イラスト/永谷せん

ヒトの心は不思議がいっぱい。それを探るのが心理学。心理学は実践の科学です。実際に使えば理解も早いし応用も利くようになります。ご紹介する心理テクニックは現場で役立つことばかり。ぜひ使って販売力をUPさせましょう。

 最近、街で公衆電話を見掛けなくなったという話をよく耳にします。実際、この10年で設置台数は6割も減ってしまったのだそうです。

 原因は、もちろん携帯電話の普及。でも、街で全然、見掛けなくなったかというと、そんなことはありません。必要なところにはちゃんと今でも設置されています。

 なのに見掛けないと感じるのは、実は人の心理が影響しているようなのです。

 人間の目はカメラと違って、ただ景色を写し取ることはしません。そこに意思が介在するのです。ないものと信じていたり、それが必要でないと思った場合は、たとえそれが目の前にあっても視界から排除してしまうことがあるのです。

 筆者も時々経験してしまうことですが、鍵や眼鏡がこつぜんと消えてしまい、探すのに四苦八苦してしまうことがあります。

 大抵は普段置かないところに置いてしまったのが原因。まさかそんな所に置いたとは思わないので、見ていても目に入らないのです。人間の目にはそんな厄介な一面があるのですね。

 でも、その半面、人間の目には素晴らしい機能も備わっています。例えば、「今日は赤を意識しよう」と考えて街に出ると、普段はあまり意識することのなかった看板や郵便ポスト、街行く人の服などなど街中に存在するありとあらゆる赤いものが目に飛び込んでくるようになります。

 これはある1つのことを意識することによって、それに関する情報が無意識のうちに自分のアンテナに引っかかってくるようになる現象で、『カラーバス効果』と呼ばれています。

 英語で書くとCOLOR BATH。BATHは「浴びる」、つまり「色を浴びる」という意味。この効果が働くのは色だけではありません。例えば「防犯カメラ」を意識しながら街を歩くと、不思議なほど防犯カメラが目に入ってきます。都会ではこんなにあちこちから監視されてるのかとビックリするほどです。

 人間の目は、対象を意識するだけで、その対象だけにフォーカスが当たるようにすることができるのです。

 このような目の特性は、あなたも実感しているはず。

 例えば、街を歩いていて、ご自分のお店で売っている物を身に着けている人を見掛けてハッとするのは、この効果が働いているからです。もちろんそれは、あなたが日頃からお店の商品に強い関心を持っている証拠でもあります。

 ならば一歩進めて、この効果をより活用してみてはいかがでしょう。

 例えば、冬は暖かさを感じる黄色やオレンジ色といった暖色が好まれると思われます。そこで街行く人がどれくらい暖色系の色をファッションに取り入れているか、色を意識しながら通勤してみるのです。

 すると、ファッションだけでなく、さまざまな場所で暖色系の色が使われていることに気づくことでしょう。変わり映えのしない街が色に注目するだけでいつもと違って見えてくるはずです。『カラーバス効果』によって発想の転換ができるのです。

 同様に、店内も見回してみましょう。きっとそれをきっかけに配色やレイアウトで「こうしたらいいんじゃないか」というアイデアが次々に浮かんでくると思いますよ。