システム投資には「リープフロッグの罠」が付きまとう

 技術革新が日進月歩で進むデジタル業界ではリアル世界での検証を欠いたまま投資が決定されることも少なくないが、常識を打ち破る革命的成功の一方で、その何十倍、何百倍もの失敗が繰り返されている。0か1で割り切られるデジタル世界と0と1の間に無限が存在するリアル世界は必ずしも同調しない。デジタル世界の技術やロジックはアナログ世界で通用するか、さまざまなケースを想定した実証実験で負荷を与えて運用してみることが不可欠で、そこから実用性の高い技術が育っていく。

 ゾゾスーツに限らずニューテクには実証実験の積み重ねが不可欠で、時間を惜しんで実証を蔑ろにすれば実用化できない設備投資に足を取られて「リープフロッグの罠」にはまり、競争から脱落することになる。世界中ではやりの無人店舗(無人決済店舗に過ぎないが)の多くは開発途上のシステムを装備しており、ほとんどは過渡期の高くついたギミックに終わるだろう。システム投資では、技術革新の先を見据えて「リープフロッグの罠」を賢明に回避する者が低コストで収穫を丸取りするのが現実だ。

アナログ世界のリアリティを失えば空間識失調に陥る

 IT仕掛けの自動化倉庫にしても四半世紀も前の技術(当時は「メカトロ」と呼ばれた)であり、デジタル制御の精度とコストが人手不足と人件費高騰の時流に乗って実用の域に達し、急速に広がり始めたものだ。同様に四半世紀以上も前の集中処理時代の情報技術であるPOSにしても、多大な弊害を回避して使いこなせている流通業などおそらく皆無だろう。それも管理会計軸のERPに統合すれば重装備な投資になって償却と更新に手間取り、「リープフロッグの罠」にどっぷり漬かってしまう。

 私はかつて前澤氏に『ゾゾスーツよりTBPP(お試し受け取り所)が突破口となる』と提じたが、アパレルのC&Cにおける要はリアルのフィッティングであり、TBPPの姿は「NORDSTROM LOCAL」を思い浮かべてもらえば分かると思う。流通業のデジタル技術はリアル世界の運用に定着して初めて成果につながる。デジタル技術が空間識失調に陥って「リープフロッグの罠」にはまらぬよう、アナログ世界の地に足がついたリアリティを忘れてはなるまい。

「NORDSTROM LOCAL」(ノードストロム プレスルームより)
「NORDSTROM LOCAL」(ノードストロム プレスルームより)
「NORDSTROM LOCAL」(ノードストロム プレスルームより)