「東京あられ」詰め合わせ、1080円(税込み)

「東京あられ」という商品がある。これはハラール、ベジタリアン、グルテンフリーに対応した商品で、最近、外国人観光客の多い小売店、飲食店で日本観光のお土産品として人気が高い。

 これを製造・販売しているのは王様製菓株式会社(本社/東京・台東区、代表取締役社長/木村秀雄)。同社は売上高約8億円、従業員総数約100人の規模で、上野と浅草の中間にある千束に本社と小売店の「王様堂本店」を構え、千葉・野田市に米菓一貫生産の工場を擁しており、小ロットの生産を得意としている。

 東京あられは、初めからハラール対応の米菓として2013年9月より製造・販売され、その後ベジタリアン、グルテンフリーを付与していったもので、この3項目がそろったのは2015年の秋のこと。

 東京の下町の中小企業がいかにしてフードダイバーシティ(食の多様性)に挑むようになり、インバウンドの人気商品をつくったか、同社代表取締役社長の木村秀雄氏に伺った。

航空会社向けに「ピーナツフリー」のおかきを製造

王様製菓株式会社代表取締役の木村秀雄氏

 王様製菓の創業者、木村誓氏は新潟県高田の出身、1924年(大正13年)1月に東京市浅草区で創業し、当初は仕入れ販売をしていたが、1936年に自社で工場をつくり米菓を製造・販売をするようになった。

 戦後1951年以降、百貨店の三越や都内の高級スーパーと取引をするようになったが、この当時の販路開拓が同社のフードダイバーシティに取り組む原点となっている。

 1965年、千葉・野田市に新工場を稼働させ生産体制を強化。同じ野田市に本拠を構えるキッコーマンとの縁が生まれ、そのルートで同社の商品を輸出するようになったが、これが海外の食に対する考え方や嗜好について触れる機会が多くなるきっかけとなった。

 1977年と1979年にはドイツで開催される食品展『アヌーガ』(ケルン)に出展、1978年にはフランスで行われる食品展『シアル』(パリ)に出展するなど、海外市場へのアピールも積極的に実施。こうしたことから同社の積極的な姿勢が知られるようになり、1984年、日本の航空会社から飛行機の中で提供するおつまみを納品するオファーを受けた。

 当時の航空業界では大きな課題を抱えていた。それは飛行機内で提供するおつまみが原因のアレルギー問題。飛行時にお客さまがアレルギーを発症すると手の施しようがない。

 当時の米菓の業界では「ピーナツ揚げ」が人気で、競合を含めた価格競争の真っただ中。この依頼をきっかけに、王様製菓はピーナツを扱うことから撤退、「ピーナツフリー」のおつまみをつくることになった。

オファーをきっかけに「ハラール対応」を研究する

東京・千束にある小売店の「王様堂本店」

 ピーナツフリーの米菓は航空会社のケータリング事業会社に納品していたが、シンガポールの会社の傘下となったその会社から「ハラール対応のおつまみができないか」と相談を受けたことも、もう1つの転機に。

 2011年3月にハラール対応の研究を開始したわけだが、当時の日本ではメーカーがハラールに取り組むための環境が整っておらず、新規に対策を行うには困難なことが多かった。

 それを表す象徴的なことにはこのようなものだった。『工場の半径5㎞以内に豚を飼育しているところがあってはならない』『みりん類が工場の中にあってはならない』『既存の生産ラインで米菓に触れる部分を全て新品にしなければならない』。

 同社の野田の工場の近隣に養豚業者が存在することは容易に想像でき、みりん類を工場から排除することは既存の味付けを変更することにつながり、既存の生産ラインを新品にすることは多額の投資が必要となる。

 こうしたことから「ハラール対策はしばらく様子を見よう」という判断を下したわけだが、王様製菓ではハラールに限らずユダヤ教のコーシャなどの宗教を由来とするもの、ベジタリアン、ヴィーガンといったライフスタイルや主義に基づくもの、さらに先のピーナツをはじめとしたアレルゲンへの対策が必要であることは感じ取っていた。

 そして、いずれは日本でもフードダイバーシティの時代がやってくるであろうとも確信していた。