ショッピングセンター(SC)を巡る環境が大きく変わっている。国内のSC専業最大手デベロッパーであるイオンモールの吉田昭夫社長に業界の構造変化と戦略の方向性を聞いた。
(聞き手/『販売革新』編集長・西岡克)

 
イオンモール 吉田昭夫社長
 よしだ あきお:1960年5月26日生まれ。83年4月ジャスコ(現イオン)に入社。2005年9月東北開発部長、09年9月イオンリテール関東開発部長、11年2月イオンモール国際企画部統括部長、同3月イオングループ中国本社取締役。12年3月イオンモール中国本部長、14年4月同社営業本部長兼中国担当、同5月同社常務取締役。15年2月同社社長兼中国担当に就任。16年3月イオン執行役ディベロッパー事業担当。趣味はウオーキング。

 ――事業展開の基本戦略は。

 吉田:当社は国内外で事業展開しており、海外と国内では戦略が大きく異なります。

 特にASEAN(東南アジア諸国連合)地域は経済成長の途上で、圧倒的な成長力があります。あまり飛び地をせずにドミナント(地域集中)出店をしてエリアでのブランディングを向上。成長スピードが速いので、新興国ですが成功した日本のモデルを持ち込むのではなく、日本の先をいく最新モデルをあえて投入しています。

 今年5月に開いたカンボジア2号店のセン ソニック シティはいい例で、完全なエンターテインメントモールに仕上げました。また今後の車社会の到来を想定して、過剰なまでの駐車場を初めから具備しています。

 その戦略が功を奏し今上半期に海外は営業黒字化のステージに入りました。

 ――国内の戦略は。

 吉田:国内のマーケットは今後シュリンクしていきます。リアルの世界では淘汰(とうた)が始まり、生き残ったモールにマーケットが集約されてくるのでは。

 だから地域で一番支持されるモールのポジションをいかに取るかが国内の戦略です。そのためには施設規模や駐車場規模だけでなく、サービスなどテナント構成の魅力をトータルで持つことです。その結果、テナントも地域一番店に集中していきます。

昨年11月に増床した甲府昭和(山梨県)では地域の要望をくみ上げ、あえてアパレルを増やした。

 だから当社はある程度の施設規模があっても今盛んに増床と活性化を実施しています。地域のお客さまから頂いた「こういうものがあったらいいのに」という声を増床で補完しているのです。

 しかも増床の機会に中身を全部見直します。新店をそこにもう一度造り直すというイメージです。このように地域に望まれるものを付加して、地域一番店をつくっていくのです。

 一番のポイントは客数です。モールに訪れるお客さまの数が減らないこと。購入人口が減り、EC(電子商取引)に流れる環境下で当社の客数は既存店ベースでもキープしています。

新規開業SCが減少している理由

 ――国内SCの新規開業数が減っている。今年は東日本大震災の翌年以来6年ぶりの低水準になる見通しだ。

 吉田:これだけモールができると他のモールの商圏に入っていかないと新店を造れないからです。もう1つは11年の東日本大震災の復興工事以来、建設コストが高止まりしているから。

 当社が既存モールの増床をしているのは効率がいいからです。過去実績があるのでテナントが安心して出店できるし、地域一番店の戦略で当社が大きな施設を造ってしまえば後から参入しづらくなります。

 要は店数で考えるか供給GLA(総賃貸面積)で考えるか。エリアに5万㎡のモールを2つ造るのがいいのか、今5万㎡あるモールに5万㎡を足して10万㎡にするのか。どちらも同じエリアに同じGLAを供給するわけです。

 どちらが自社にとって競争優位性や収益性が高いかはマーケットの大きさによります。盆地で限られた商圏なら小さなモールを2つ造るより増床の方がいい。大きくて濃密なマーケットなら数で押さえた方がいいでしょう。

 ――最近はテナント構成が大きく変わっている。

 吉田:確かに飲食やアミューズメント、サービスの比率は従前よりかなり高まっています。飲食店の割合が20%弱のモールもあります。

 ただアパレルがしっかりしていないとモールの魅力は出せないと思います。アパレルには四季があって色の変化などによってモールの環境がふっと変わる。お客さまも次の商品を楽しみにしている。飲食などコト消費のコンテンツは強化すべきですが、アパレルもある程度強くないとお客さまにとって魅力がないモールになってしまいます。

 飲食は客数に対してある一定以上比率が高まると成り立たなくなります。客数に対して食べる量は決まっていて、むやみに飲食の店数を増やしてもいけない。だから業種ミックスはよく見てバランスをうまく取らないと。

 ――衣料品不振で、数年で大手アパレルが全国で何千店も大量退店した。

 吉田:今は客数が多いモールを選んで出店をしたいのだと思います。大型化も進んでいる。店舗のブランディングや品揃えのイメージを表現できるリアル店は必要で、それが恐らくオンライン販売にも生きると思うのです。

 ――飲食比率が高まるとSC運営の収益構造も変えなければならない。

 吉田:当社の営業収益はそんなにぶれていません。大切なのは客数です。客数が減り始めると負のサイクルに回り始めてしまう。まずはお客さまがきっちり来場されるSCにしていけばテナントの家賃支払い能力が上がり、収益性も解決される。だからモール鮮度を保って、お客さまにいつも何か提案して客数をキープしていくことです。

 ――地域で一番手のSCとその他のSCの優勝劣敗がはっきりしてきた。

 吉田:当社にも中途半端な規模のモールはあります。そこではいかにストロングセカンド(強い2番手)になれるかです。大型店のミニ版を造るのではなく大きなモールにはない「これだけは負けない」というコンテンツを持てれば、成立すると思います