流通・小売企業に、テクノロジー×業務ノウハウを通じたソリューションを提供する(株)エスキュービズム。同社は2018年11月、日本の小売りの変革を目指し、会員制団体『リテールイノベーションコンソーシアム』を立ち上げた。

「テクノロジー」「(海外)小売情報」「実証実験」を3つの柱とし、小売革命を進めようとする同社の思いとコンソーシアム設立の経緯、活動内容などについて、代表取締役社長の薮崎敬祐氏に聞いた。

デジタル化が遅れている業界にはイノベーションが必要

 エスキュービズムは、2006年に薮崎氏が起業した企業で、ECサイトの構築からスタートし、その後、POSレジに参入するなど多彩な事業を展開してきた。創業10年余りで事業のうち、在庫を抱えないネット通販であるドロップシッピング、家電、ネットを使った中古車販売、ITベンダーの4つを、それぞれ年商20億円に育て上げている。

 中でもECサイト構築ソフトウェアのビジネスで、小売企業との取引が多かったわけだが、それがリテールイノベーションコンソーシアム設立のきっかけになっている。

 立ち上げの背景は、日本の小売業界に対する危機感だった。

 薮崎敬祐社長は語る。「ここ2年ほどでしょうか、デジタルトランスフォーメーションという言葉が出てきてから、Amazonの破壊力が増してきて、急激にデジタル化の波がきています。海外ではAmazon Goやアリババのフーマフレッシュが出てくるなどECがリアルに進出してきている。一方で、日本の小売企業はデジタル化が遅れており、いまだ従来通りのビジネスを続けている。そのことが今後の成長の足かせになる可能性があります。そんな日本の小売業界にイノベーションを起こし、日本の小売りを強くしたいというのがコンソーシアム設立の目的です」

 同社は、18年4月、会社をホールディングス体制にし、これまで培ってきたノウハウやテクノロジーを、リテールテック事業に集約した。そこから準備を進め、11月7日、リテールイノベーションコンソーシアムの立ち上げに至っている。

『ファーストペンギン』になりたがらない日本の小売業

 薮崎氏は、日本の小売企業の課題として2点を挙げる。

日本の小売企業の課題は「横並び」と「ツール信仰」だとエスキュービズム 薮崎敬祐社長は指摘する。

 1つは横並びだ。

「皆さん、同業他社だけを見ていて、新しい提案をしても、同業他社の動向や導入事例を知りたがる。他社の様子見で、自社がファーストペンギンになろうとはしないのです。それでいて、外的要因や外的脅威をあまり気にしていないので、イノベーションを起こさない。このままでは海外の先進的な企業が参入してくると戦えない」

 もう1つはツール信仰。

「日本はメーカーを中心に技術を重視する傾向が強く、プロダクトアウトの考え方になりがちです。買い手であるお客さまが欲しい物やサービスではなく、売り手側やメーカー側がやってみたいこと、作ってみたい物を提供してしまう。これはアマゾンが顧客ファーストといっているのとは真逆ですよね」

 日本の小売業も『顧客第一主義』を掲げているが、「日本の小売業がいう顧客第一は、価格を下げることになりがちです。それが正しい時代もあったとは思いますが、今も同じでいいのか。これからは『ユーザーエクスペリエンス=体験』という価値も考えるべきときです」

数社で手を組み、情報共有や共同開発を推進する

 こうした課題を解決し、イノベーションを起こそうと立ち上げたリテールイノベーションコンソーシアムは、小売企業、リテールテック企業が会員だ。

「とにかく世界に遅れないようにすることが第一」と強調する薮崎氏。そのためにリテールイノベーションコンソーシアムでは、テクノロジー、主として海外の小売情報、実証実験を3本の柱に、分科会などの学ぶ場の提供や、交流会などを進めていく。

「海外では、VR、AR、AIなどさまざまなテクノロジーが実用化しているのに、日本の小売業の多くは、どう取り入れていいか分からない。5年先、10年先など悠長なことを言っている余裕はありません。単独で一から取り組むのでは時間もコストもかかるので、連携できるところは、業種業態の垣根を越えて手を組み、一緒にやることで、一歩を踏み出せる」と薮崎氏。

 例えば、テクノロジーや情報に関してはキャッチアップが重要なので、それぞれがキャッチした情報や調べたことを皆で共有したり、専門家を呼んで勉強会を行う。それをもとに共同で開発し、実証実験を実施していく。「そのための知識と場を提供するのがリテールイノベーションコンソーシアムの狙いでもある」(薮崎氏)。

『リテールイノベーションコンソーシアム』のロゴマーク。RetailがテクノロジーによってRevampしていく、また、Real × Electronicsを組み合わせて新しい価値を提供していくことを表している。テクノロジー主導や利益先行とならず、常に相手(お客さま)への思いやりを中心に据えることを表すため、リボンの形状にしているという。

 既に11月7日には、『小売の固定概念をぶち壊せ』というテーマで、第1回のカンファレンスを実施、満席となる450人の参加を得た。

 次いで12月12日には、『決済の覇権~キャッシュレス社会にどう対応していくか?~』をテーマに分科会も開催。「カンファレンスは年1回ですが、分科会は毎月開催する予定です。興味あるテーマのときに、関係ある部署の人に参加していただきたい」と薮崎氏。次回は『外国人対応2.0』がテーマだ(開催は2019年の2月初旬を予定)。

「今は攻めることが最大の防御。失敗を恐れずチャレンジするファーストペンギンが出れば、後に続く企業は多いはず。私の経験からいうと、2年我慢すれば3年目に光が見えてくる」と言う薮崎氏。

 今後について、「リテールイノベーションコンソーシアムが、未来のリテールのあるべき姿を示す情報が集まり、相談すれば情報が得られて、業態を超えてコネクションが作れ、企業間のコーディネートもできる、そんな場にしたい」と語る。

詳しく知りたいという方は、『リテールイノベーションコンソーシアム』のHPをご覧ください。