スシローの都心攻略店舗「五反田店」。

 2010年前後、回転寿司は3強(あるいは御三家)の時代と言われていました。今はプレイヤーが1社増えて四天王の時代です。ここでいう3強とはスシロー、くら寿司、かっぱ寿司のこと。そこにゼンショーグループの「はま寿司」が加わりました。

 一方で、業界1位のスシローと元気寿司(業界第5位)が経営統合に向けて動き出しています。このことで、回転寿司業界の寡占化がより鮮明になってきました。経営統合を主導した米卸の最大手「神明」は、元気寿司を傘下に置いていましたが、業界3位以内に入らないと淘汰されるといった危機感を抱いていたと言われています。

 回転寿司は成長を続けていくことができるのでしょうか? それが本稿のテーマです。

日商100万円の尋常ならざる世界

スシローの高級皿「贅沢ごちとろ」(280円+消費税)。オーダーにより高速レーンで運ばれたが、減速時にウニが下に落ちてしまったと推測される。

 回転寿司の市場規模は約6000億円。四天王の売上高を合計すると約4500億円ですから4社で75%のシェアを確保しています。ちなみに居酒屋の市場規模は約5兆5000億円で、専業上位4社(モンテローザ、大庄、チムニー、ワタミ国内外食)の(店舗)売上高合計は約3200億円ですから、シェアは6%弱でしかありません。

 居酒屋が店内環境、メニュー、価格、接客サービスなどに創意や工夫を取り入れて、差別化するのに対して、回転寿司は店舗開発力(投資力)や仕入れ・調達力が問われます。寡占化されやすい業態であり、プレイヤーは少数に限られてきます。同質化競争に陥っていくのです。効率を追求すると現在のビジネスモデルにいや応なく着地したのでしょう。

 郊外立地を主力に駐車場70~80台を用意し、客席数200席、客単価1000円、1日4~5回転、基本1皿2貫100円(スシローの都心店は120円)、レーンは従前のセルフとタッチパネルの併用といったところが基本フォーマットです。

 各チェーンとも中小型店を残しているので、上記のフォーマットに単純に当てはめてはいけませんが、日商を平均すると、スシローは約100万円、くら寿司は約80万円程度です。スシローは原価率を「おおむね50%」とうたっています。この原価率の高さが、かっぱ寿司など他の中小チェーンを引き離した要因です。高い原価率を維持して営業利益を確保するには人件費率を下げる必要があり、他の業種と比較して高い売上高が求められます。郊外のレストランで日商80万~100万円というのは尋常な数字ではありません。

サイドメニュー拡充は諸刃の剣

 過去にさかのぼると1970~80年代は「ファミリーレストラン(FR)御三家」の全盛時代。すかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズの3チェーンが週末は車に乗って家族で食事に行く新しいライフスタイルを提供。ステーキ、ハンバーグ、エビフライ、デザートにコーヒー。家族にとってはハレの食事でした。指標は100坪、100席、客単価1000円、1日3回転、日商30万円。郊外レストラン「無店時代」の指標であり、ファミレスに勢いのあった時代。それでも日商は30万円程度でした。

 90年代に入り、バブル崩壊と過当競争を勝ち抜くために、すかいらーくが低価格業態「ガスト」にシフト。しかし、客単価減を客数で補えず、オペレーションが荒廃していきました。ここから混迷期に突入したのは周知の通りです。

 その一方で、人口減、少子高齢化、単身世帯の増加といった今のこの時代に、回転寿司業態はさらなる成長戦略を描きます。くら寿司の直近4年の店舗数は「331→344→365→385店舗(16年10月期)」、スシローは16年に再上場を果たし、毎年30~40店舗の出店を中期計画に記しています(17年9月末で466店舗)。

 著者はスシローが新規出店した地域を取材した経験があります。前述した寡占化の数字が示す通り、地場の回転寿司店を “なぎ倒していく” 状況でした。1店舗で年間3億円強の売上げを持っていくわけですから、その周辺の中小回転寿司店には大きな影響を与えます。

 中小店からシェアを奪いながら、デザートや揚げ物や麺類といったサイドメニューを増やすことで、他の業種からもお客を奪っている状況です。

 サイドメニューの拡充は諸刃の剣と言われています。客層や利用動機を広げる効果はありますが、主軸の「寿司」が疎かにになり、専門性も薄れて、客離れを招く負のスパイラルに入ります。各チェーンとも危険な兆候が見てとれます。

 もう1つの危険な兆候。スシローは先の中期計画の中で「都心型店舗、小規模商圏対応の店舗を展開することで、従来と異なる利用動機・顧客層を取り込み、 更なる売上機会の追求も図って参ります」と記しています。

 都心型店舗は物件に左右されるため店舗フォーマットや出店基準がイレギュラーになりがちです。15年から都心部で出店を開始した“回らない寿司店”は、数店舗を展開しましたが、16年に全て撤退しました。自社のメイン業態よりも客単価の高い業態開発はおおむね失敗する教訓通りになりました(ロイヤルホストが90年代にカジュアルイタリアンを立ち上げて失敗など)。

 そこで、スシローは本業である「回る寿司」を16年に池袋、17年に五反田へ出店しました。都心への再攻略です。

 しかしながら、スシローの売上げのほとんどは郊外店にあります。

 果たして、先細りが見える郊外において、客単価1000円、年商3億円の “巨艦フォーマット”を出店し続けられるのか?