日本でブログが本格的に普及し始めたのは2010年ごろからで、日本最大級のブログサービスを提供しているのがサイバーエージェントです。そのサイバーエージェントが運営している「アメーバ」のブログサービス「アメブロ」は、04年からサービスの提供が始まりました。その動きに呼応するようにファッション誌の発行部数が減少していきました。

 例えば、赤文字系と呼ばれた雑誌『キャンキャン』は蛯原友里や押切もえが看板モデルとして人気を博していた06年当時、80万部に迫る発行部数を記録していたものの、現在では12万部(18年4月現在)と激減しています。雑誌やテレビに登場するだけだったモデルやタレントたちがブログを通じて直接生活者へ情報発信するようになり、ファッションブロガーやインフルエンサーと呼ばれ始めた頃と重なるのです。結果、ファッション情報のメインストリームが、雑誌からインターネットへと移っていったのだと考えられます。

 ファッションブロガーの登場によって、個人ブログにも注目が集まるようになりました。すると、サービスプロバイダーの市場参入も相次ぎ、ブログプロバイダー間の競争も始まりました。自分の発信したい内容や、目的に応じた最適なプロバイダーを選ぶ時代になったのです。

 そんな動きの中で、もっと気軽に簡単に画像投稿ができると人気を集めたのがインスタグラム。ビジュアル性が重要視されるファッションとの相性も良く、ファッションブロガーたちもインスタグラムを併用し、インスタグラムをメインに情報発信するインフルエンサーも目立ち始めました。

 この流れで、ファッション情報を伝える手段が「文」から「画」へと変わったのです。利用しているユーザーも「読む」から「見る」ことによって瞬時に判断できれば、得られる情報量も増えます。そうした利点もインスタグラム人気を後押ししたのではないでしょうか。

 しかし、今度は増え続ける情報をいかに合理的に簡単に入手するか、という問題が生じてきました。ポータルサイト、RSS、アグリゲーションサイトやキュレーションメディアといった効率的に情報を届けるための数々の手段が生まれてきたものの、完全に解決できたとは思えません。そこで効率的な情報獲得手段の一つとして注目したいのが、身近な友人、知人が発する情報で、いわゆる口コミと呼ばれるものです。

 一日の限られた時間の中で最適化された情報をどう得るかという視点は、重要性を増し続けています。検索サイトからではなくツイッターやインスタグラムの検索機能を使って答えを探す人が増え始めているのは、ユーザーの合理的な選択の結果とも言えます。特にファッション分野であれば、ファッションに強いSNSから検索することで自分の知っている「人」をフィルターとしながら、信用できる情報を自然と選別しているのです。

 

「バズる」コンテンツは6つの要素から成る

 インターネット・ミームと呼ばれる動きがあります。それはインターネットを通じて人から人へと、通常は模倣として広がっていく行動を指します。通常、それはイメージ、ハイパーリンク、動画、画像、ウェブサイト、ハッシュタグの形を取って広がっていきます。これらの小さな動きが社会的ネットワークやブログ、直接の電子メール、ニュースソースで伝わっていき、瞬時のコミュニケーションが口コミでの伝達を容易とするために、流行と評判はインターネット上で素早く拡大していきます。

 そうした中で「バズる動画」「バズる記事」といった「バズるコンテンツ」が注目されています。バズマーケティングというマーケティングテクニックまで登場しています。

 米国のペンシルベニア大学ウォートン・スクールマーケティング准教授のジョーナ・バーガー氏は著書で「STEPPS」というキーワードを提唱しています。バイラル(口コミから拡散)するコンテンツが持つ特性として、他人に自慢できること(ソーシャルカレンシー)、思い出しやすいきっかけ(トリガー)、強い意外性(エモーション)、人の目に触れる(パブリック)、実用的な価値(プラクティカルバリュー)、物語(ストーリー)といった6つの要素を挙げています。それらの頭文字を取ってSTEPPSと、バイラルからバズるコンテンツ要素として分析しています。

コミュニケーションは静止画から動画へ

ツイットキャスティング (運営会社:モイ):モイが運営するスマートフォン端末、PCからでも手軽にライブ配信を行えるサービス。通称「ツイキャス」や「CAS(キャス)」などとも呼ばれている。コメント以外に配信者へアイテムをプレゼントできる機能が特徴。利用者は10代~20代が中心。

 ファッション情報は「文を読む」から、「画を見て」判断する流れになっています。

 流行語にもなった「インスタ映え」が示す通り、ビジュアル完成度が重要視されています。すてきな景色や背景はもちろん、撮影テクニックや一眼レフといった機種にまでこだわる人が出てきました。

 一方で、若い世代を中心に撮った画像を加工できるアプリが人気を集めています。いわゆる加工アプリと呼ばれる種類で、「盛った」(実物以上に良く見せる)写真を投稿したりして楽しんでいます。人気加工アプリとして有名なのは「スノー」や「ラインカメラ」などがあります。

 さらに今度は「画」から「動」へとコミュニケーションツールが移行するかどうかに注目が集まりだしています。主なユーザーは10代~20代の若者たちである「ツイットキャスティング」や「ティックトック」といった短い動画を投稿するSNS。これも動画編集機能に加え、音楽も交えた投稿動画を楽しめます。ダンスなどのパフォーマンスを中心としたSNSという特性からファッションとの相性については未知数ですが、こうした新しいツールから文化や流行が生まれる時代だと言えるのではないでしょうか。

ティックトック(運営会社:バイトダンス):中国のメディア企業バイトダンスが運営するリップシンク(口パク)短編動画共有コミュニティサイト。音楽に合わせて15秒間のオリジナル動画を作成し投稿できる。非公開設定で投稿閲覧者を絞る設定もある。利用者は10代~20代が中心。

IGTV(運営会社:インスタグラム):インスタグラムからリリースされた動画投稿・視聴アプリ。最長60分までの動画投稿が可能。インスタグラムのフォローアカウントが簡単に移行できる。縦型動画でスマートフォンによる視聴に適している。フェイスブックとも連携できる。

 

 

※本記事は『ファッション販売』2018年11月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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