BIプラットフォームを導入したマルイ。

 岡山県、鳥取県にスーパーマーケット(SM)24店舗を展開する(株)マルイ(本部:岡山県津山市、松田欣也社長)がデータのユニークな利活用で業務改善に効果を上げつつある。

 2017年より進めた商品、販売などに関する各種データの一元化、分析、可視化により、問題点の共有を可能にするプラットフォームの導入である。このことで、マルイは店舗の営業活動の課題をリアルタイムに把握でき、経営層から現場までが課題解決の意思決定を容易にできる環境ができた。

PCにおける単品販売数がグラフ化されている。

 SMは先の販売データに加え、2、3日に1度、実店舗で顧客と接点が持てることから、購入内容・点数、また顧客カードがあれば、来店頻度、年齢層、居住地域などの顧客データも集まる。ただし、これらの豊富なデータを組合せ、分析できる担当部署、担当者のマンパワーやスキルが十分でないケースが多い。本来、店舗では接客をはじめ顧客との接点を生かした売場づくりやサービス提供が最優先されるべきもので、データ加工、分析に時間も割くものではないはず。また、SMは天候などの影響も受けやすく店舗運営の現場は常に迅速な意思決定が求められる。

 マルイも例外ではなく、データを店舗の営業力向上につなげるための仕組みづくりが急がれていた。

 例えば、店舗の状況を確認する際、売上げと営業利益の推移を数字で羅列するよりも、棒グラフ、折れ線グラフなどで示すことで上がり基調なのか、減少中なのかが一目で認識できる。また地域ごとの店舗の営業状況もエクセルなどの一覧表にするよりマップ上で売上げおよび客数増減を色分けで示せれば、新任の担当者であっても店舗の問題点(客数減、点数減なのかなど)を認識しやすい。しかも本部と店、また物流センターなどとの間でも同じ切り口・軸の経営指標を持つことで問題点の共有と対策立案と実行が一体的にできる。

 ITの世界では、これらのデータの利活用のプロセスを含みソフトウェア、システムなどを総称してBI(ビジネスインテリジェンス)プラットフォームと呼んでおり、製造業、販社の世界では経営判断を迅速に行うためのデジタル化の根幹として、またPDCAを効率的に進めるツールなどの用途として活用が進んでいる。

 マルイの取り組みは、BIプラットフォーマーであるDomoと共同で進められた。このような取り組みはSMではもちろん小売業の世界でもまだ希少なケースである。というのも、一般的に商品部は単品の値入率、営業(店舗運営)部は販管費、店舗の営業利益、といったように部門ごとに重視する指標が異なる中、データを共用する組織、風土はなく、またこうした数値を共有、議論する場も月度の会議に限られており、商販が一体となる場にもなっていない事例が多いからだ。

 現在、マルイでは「電子マネーの活用状況」「客数増減エリアの可視化」「プロセスセンター(PC)のアイテム別・製造数予測」として活用されている。これらは全て既存のデータを活用したものばかり。

業務改善を通じて、顧客向け活動にマンパワーを投入

ドミナント内の客数増減が一覧できる。

 マルイはSMとして中堅規模であるが、拠点である岡山、鳥取での顧客支持を固めるべく、「食を通じた地域との絆づくり」を経営方針の核に据えている。食育基本法施行の翌年(2006年)から営業本部内に推進室を設置、店頭イベント、メニュー提案など地域での認知を高める顧客とのコミュニケーションを進めてきた。最近ではNPOを設立、顧客と生産者をつなげる産地体験活動など行っている。一方で内部では整理、整頓、清掃など5Sに始まる生産性向上活動も進めるなど従来業務に充てられていたマンパワーを顧客に振り向ける環境づくりを進めている。マルイもBIプラットフォーム導入によりデータの集約、分析、共用などに要する時間を省くことでより具体的な対策(既存店に対する営業活性化、顧客カードの利用率改善)を迅速に展開できる態勢になったといえる。

 現状の数値面での改善はPC活用店舗における売上げ120%(前年同期比)となっている。PCでは各店のリアルタイムの販売数だけでなく、売場映像も担当者全てに可視化されており、実際の売れ行き状況を目にしながら、店舗からの発注を待つことなく製造数の決定をすることで機会ロスの削減が図られたと思われる。

「客数減少エリアの可視化」についても、実際、10月にはマックスバリュ西日本がディスカウント業態「ザ・ビッグ」として津山に1号店を開設させており、その際も影響度合い、内容も全社内で共有化され、迅速な競合店対策の立案につながっている。

 データの可視化は、部門別売上げ・販売点数の売場レイアウト上への投影などにも予定されており、実現すれば売場担当者にとっても商品配置の変更、商品部にとっては棚割改善の材料にもつながるだろう。

データの深掘りで多様化する購買行動をキャッチアップする

 アマゾンに代表されるネット通販の世界では、顧客の利用が全てデータ化され、購買頻度、購買点数を高めるレコメンド機能の発展、さらにAIスピーカーの登場により購買行動自体も変容する環境にあり、実際に来店、購買する顧客データが集まるリアル店舗の強みに近付きつつある。消費者の購買プロセスを解説する法則の一つにAIDMA(Attention=注意、Interest=興味、Desire=欲求、Memory=記憶、Action=行動)が長らく使われており、マーケティング、広告手法に活用されてきた。現在では、オムニチャネルという言葉があるように、ネット、リアル店舗の使い分けなど消費者の購買プロセスも多様化しており、従来の法則では把握が困難になっている。

 こうした中、マルイの取り組みはSMが持つ「データ」という経営資源にはまだまだ深堀りができ、さらなる活用可能性があることを示す。