Elevation社長の山崎聡氏

 11月13日に第13回居酒屋甲子園全国大会が開催された。これまで最多の1766店舗がエントリーした今大会で日本一となったのは、「べジテジや Soi新潟万代店」(新潟市/以下、ベジテジやSoi)であった。同店は株式会社Elevation(本社/新潟市、代表/山崎聡、以下エレベーション)が経営する店で、同社としては第9回に創業の店である「Soi」が出場し準優勝を果たしている。 

「居酒屋甲子園」とは「居酒屋から日本を元気にしたい」という思いを持つ全国の同志によって開催されている。「日本一を決める」という大会が象徴的であるが、外食業界に働く人がより誇り高い意識を抱き、学びを共有できる場となっている。理念は「共に学び、共に成長し、共に勝つ」である。

 全国大会までの流れはこうだ。全国からエントリーした店舗が、地区レベルで覆面調査を2回受けて、その点数の上位店舗によって地区大会が開催、ここで勝ち残った12店舗がプレゼンテーションを行い、全国大会の5店舗が決定される。全国大会のプレゼンテーションは各チーム20分、来場者5000人のコインの投票で優勝が決定される。

 ベジテジやSoiのプレゼンテーションはファイナリスト5チームのトップバッターで、会場を圧倒した。

 社長の山崎聡氏とはどのような人物か、どのようにしてこのような組織をつくり上げるようになったのかを紹介しよう。

人生の師匠と出会い「普通」から脱却する

 山崎氏は1977年1月生まれ。地元・新潟市で育った。兄が市内の鉄板料理の店に就職したことから飲食業に親しみを覚え、高校生のときに居酒屋でアルバイトを経験した。高校卒業後、大阪の調理師専門学校に進み、1年後、新潟に戻り、洋食店に就職した。しかしながら、同店での勤務は2年間で挫折し、その後、カメラマンのアシスタントなどを経験したが、再び飲食業に戻った。

「いろいろと経験してきた中で、自分の仕事は人と接すること、ということが見えてきて、飲食業に落ち着きました」

 お酒の世界を覚えるためにバーに入り、バーテンダーとなった。そこで山崎氏にとって運命の師匠と出会った。21歳の時である。

 40代半ばで会社経営者のその人は、山崎氏が勤務する店の常連客であった。山崎氏はその人から人生哲学を教えられた。例えば、「目を養え」「強すぎるな、弱すぎるな」「若いうちは年寄りの話を聞け。年を取ったら若者の悩みを聞け」……格言じみた言葉の後にそれを考えさせる問い掛けがあり、山崎氏はその意味を理解していった。

「それまで、私はいつも『普通』という言葉を口に出していました。一番になるという野望もなかった。しかし、師匠と出会うことで私は『夢』を描くことができるようになりました」

 山崎氏はこのように、自分の中に挑戦する姿勢が形づくられていることを感じ取るようになった。

 

 師匠に教えてもらった言葉で、今日最も大切にしているものはこれである。

「ものを頼まれたらおつり付きで返せ」

 つまり、相手に得をした思いを抱かせる、ということだ。

「師匠は私に、『仕事の代償は何だと思う?』と問い掛けました。私は『お金ですよね』と答えると師匠は『違うよ、仕事の代償は仕事だよ』と言いました。頼まれたことを期待通りに返していたら、その人から仕事の依頼は二度と来ない、ということです」

 この教えは、現在のスタッフ教育にも生かされている。同社の顧客満足の基本はここにある。