曲美京東之家 北京北五環店。前面がガラス張りで「Living!」と掲げた赤文字が目立つ。

 中国で第2位のEC(電子商取引)モール「京東商城」(JD.com)を運営する京東(ジンドン)集団(北京市)は、今年2月に提携した家具・インテリア専門店の曲美家居集団(以下、曲美)と共同で「曲美京東之家」の旗艦店を北京市朝陽区のロードサイドにオープン、好調な業績を上げている。京東集団はオンライン(EC)とオフライン(実店舗)、物流機能の境をなくし融合する「無界小売」(ボーダーレスリテール)を提唱し、それを具現化する実店舗の開発・展開を無人コンビニや生鮮スーパーマーケット(SM)などで進めているが、提携先との店づくりでも実践しているわけだ。

※『販売革新』2018年12月号に関連記事「販革レポート」として「京東集団 デジタル店舗の開発・多店舗化を本格化」という記事を掲載しています。こちらはロボットが調理をする省力化レストランの1号店や無人コンビニ、生鮮SMについて報じています。併せてお読みください。

 この店は「曲美京東之家 北京北五環店」。2007年に開業した既存店を全面改装し、9月28日に再オープンした。総面積は1万2000㎡。京東集団と曲美の共同開発店舗は2店目で、1号店は北京市の地下鉄駅近くに6月に7000㎡の規模で開いている。

 北京北五環店は1号店とは異なり、車による来店を前提にロードサイドに立地する地上3階建てのフリースタンディング型店舗。家を購入したお客が家具やインテリアをはじめ、内装を検討したりパイプやドアノブなど建築材料を選べたり、家に関する全てのニーズに応えられる店にした。約150のブランドと約3万SKU(最小在庫管理単位)に及ぶ商品を展開。1階は比較的小ぶりの日用雑貨が中心で、2階には大物の家具を配置。3階では建材の販売やモデルルームを展開する。

京東の持つデータや技術を店舗運営に活用する

価格表示には電子値札を使用。オンライン販売の価格と連動し、価格変更の1分後には店頭の価格にも反映される。QRコードをスマートフォンで読み取れば、オンラインショップにつながり、ECに注文できる。

 店舗は曲美が運営。京東集団は「RAAS」(リテール・アズ・ア・サービス)と呼ぶ小売店を運営するためのサポートサービスを提供する。

 具体的には、京東集団がオンライン(JD.com)で得たビッグデータ(祖冲之データプラットフォーム)を用いて商圏内のお客の消費行動パターンを分析し、曲美に提供する。曲美が店頭で得た販売データと組み合わせることで商品の陳列場所や品揃えを最適化し、お客のニーズにきめ細かく対応できるという。

 また京東集団のサプライチェーン(商品調達網)を活用することで旧店のような家具だけではなく、幅広い品揃えを実現。さらに顔認識技術などを用いてお客の年齢を推定するといった京東集団が持つ最先端の技術を提供し、どんな客層が何を購入しているのかといった販売データを分析し、品揃えに役立てている。

「身臨其鏡」(しんりんしきょう)と呼ぶバーチャル試着を実現するデジタルサイネージ。イタリアのピサの斜塔にいるかのように背景が切り替わる。SNS(交流サイト)に写真や映像を上げることもできる。

 その他、製品の産地や材質、消費者の評価といった商品情報を鏡に表示したり、お客が着用する洋服のシチュエーションに合わせて背景を切り替えるバーチャル(仮想)試着の映像をデジタルサイネージに映し出したりするなど、20種類以上のデジタル技術を取り入れ、楽しい買物環境をつくり出し、お客の滞在時間を延ばすといった店舗運営の効率化も促しているという。

 店舗は販売の場だけではなく、ショールーミングに活用。店頭で商品の実物を見て、オンラインで注文できる他、在庫がなくてもオンラインショップに注文することで機会損失を最小化し、同社が目指す「ボーダーレスリテール」を具現化している。

 改装開店直後の10月1日~7日では来客数は旧店比で3倍に増え、売上げは倍増、客単価は6割高まったという。