8月25日に発刊した『こうして店は潰れた 地域土着スーパー「やまと」の教訓』は大きな反響を呼び、発売2カ月で4刷。著者・小林久さんのこれまでの活動を評価する声もあれば、辛辣な批判もある。10月21日に地元の山梨県韮崎市で開催された出版記念座談会を取材し、出版後のことについて本人に話を聞いた。

「経営本になっていない」という批判

 「経営本になっていないというのは、ある意味でその通りです。ただ、経営本にすると読者は限定されるでしょ?もっと幅広い、たくさんの方に読んでいただきたいと思って書きました」(小林さん)

 ネット書店や商業界ホームページに寄せられた読者レビューを読むと、その大半は肯定的な評価である。小林さんを絶賛し、再起を促す声もある。その一方で、少数ながら次のような辛辣な批判もある。

「会社が倒産した本当の理由について触れられていない」

「どこが失敗だったのか、経営本になっていない」

「すべて他人事で、自己満足に終始している」

 こうした批判についてどう思うか、小林さんにぶつけてみたところ、冒頭の答えが返ってきた。本人は明るくあっけらかんとして、どんな批判もどこ吹く風。地獄の苦しみを舐めてきた小林さんにとって、もはや恐いものなどないのかもしれない。本を書いた以上は「たくさんの方に読んでもらいたい」というのも正直な気持ちだろう。しかも、本書の印税は全て債権者への返済に充てられるのだ。

 ちなみに「会社が倒産した理由が書かれていない」という批判がある一方で、本書の中で語られるエピソードから「メインバンクを都市銀行に変えたこと」「管理部門に強力な人材がいなかったこと」が倒産の要因ではないかと指摘している書評もあった。読者の解釈に任せるほかないが、倒産した経営者のリアルな証言であることは間違いなく、これからの地域商業、地方経済を考えるうえで貴重な「教材」になる一冊だと思う。

クリスマスケーキの予約金を返したい

 本書を読んだ誰もが気になっているだろう著者の今後について、どうするつもりなのか聞いた。

「元従業員の再就職が全て決まって、まずはホッとしています。私自身は、まだこれからどうしたいというのはありません。一つあるのは、お客さまからお預かりしてそのままになってしまったクリスマスケーキの予約金を返したいと思っています。破産管財人にも確認が取れたので、今年中に返金できる予定です」(小林さん)

 倒産したのが2017年12月の半ばだったため、既に何人かのお客からクリスマスケーキの予約金を預かっていたが、そのままになってしまっていた。本書の中でも、債権者集会で「クリスマスケーキを予約してお金を払ったが、騙すつもりだったのか」という質問があったと紹介されている。この予約金だけは、小林さんとしては他に優先してでも返したかった。それがやっと叶うそうだ。