マーケティングと聞くと、広告・宣伝を思い付く人が多いのではないでしょうか?

 しかし、実際にはこれらはマーケティングのほんの一部でしかないのはご存知の通りです。

 マーケティングは広告・宣伝の他、商品・サービスの企画・開発・設計、ブランディング、市場調査・分析、価格設定、販売促進、マーチャンダイジング、集客、顧客情報管理など非常に多岐に渡っています。

 つまり、マーケティングとは「市場・顧客のニーズを理解し、それに応えるよう商品・サービスを提供する仕組みづくり」のことなのです。

消費者の声がアマゾンを進化させた

 顧客ニーズは時とともに変化していきます。それに応じてサービス・商品も進化を続ける必要があります。今やリテール業界を塗り替えようかという勢いで成長を遂げているAmazon.comですが、最初は家のガレージから本を発送していた、新品の本専門のオンラインストアでした。今日、このことを意識しながら買物をしている消費者はいるでしょうか?

 恐らく、いないでしょう。

「本以外の商品も欲しい」「中古で構わないので絶版本が欲しい」という消費者自身の声が結果的にAmazon.comを常に進化させて来たのです。

 それによってAmazon.com自身のマーケティングポジショニングも変化を遂げました。

「本をどこでも届けます」→「ダウンロードすれば本を今すぐ読めます」→「本以外の商品もあります」→「幅広くさまざまな商品があります」と。

 この変化の裏側では、次のようなことが起こっていました。

 アメリカの国土は広いので、書籍を買うのにも車を運転して近くの街まで行かなければならないことがしばしばでした。そこで、注文一つで届けてもらえれば、さぞ便利だろうと考えたわけです。ところが、実際に始めてみると、多くのお客さまは都会から購入していることに気付くのです。実は地理的なニーズもさることながら、本をなかなか買いに行く時間がないことへの潜在ニーズがあったのです。

 さて、そのニーズが満たされればどうなるのでしょうか。人はひとたび本が届くようになったら、次は「もっと早く読みたい」と思うのです。その進化形がダウンロードです。著作権の問題も議論されましたが、最終的には一時も早く読みたいという読者の声を優先したのです。

正しいものを抽出できる力が必要に

 このようにポジショニングが進化する都度、市場に「そのサービスや製品が現時点で提供する価値」をきちんと伝えて行くことがとても大事になります。「サービス・製品が良い。あるいは良くなったらお客さまは買いに来てくれる」というのは錯覚であり、それらサービスや製品がこの世に存在することを能動的に伝えていかない限り、お客さまがそのことをタイムリーに知る由はないわけです。

 そこで、近年は広告やバナーなど直接的なコミュニケーションに留まらず、インフルエンサーによるブログやSNSなどの影響力を活用することが一般化しています。

 ですが、情報が豊富になった反面、消費者も情報への感度を高め、正しい眼を持つ必要に直面しています。

 アメリカ大統領選では偽情報によって選挙結果が違ったのではないかとまで言われていましたが、選挙もまさにマーケティング力が左右する時代になったと言えます。本質を理解し、多くの情報の中で正しいものを抽出できる力を養うことが重要になります。

 今、世の中は大きく変わろうとしています。昔はわくわくするSF映画でしたが、最近では法整備をせずにこのままで行くと、近未来に人はAI(人工知能)に服従させられるのではないかという話が現実味を帯びて来ました。

 次回以降では、これら先端技術がどのようなマーケティングを経て、人々の生活に関わり始めているかを考えてみたいと思います。