国内のショッピングセンター専業最大手デベロッパーであるイオンモール。同社の吉田昭夫社長に事業展開の基本戦略について語ってもらった。

『販売革新』2018年11月号のインタビューに収録し切れなかった内容を中心に編集をしています。雑誌のインタビューも併せてお読みください。

 当社は国内外で事業展開しており、海外と国内では戦略が大きく異なります。投資はイオンモールが双方にするので、各国の戦略を将来にわたってどう考えていくかが重要になります。

 特にASEAN(東南アジア諸国連合)地域は経済成長の時期で、平均年齢は20代後半、人口ボーナスもあり中間層が増え、車の所有率も高まるなど、日本のショッピングモールが一気に増えた時期のような様相です。

 中国はモールの出店がある程度進み、日本に近い環境にありますが、経済成長率は日本よりはるかに高い。

 日本は少子高齢化で人口は減少。Eコマース(EC、電子商取引)が競争を始めるステージに入っています。

 ASEAN、中国、日本で当社が商売をする環境は全部違う。まずこういう認識です。

海外はエリアでのブランド価値を高める

 マーケットの成長力は圧倒的にASEANにあります。当社はベトナム、カンボジア、インドネシアで展開しています。新興国なので成功した日本のモデルを持ち込めばいいかというとそれはノー。ASEANはものすごい速さで成長しているので、オンラインも電子マネーもキャッシュレス決済も一気に入り、人々にはインターネットを通じて瞬時にグローバルな情報が入る。すぐに物欲からコト欲に移り、空間やコミュニティを楽しむといった次のニーズが一気に来るので、日本の先をいく最新モデルを投入しなければならないのです。

 だから今年5月に開いたカンボジア2号店のセン ソニック シティは完全なエンターテインメントモールに仕上げました。14年に開いた1号店のプノンペンはカンボジアの中心部に従来型のアパレルを中心に雑貨や飲食をバランスよく配置したモールで、年間1800万人が来場し、まずまずの良い数字が出ています。

 しかし2号店では思い切ってコト消費に振ったモールをあえて造りました。スケートリンクを入れ、観覧車を付け、巨大なフードエンターテインメントを展開。イオンモールが日本で展開するエンターテインメントのコト消費をはるかにしのぐモールをあえてカンボジアに出現させたわけです。お客さまはまだ若いので順応性が非常に高く、すぐに体内化してしまう。これによって現地では企業としてのイメージをかなり高められました。その後、このモールも増床していきます。

 出店はあまり飛び地にせずにドミナント(地域集中出店)でエリアのブランディングを構築し、イオンモールの認知度を高めてきました。

 その結果、グローバル企業から選ばれるようになってきました。例えばフランスのスポーツショップ「デカスロン」や英国の「マークス&スペンサー」、シンガポール発のシューズ&バッグブランド「チャールズ&キース」など日本ではなかなか出店してくれない企業も当社を選んでくれる。彼らにとって日本よりもプライオリティ(優先順位)の高い施設になっているのです。

 もう1つはガバメント。イオンモールが開業すると街づくりが進むので、地方政府が開発に当たってサポートしてくれるようになりました。

 これがASEANの展開の仕方です。中国でもASEANでも海外でこだわっているのは駐車場など今後、必要とされるインフラをいかに具備するか、そして安心、安全、清潔という快適な空間をいかにつくるかということです。新興国ではなかなかできないオペレーションで差別化をしていこうということです。

 また中国では日本のクオリティを持ち込んでいます。中国は新興国のように見えますが、実際は日本よりも飽和状態でデッドモールだらけです。当社が何とか中国でやっているのは日本のクオリティが差別化になるから。出店地域に既存モール以上のものを造ればお客さまに選んでもらえるのです。マーケットは無尽蔵です。だから増床と新規開業は並走させているのです。

 これらの施策を海外では戦略的に進めていて、今上半期に海外で営業黒字化を達成しました。初期投資が重いので4、5年前がマイナスのピークだったのですが、毎年飛躍的に利益改善が進んで黒字化のステージに入ったのです。今後はマーケットそのものが成長していくので、ある程度順調な推移をする見込みです。

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※『販売革新』2018年11月号に本記事とは別にイオンモール吉田昭夫社長のインタビューが掲載されています。

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