第22回は、「QRコード決済の功罪」です。

 皆さんは最近、コンビニで買物をする際、どのような決済方法を利用していますか? 現金払いでしょうか。それともSuicaやEdyなどの電子マネーを用いた接触IC型決済でしょうか。はたまたスマートフォン(以下、スマホ)を用いたLine Payや楽天PayなどのQRコード決済でしょうか?

 これら以外にも従来から用いられている磁気カード型クレジットカード決済や、VISAの「Visa pay Wave」やMastercardの「Mastercard contactless」などの非接触IC型カード決済など、実にさまざまな決済手段が今日、存在しています。

決済とオムニチャネルは関係が深い

 なぜ、このような多様な決済手段が急速に普及し始めたのでしょうか。

 その理由の1つに、決済とオムニチャネルの関係があります。

 このことを理解するには、この連載 第1回(「オムニチャネル」って何だ?)で紹介したオムニチャネルの定義をしっかりと理解することが重要です。

 日本におけるオムニチャネル研究の第一人者・小樽商科大学 副学長の近藤公彦教授は、「オムニチャネルとは、全て(オムニ)のチャネルを統合し,消費者にシームレスな買物経験を提供する顧客戦略である」と定義しています。

 ここで大切なのが「シームレスな買物体験の提供」。決済は得てして利便性が強調されますが、実はそれだけでは不十分。消費者は何のために買物をするのかといったことまでを考えないと本質は理解できません。

 具体的に記すと、あなた自身もいつも急いで買物をしてばかりではありませんよね。時には買物という行為自体を楽しむ(快楽性を求める)こともあるのではないでしょうか。

 こう考えると、「ハレの日にはオフライン(リアル店舗)での買物の快楽性、ケの日にはオンライン(ネット)での利便性を意識した買物を」というストーリーが思い浮かぶはずです。

 こうした状況に合わせた対応が必要なのは決済サービスも同じ。世の中が「QRコード決済だ」と騒ぐとすぐに飛び付きたくなる小売業界の気持ちはよく分かりますが、ここは慎重に導入自体を判断すべきです。

決済は消費者の購買行動に合わせる

 今日、消費者はスマホを用いた「情報検索」や「SNSによる相互コミュニケーション」「ECサイトを通じた買物」を日常的に行っています。

 こうした現代の消費者にとって「今、自分が使っているのはオフライン(リアル店舗)かオンライン(ネット)か」という意識は希薄になっています。

 例えば、アパレル(服)のように、オフライン(リアル店舗)でまず試着し、良ければオンライン(ネット)で買物をする(ショールーミング)。家電製品のように、オンライン(ネット)であらかじめ商品特性や小売価格を調べ、オフライン(リアル店舗)に出向いて商品を試し、確認した上で買物する(ウェブルーミング)。

 このように今の消費者はスマホの普及に伴い、オンラインとオフラインをうまく併用しながら、シームレスな消費購買行動を既に実践しているわけです。

 こうした特性を持つオムニチャネルショッパーに対し、小売企業がどのような決済手段を提供すべきか。

 例えば、ショールーミングを行う消費者には、オンライン(ネット)での決済手段として安全性の高いクレジットカード決済がふさわしいのかもしれません。ウェブルーミングを行う消費者には、オフライン(リアル店舗)での接客後、速やかに決済を終えるために利便性の高いQRコード決済や非接触IC型決済がよいのかもしれません。

 このように、消費者の購買行動に見合った決済手段を提供することが、小売企業へのロイヤリティを高めることにつながるのです。