物やサービスが消費者にもたらしてくれるもう1つの重要な価値「快楽性」や「満足感」をもたらしてくれるとは私はあまり思えないのです。これらこそが、顧客ロイヤリティやエンゲージメントを生み、その企業に対するブランドロイヤルティ、信頼感へとつながっていくにもかかわらずです。

単に「買う」から「借りる」への変換ではない!

 つまり、サブスクリプションは単に「購買」から「借りる」への概念変換ではなく、「顧客関係性の長期的構築」が真の目的になるべきものなのです。

 先ほど、従来のマーケティングでは、購買時の交換価値を重視してきたと記しました。これは短期的な財務成果(例:売上げ、収益等)重視の考え方です。

 しかし、今日、消費者はスマホを常時持ち歩くオムニチャネルショッパーになったため、この考え方も変わり、循環型の消費購買行動(これを「カスタマージャーニー」といいます)が考え方の主流になりつつあります。

 これは「購買前→購買時→購買後」の全体プロセスのうち、交換価値形成の「購買時」で止めるのではなく、「購買後」の消費プロセスにまでマーケティング活動を拡張すべきという考え方。その拡張プロセスを担うマーケティング活動の1つとして、サブスクリプションはあるのです。従来のパーチャスファネルのような購買時点での交換価値を重視する「単線型」のマーケティング概念にはない、新たな手法がサブスクリプションなのです。