導入しても事業者にはデメリットしかない

 政府は、消費税増税に伴う消費不況対策の1つとして、キャッシュレスレジによる2%還元システムの導入を検討しています。まだ詳細が明らかになっていませんが、おおむね次の通りです。

 中小小売店と中小飲食店(小売店だけの可能性もある)で、キャッシュレスで支払った消費者のみ2%がポイントとして還元されます。キャッシュレス対応レジシステムを導入していない事業者は対象外、現金で支払った消費者も対象外です。

 対象商品は、消費税率10%のもの(飲食料品以外と外食)だけでなく、8%商品(飲食料品と持ち帰り等)も含まれる予定です。還元される期間は1年間程度と限定されます。

 還元するとは、購入あるいは飲食した後の会計時に2%のポイントが付くので、そのポイントを後に利用できるということ。10%の消費税が実質8%、8%の消費税が実質6%で購入、または飲食することができるということです。

 ただし、このシステムは「事業者にとってメリットはほとんどなく、デメリットがかなり大きい」ものです。

 まず、還元されるのはあくまで消費者であって、事業者には何の還元もないということです。つまり、還元システムを導入しても「事業者には直接的な売上げも利益も一切発生しない」ということです。逆に、キャッシュレスレジを導入することで、費用負担がかなり大きくなります。

 キャッシュレスレジの本体は、数万円から数十万円のものまでさまざまなので、簡易型であれば初期投資自体の負担は軽くて済むでしょう。もちろん、国からの補助も出る予定です。

 問題は、カード会社に支払う手数料です。通常、中小企業の小売店の場合、売上額の5%~10%程度支払いますが、国は、この手数料を3%程度に抑えるようにカード会社と調整しているようです。しかし、たとえ3%となっても、中小小売店にとって「売上額の3%の利益が失われる」のは、かなり痛手です。

中小企業は2%還元で本当にお客が増える?

 では、事業者のメリットは何かというと、大手事業者ではできない2%還元ができることと、キャッシュレス対応を望んでいた顧客が増えるかもしれないということだけです。

 しかし、本当に顧客が増え、システム導入前より利益が上がるかというと、そうはならないでしょう。

 その理由の1つは、経費が増えるのはキャッシュレスレジシステムだけではないということです。食品以外が2%増税されるので、電気・ガス・水道などの光熱費、旅費交通費、通信費、消耗品費などの経費は確実に増えます。増税前と同じ値段で販売個数が同じであれば利益は減ります。

 一方、仕入れ商品の価格も、増税分のコストを商品価格に上乗せしなければならないので確実に上がります。飲食料品以外はもちろんのこと、仕入れ食材も価格は上がります。食品の仕入れ業者も、増税分の費用を捻出するには商品価格を値上げしなければなりません。

 飲食料品だけでなく、仕入れ商品も2%値上げがされれば、小売店も販売商品を値上げしなければ利益が大幅に減ります。さらに売上げの数%が手数料としてカード会社に支払うことになるので、その分も価格に転嫁しなければなりません。

 一方、大手小売店より2%安く販売できるから顧客が流れてくるかというと、ほとんど期待はできません。大手小売店に行っている人が、品揃えが少なく、フードコートもない店に来る可能性は低いでしょう。大手小売店は、増税されたからといって、そんなに簡単に商品価格を上げることはしません。

 メーカー品の価格が上がっても、頻繁にセールを行って安売りを続けるでしょう。中小小売店が大手より2%安く販売できるといっても、実際の販売価格が大手より高ければ、消費者は中小小売店で買物をすることはないでしょう。しかも2%還元は、1年間程度の期間限定です。

 ポイント還元期間が過ぎても、クレジットカードの利用者が来店すれば、カード会社に手数料を支払わなければならなりません。その分を価格に上乗せすれば顧客は減るでしょう。