ちょうど主人が入院した同じ時期に、オリジン東秀の故・安澤英雄会長も胃がんで胃を取られていて、よく食についての話をしていました。

「丹羽さん、食べ物がこんなに大事だと初めて思ったよ」と。一緒に何度もマーケットリサーチをする中で、安澤会長は「食で世の中が健康になるための会社をつくりたい」とおっしゃっていました。

 そんな言葉にも強く影響され、主人が亡くなって1年後の1999年にデザイナーフーズを立ち上げたのです。

「野菜自体の品質の中身で価格を決めたい」

 オリジンさんとは、同社が4店舗のときから350店舗くらいまで、品質管理を見させていただくとともに、「添加物を入れないでお惣菜を提供する方法」を一緒に考え、商品開発と店舗の衛生管理も担当させていただきました。そうしますと、その間に勉強をしなければいけない課題がたくさん出てきたんです。

 オリジンさんに、デリカフーズから「カボチャ煮付け用」のカボチャの角切りを1日に2t、ホウレンソウは1.5tを毎日納品していたのですが、その量の納品は1カ所の産地からでは難しく、さりとて、産地を数カ所にすると、品質は全く違ってきますから、調理後の歩留まりに違いが出てしまって原価率が変わってしまう。

 さらには、普通、ホウレンソウを100gゆでれば100gになりますが、産地によっては、1.5㎏ゆでて1.5㎏にはならず、1.3㎏になってしまうところもある。この十数%が利益を圧迫します。カボチャもほっこり煮ることのできるものとそうでないものとがあり、これも原価率が変わる原因になる。そこで、入荷したカボチャと切った後のカボチャの糖度を測り、1年間の糖度の差を見ていくと8%もありました。ですから、最初は、おいしくない時季のカボチャには濃いめのたれ、味のいいカボチャには薄いたれと、「年間2種類で炊いてください」と対策を取ったのですが、それでは歩留まりの問題を解決できない。

 要は、「野菜の中身」を知らないとこうした問題を解決できないのです。

 しかも、産地によって良い所と悪い所があるから糖度を測っていたのですが、あるとき糖度を測る担当の女性に「違いが出るのは産地ではなく生産者ではないか?」と言われ、生産者別に見ていく必要もあるなと気付きました。

 要は、野菜を何で評価するのか、ということなんです。野菜は、需要と供給のバランスで、例えば台風などで供給ができなくなると値段が高くなります。逆に量が多ければ、物が良くても畑の中で捨てられてしまう。

 ということは、「野菜の中身」で価格が決まっていないのです。

「7色の野菜を買ってください」「色を取りましょう」

図表 色で分ける野菜のチカラ/左から「紫」のアントシアニン、「赤」のリコペンカプチサン、「オレンジ」のプロビタミンAゼアキサンチン、「黄」のルテインフラボノイド、「緑」のクロロフィル、「白」のイソチオシアネート硫化アリル、「黒」のクロロゲン酸カテキン、という並びになる。野菜の色にはフィトケミカル(植物の化学成分) が含まれ、そのほとんどが抗酸化成分で毎日この7色を意識して摂取することを丹羽さんはじめ、デザイナーフーズではお勧めしている。(デザイナーフーズHPより)

 それで、「野菜自体の品質の中身で価格を決めたい」という切り口で、品質を判断する方法を考えました。

 そして、十数年かかって、今はトマトだけですが糖度、酸度、抗酸化力、リコペンを非破壊で測定できる機械のソフトを作り上げました。

 その結果、それまでなら、例えば3個袋入りのトマトでも中のトマトの味が同じようにそろっていませんでしたが、これを使えば3個とも味に外れのないトマトを売ることができるのです。

 そもそも、「食べ物の評価」とは、「それを食べて、人が老化しないということだ」と私たちは考えています。老化とは細胞と血液、血管の老化だから、それらの老化を防げば病気は少なくなるのです。老化を防ぐことが病気を防ぐことになる。それで、私たちは野菜の抗酸化力の研究に入ったのです。

 酸化を防ぐ抗酸化――。この研究でもう15年近く野菜の抗酸化力を測り続けています。

 また、私たちは、野菜の“色”を食べていただきたいと思っています。野菜や果物の色の中には「フィトケミカル」という植物の化学成分があり、紫色ならアントシアニン、空気に触れると黒色になるバナナの抗酸化物質はクロロゲン酸、双方、人間の体の中の活性酸素を消してくれることが知られており、疲労を抑制しますし、コーヒーにもクロロゲン酸が多いため、飲むと疲れが取れる感じがするのです。

 他によく知られているのが赤い成分のリコペンで、こちらも抗酸化力があると知られています。

 われわれは、せっかく、こうした体の中の活性酸素を消去してくれる成分があるのですから、スーパーマーケットでも「7色の野菜を買ってください」と色別に野菜を並べて販売してもらったりして、「色を取りましょう」と消費者に勧めているわけです。

 今回の商業界ゼミナールでは、2日目の夜に、私のアドバイスで選定した食材を使用した夕食を召し上がっていただきますが、ここでも色を使ったメニューを作ってほしいと考えています。開催は2月ですから、ちょうど、免疫力のある冬の野菜を豊富に使えます。

「おいしいものをいかに探して食べるか」から20年

 今回の第87回商業界ゼミナールもそうですが、私が講演活動を受けさせていただくのは、ここまでお話ししたようなことを参加者の皆さんに知っていただき、役立てていただくとともに、一緒に考え、世の中のちょっと見直した方がいい部分を一緒に直していけたらと思っているからです。

 デザイナーフーズをつくったころは、例えば日本フードサービス協会などで「医と食」というタイトルで話をしても、正直、そんなに理解してもらえませんでした。

「おいしいものをいかに探して食べるか」というグルメの時代でしたから、食が病気を防ぐことにつながると、なんとなく分かってはいても食と健康が話題になっていない時代です。

 それが今やっと言われるようになってきました。外食の方は私たちが早くから話をしてきたので比較的早く「健康」に目を向け取り組んでくれていましたが、量販店はまだここ数年です。これがもっと変わっていけば、そのお店のある地域に住んでいる人たちの食はずいぶんと変わっていくと思います。

 企業経営ですから、皆さんは売上げを上げて利益を上げることを追求されていると思います。もちろん、それは重要ですが、その上げた利益をどうするのか? 何に使っていくのか? 自社投資は当然ですが、人に貢献できることにつながる投資にもこれからは目を向けるべきではないでしょうか。

 商業界ゼミナールに勉強に来られる皆さんは、ご自分の会社の繁栄が目的なのは当然ですが、その次に何をするか? まずは、「自社の事業自体が社会に貢献できる商業活動をしているか」ということをいま一度考えていただきたいと思っています。

※本記事は『商業界』2018年12月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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