日本政府は2016年3月、Bitcoin(ビットコイン)などの仮想通貨が「貨幣の機能」を持つことを認める閣議決定を行った。それが契機となり、ビットコインを店頭での決済に使えるサービスが日本でも普及し始めた。ヨーロッパやアメリカでは既に多くの店舗でビットコインが使えるようになっており、外国人旅行客の売上げを伸ばしたい店舗にとって、ビットコイン決済は検討する価値があるかもしれない。

仮想通貨(暗号通貨)が注目される背景

 仮想通貨の歴史は、分散型コンピュータネットワーク技術であるブロックチェーンを採用したビットコインに関する論文が08年11月に公開されたことに始まる。ブロックチェーンとは、「ブロック」と呼ばれるデータの単位を一定時間ごとに生成し、チェーンのように連結して保管する形式のデータベースを指す。

 具体的には、参加者全員がこれまでの取引記録を全て記載した台帳を持っており、ビットコインを使った取引が発生するごとに、その内容が全ての台帳に追加される。これらの仕組みにより、ブロックチェーンはデータの改ざんが実質的に不可能であるほか、過去の取引を容易にトラッキングできることや外部からの攻撃に強いことなどが特徴として挙げられる。また、公開鍵暗号と呼ばれる強固なセキュリティを誇る技術が採用されていることから、ビットコインのような仮想通貨は海外では「暗号通貨」と表現されることが多い。

 ビットコインには中央管理者が存在せず、利用者は民間企業が運営する取引所と呼ばれるサイトで両替して入手する。入手したビットコインはウォレット(財布)アプリに保管され、アプリを使って個人間でビットコインの送金が可能になる。取引所では為替や株式、コモディティ(商品)のように売買が頻繁に繰り返されて、価格(交換レート)が常に変動している。ビットコインは発行できる総量が決まっている上に、有事の際の資産逃避先としても有望視されつつあることから、最近ではむしろゴールド(金)に似た値動きを示しているという指摘もある。

 ちなみに、17年4月にマネーロンダリングや不正利用を防止する目的で法律が改正され、ビットコインなどの仮想通貨を国内の取引所で売買するには、本人確認書類の提出や住所確認など、証券口座を開設するのと同等の本人確認手続きが必要となっている。

店頭の決済手段として使われだしたビットコイン

 ビットコインは、もともと個人間の送金が簡単に行える仕組みとして考案された。ウォレットアプリには、銀行の口座番号に相当するビットコインアドレスが割り振られており、アドレスを指定することで銀行などの金融機関を一切介することなく、アプリから無料もしくは非常に安い手数料で送金できる。

 操作はほぼ一瞬で完了するが、ビットコインの移動を第三者が承認する手続きに約10分かかる仕様になっている。この10分のタイムラグは、フリマなど個人間売買の決済には何ら問題ないが、店頭での決済には大きな障害になってしまう。ビットコイン決済サービスは、このタイムラグを解消して、QRコード型のスマホ決済とほぼ同じ手順で瞬時に決済できるようにしたものである。

 国内では、仮想通貨の取引所を運営するビットフライヤーやコインチェックなどがビットコイン決済サービスを提供している。ビットフライヤーが提供するビットコイン決済サービスは、17年4月にビックカメラ2店舗に試験導入された後、17年7月にはビックカメラの全店舗で正式に導入された。その後も、丸井グループや大手旅行代理店のエイチ・アイ・エスなどに相次いで導入されている。

 取引所「コインチェック」を運営するコインチェックは、17年7月からリクルートライフスタイルのモバイル決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にビットコイン決済機能の提供を開始した。モバイル決済 for Airレジは、「支付宝(アリペイ)」などのスマホ決済に対応したサービスで、ビットコイン決済機能が追加されることで、インバウンド対応が強化された形だ。

 ビットコイン対応が始まると同時に、メガネスーパーが全334店舗での導入を決めた。モバイル決済 for Airレジは、iOS対応のタブレットとインターネット環境があれば導入の初期費用はかからないため、今後、導入事例が増えることが予想される。コインチェックによると、16年末の時点でビットコインを支払いに使えるのは国内で約4200店であるが、同社では17年末までに2万店規模にまで拡大させる目標を掲げている。