「チェーンは作業の標準化、単純化、専門化だという掛け声はありましたが、それは、『店舗づくりのことだ』と誤解されてしまった」と、吉田繁治先生は振り返ります。ここから生じた『店舗に共通な商品を並べることがチェーンストアづくり』と理解してしまった日本の小売業界。それが現在の低い生産性につながっていると、先生は指摘します。

 編集部:しばらく時間が空きましたが、わが国小売業で絶対に必要になる生産性を高める対策について、お話を伺いたいと思っています。

 前回は、チェーンストアの「作業標準化」は、作業、つまり仕事の手順と方法の平均化ではなく、生産性を高める方法に変えることだということでした。

 フレデリック・テイラーが、これを「科学的管理法」として、実行したことも伺っています。

 今回、お聞きしたいのはなぜ、日本の小売業では、これが行われなかったのかということです。何事も原因を確定しないと、適切な対策は打てないと思いますから……。

 吉田:実は簡単なことです。小売業ではテイラーの方法を推進する人が皆無だったからです。

 チェーンは作業の標準化、単純化、専門化だという掛け声はありましたが、それは、「店舗づくりのことだ」と誤解されてしまったのです。

 店舗づくりの中身は商品構成です。商品構成の標準化、つまり店舗に共通な商品を並べることがチェーンストアづくりと理解されたのです。ここから、この連載の最初に取り上げた「地域密着を目指す商品構成の個店経営か、共通商品のチェーンストアか」という別の問題として、とても変なふうに展開されたのです。

 これには、流通メディアとコンサルタントが誤解していたことからの責任もあると思っています。

 そして、この問題に、実はコンビニが絡んでいたことも関係しています。

 コンビニでは、既存の店舗資本を利用するため、フランチャイズの仕組みをとることが多い。この中ではオーナーは個々に存在します。本部が商品づくりを行い、個店のオーナーがフランチャイズのチェーンストアの仕組みに乗って自店の経営を行う。

 フランチャイズのコンビニは、チェーンストアの仕組みそのものですが、これがなぜか、個店経営であると誤解されたのです。意図的かあるいは無知からか、誤解して喧伝(けんでん)する流通メディアと、コンサルタントと流通評論家がいたのです。

 まとめていえば、①標準化が、わが国では商品構成の共通化としてだけ理解されたこと、②そのため、店舗作業と本部作業の標準化に着手されないまま、来てしまったのです。

 その結果が、わが国のチェーンストアの人的生産性の低さになっていますね。罪深いことと思っています。