今年もスーパーマーケット(SM)の新店をいろいろ見てきたが、最も印象に残ったのが「カスミ筑波大学店」。店名通り、筑波大学の「筑波キャンパス」に10月1日にオープンした約200坪の小型店だ。

 おそらく初めて、大学のキャンパスに出店したSMという意味でも大変興味深いが、その立地故に、従来の店舗とは異なる点がさまざまあり、SMの在り方を考えるよいきっかけになると思った。

 最も異例なのが毎週定休日があり、しかもそれが日曜であること。週末はまとめ買いも期待でき、店を閉める選択肢は通常ではありえない。日曜日は授業がなく、学生の来店が見込めないという単純な理由からではあるが、日曜日が休みになることで、働く人間にも大きな影響を及ぼす。

 パート・アルバイトの募集には通常より3倍の応募があり、人手不足の時代にもかかわらず、雇用を確保できるという思わぬ副産物をもたらした。

 パートの大半を占める主婦は、休日は家族と一緒に過ごしたいということから、SMでの勤務を敬遠する向きがあり、その思いは正社員も一緒である。日曜定休になればそのハードルも解消される。働き方改革を考える上でも現実には難しい問題だが、社会的に議論されるべきだろう。

 SMにとって大きな問題となっている人手不足に後押しされ、省人化となるセルフレジも急速に普及が進んでいる。ここのレジは全てセルフレジで、しかもキャッスレスレジ。学生が主に利用することから、若い世代に抵抗がなく、自由に使いこなせる可能性が高いと判断し導入を決めた。現金の管理が不要となり手間が省け、利用者にとっても精算時間が短く、待ち時間の短縮にもつながる。

 クレジット機能付き「KASUMIカード」、電子マネー「WAON」、「筑波大学カード」の他に、各種クレジットカードが利用できる。セルフレジをキャッスレス専用に仕様変更した9台を用意している。

学生には便利だが経営は厳しい

 今回の出店の経緯は、学生や教職員の福利厚生と利便性の向上のため、筑波大学がカスミに出店を要請したことから始まった。背景には、少子化に伴う大学間での学生の奪い合いがあり、SMがあることで、より便利で快適な学生の生活環境を作ることで、優秀な学生を確保しようという狙いがある。

 こうした取り組みが実現したのは国立大学の法人化により、大学運営の自由度が増し、さまざまな事業を手掛けることが可能になったことも影響している。

 確かに、学生や教職員にとっては便利だが、キャンパス内のSMは経営面から考えると難しい。筑波大学の学生・教職員は2万1987人おり、道路沿いにあるため一般の人も利用できる。大学周辺の500m圏には3206世帯が住んでいて、ある程度の需要は見込めるが、夏休みなど休暇期間もあり採算面では厳しい。

 それでもあえて出店した理由を、カスミの小濵裕正会長は「社会貢献も考えて総合的に判断し出店を決意した。留学生も含めた学生の食生活を支えて充実させ、地域の人たちにも利用してもらい、カスミの企業価値向上にもつなげていきたい」と説明する。

 SMは生活インフラとしての役割を持ち、なくてはならないもの。しかし、今後、人口減少や過疎化が進めばSM空白エリアが増えていく。そのとき、SMを補完する機能として、EC、出張販売、サテライトショップといったもので補完されるが、地域や行政と連携して店舗を存続させる選択肢もある。今回のキャンパス出店もそろばんを弾けば決して合わないが、社会貢献という視点から考えれば意義があるものだ。

 ただ、社会貢献だからと言っていたずらに赤字を垂れ流すわけにはいかない。「カスミ筑波大学店」では、知恵を絞ってさまざまな工夫をして、店舗を運営していこうという取り組みがみられる。  

 店長に「フードマーケットカスミ土浦駅前店」のオープンを成功させた箱田直美氏を起用し、1年前から女性店長を中心に、大学生の生活行動や実需を探りながら、通行量調査も行い、店舗の設計、MD(マーチャンダイジング)などのプランニングを進めた。

 そして、メインターゲットの大学生のニーズにピンポイントで対応し、需要を喚起する商品やサービスを展開し、取り込みを図ろうとしている。ここからはその具体的な取り組みを写真を交えて紹介していく。