折り畳み傘のカバーを持ち手の中に内蔵できるアイデアを思い付いたが……。

 

 2017年9月13日、アメリカのクラウドファンディング「Kickstarter」(キックスターター)の日本語版サービスが上陸した。クラウドファンディングは、自分のアイデアなどをその専用サイトで紹介し、投資を募る新しい形の資金調達方法。インターネットを利用するため、世界中から資金が集まり、アイデアによっては銀行やベンチャーキャピタルよりも資金を募ることができるものだ。

 今回は、キックスターターを利用した筆者の経験を交えて書いていく。

目標金額に届かなければ、出資者に全額返金される

 キックスターターとは、09年にアメリカで誕生した。

 その仕組みはこうだ。同社のサイトを通じて世界に自分のプロジェクトを説明し、調達したい目標金額を明示する。そして、そのプロジェクトに関心を持った人は資金提供者となり、プロジェクトの製品や作品、プロジェクトした者が設定した何かを株主優待のように見返りとして受け取ることができる。

 キックスターター側は、設定した期間内に調達目標金額に届いたときのみ5%の手数料を徴収する。もしプロジェクトが目標に届かなかった場合は、そのプロジェクトはなかったことになり、出資金はプロジェクトを立ち上げた側には渡らない。もし100万円とターゲットにして期間中に99万円しか投資が集められなかったら、その99万円は投資してくれた人たちに戻るのだ。

 つまり、出資者は出資したお金が戻って来るため、形を変えた“元本保証”がされていると安心感がある。それは気軽に出資をしてみようという好循環を生む。これが、同サイトのビジネスモデルの一番優れているところだろう。

 キックスターターの各プロジェクトのページには現在、何人からいくら集まり、締切まで残り何日かということが“見える化”されており、投資への判断材料にもなる。約60万人以上が10個以上のプロジェクトに出資しているというデータがあるが、それはこうした出資をしやすい仕組みにあるといえるだろう。

 キックスターターの出資の流れは、「キックスターターのサイトに行く」→「所定事項を記入して登録する(フェイスブックを利用してサインアップも可能)」→「気に行ったプロジェクトを探す」→「OKと思ったら投資する」。それだけだ。

1400万人が支援し、33億米ドルの資金が集まる

 音楽、フィルム&ビデオ、ファッション、音楽、ゲームなど多彩なプロジェクトがあるが、これまでに約1370万人がプロジェクトに支援・出資し、33億4600万米ドルあまりの資金が集まった。総プロジェクト数は約37万6000で、そのうちおよそ13万3000のプロジェクトが目標金額に達した。成功したプロジェクトの半分強が1000米ドル~9999米ドルの資金を得ており、中には100万ドル以上を集めたプロジェクトも262件ある。

 ファンディングに成功しなかった約24万のプロジェクトを見ると、全く資金が集まらなかったのは5万2000ほど、目標金額達成率が1~20%だったものは約15万件だった(数字は全て17年10月23日時点)。

 これまではキックスターターがサービスを展開している国に銀行口座などがなければならず、日本のベンチャー企業が資金を受け取るには、既に外国に口座を所有しているか、あえて外国に口座を作る必要があった。それが今回の日本語版サービスの追加により、日本の銀行口座や身分証明を登録すれば参加できるので、日本人がキックスターターと使うハードルは大きく下がったといえるだろう。

 キックスターターはニューヨークの本社に約130人の従業員が働いているが、日本にはオフィスを構える予定はない。ただ、カントリーマネジャーには、フェイスブック ジャパンでカントリー・グロース・マネジャーを務めていたほか、現在は外資系企業が日本進出する際の支援をする「Anchorstar」の創業した児玉太郎氏が就任している。

実際に利用した筆者が直面した課題と成果

 筆者は香港で「Liucia」(www.liucia.com)という女性向けのバッグを中心としたファッションブランドを約10年前からカナダ人パートナーと一緒に経営している。

 商品ラインアップの拡大の中でデザイナーが傘についてのアイデアを思い付いた。折り畳み傘を購入した時に付いているカバーは使用開始後にどこかに行ってしまう人が多いのではないだろうか? そこで、デザイナーはそれを持ち手の中に内蔵できるようにした。これにより雨が降ってもデパートで配布される傘用のビニール袋も要らなくなるという環境にも優しい商品だ。