「最低でも1年に5%の生産性上昇が、これからの小売業の生存条件」だと吉田繁治先生は指摘します。では、それをどう実現させていくのか? 今回からは商品作業の生産性向上について解説を行っていきます。

 編集部:前回は店舗の人的な生産性の上昇を図るための各年度の人員配置計画の作り方を示していただきました。

 売上目標ではなく、売上げの傾向をもとに、店舗の労働時間当たりの人時の売上生産性(売上高÷労働時間)で、1年に最低でも5%は上昇させるように、人員配置を計画するということでした。

 肝心なところは「売上傾向」を使うことでしたね。

 吉田:その通りです。小売業も経営計画として、店舗のP/L(損益)目標を作っています。問題は、このときの次年度売上げが、今年より売上げを増やすものであることです。もちろん、店舗の目標としては、前年を上回る売上げでいい。前年より低い目標では、引き上げ効果がないからです。

 ところが、前年度売上げより、例えば5%多い売上げを目標数値として、人員の配置計画を作ると、今年と同じ人員数(正確には合計労働時間)でも、人時での売上生産性は5%上がることになります。

 しかし、1年過ぎた結果の売上げは、前年比でマイナス3%だった。そうなると、人時売上生産性は3%下がってしまいます。

 既存店の売上げが総じて増えていた1980年代までは、人員数が同じでも既存店売上げの上昇分だけ、人時売上生産性は上がっていました。

 ところが、特に2008年以降は、多くの業態で、商圏人口が増えていない地域では「既存店売上げの前年割れ」が続いていることが多いこのため人員配置数を同じにすると、人時の売上生産性は下がって、売上対比の人件費比率が毎年、上がってしまうのです。

11年で11%の生産性低下は倒産・閉店に向かう企業の水準

 編集部:確かに、小売業界では出店分の売上げは増えても、既存店の前年比はマイナスが多いですね。

 吉田:日本チェーンストア協会加盟の9885店(12.9兆円:2017年)のデータから計算すると、2006年の1人当たりの売上げは3095万円でしたが、2017年は2775万円と、11%も減って89%になっています8時間労働(年間2000時間)の正社員を1人として、パートは2人を1人として計算したものです(データは日本チェーンストア協会)。

 11年で11%、売上げの人時生産性が下がることは、世界の小売業では倒産や閉店に向かってきた企業以外ではあり得ないことです。

 しかし、商品需要の元になる世帯所得が増えず、2010年からは人口が減り始めた日本では、平均的な店舗で既存店の前年割れが起こっています平均的な既存店の売上げの減少は、今後も続くと見なければならない。

 根底の原因は人口減があり、1人当たり所得もほとんど増えないからです。地域の総需要、つまり店舗売上げが増えない中で、新規の出店による地域の売場面積の増加は、1年に2%はあります(全国平均)。

 その中で、小売業は人的な生産性で、少なくとも1年に5%以上上げねばならない。経営を続けることができる最低条件は年3%の人的生産性の上昇です。

 パートを含む1人当たりの平均賃金は、2018年の『働き方改革関連法案』の成立・施行もあり、最も低い水準でも年3%は上げていかねばならないからです。