「ドンキホーテホールディングス2018年6月期決算業績説明資料」より

 米国GMSの元祖「SEARS」(PBコンテンツ型)が破綻に瀕する中、ドンキホーテホールディングス(HD)によるユニーの完全子会社化、イオンとフジの資本提携、セブン&アイ・HDとイズミの提携と、行き詰まるGMSの再生を模索する動きが相次いでいるが、その本質は「日本型GMS」(中央集権プラットフォーマー型)の終焉と喝破すべきであろう。

「粗利ミックス」「知恵ミックス」「調達ミックス」

MEGAドン・キホーテUNYに転換した1号店(大口店・神奈川県横浜市)

 今春からドンキ(MEGAドンキ)化したユニーの6店舗は売上高が1.9倍、客数が1.7倍、粗利益が1.6倍……という圧倒的成果を得てドンキホーテHDによるユニーの完全子会社化という決断につながった。そんなマジックが成り立ったヒ・ミ・ツをドンキホーテHDの大原孝治社長が明かしているが、その骨子は「粗利ミックス」と「知恵ミックス」と「調達ミックス」に尽きる。

 大手GMSは衣料・雑貨などの非食品で稼げないため食品の売上構成比が肥大し、食品で儲けようとして価格競争力も集客力も失ったが、ドン・キホーテは衣料・雑貨で稼げる(スポーツ・レジャーの粗利益率は34.2%/時計・ファッションは30.6%)から食品は売上構成比(小売売上高の34.1%)も粗利益率(15.5%)も抑え、価格競争力も集客力も圧倒的優位にある(全て18年6月期)。ドンキ化したユニー6店舗の3〜7月期実績でも、食品の売上構成比を67.6%から57.7%に圧縮して日用雑貨・スポーツ&レジャー・家電など住関連を18%から35%に伸ばし、非食品の儲けで食品の価格競争力を高め、客数も売上げも飛躍的に伸ばしている。

 もう1つが徹底した権限移譲による「知恵ミックス」で、創業者 安田隆夫氏の顧客と現場を最優先する哲学を受け継いだ大原社長の『真の企業力は従業員が考える知恵の総量だ』という発言に言い尽くされている。実際、ドンキの調達は地域支社や各店舗の売場担当者が担うスポット商品(流通在庫の放出品など多様な「調達ミックス」が魅力)が主役であり、本部商品も各店舗が選択するというSMIに徹している。

 幹部の地位も信賞必罰で流動性が高く昇格も速いが降格も茶飯事で、組織や地位に連綿とする悪習に陥らぬよう安田隆夫氏の企業理念集「源流」に基づく「全員が情熱商人」のスピリット研修が繰り返されている。

「日本型GMS」を追い詰めたホントの元凶

真の企業力は従業員が考える知恵の総量だ』という企業哲学は実はドンキだけの専売ではない。豊田喜一郎と大野耐一が築き上げたトヨタ生産方式の本質も『企業の強さとは自分で考え動く現場を育てることだ』、と野地秩嘉氏の「トヨタ物語」に喝破されている。

 過度の中央集権が現場の創意工夫を圧殺してきた「日本型GMS」のチェーンストア・マネジメントこそ、「企業総体の知恵」を最小化して活力を奪い、衰退をもたらした元凶ではなかったか。大手GMS企業における異常なまでの縦割り組織と上意下達、ヒラメ体質の蔓延は、それだけで企業の活力と変化対応力をとことん矯め切っている。

 80年代までのメインフレーム集中処理から90年代のワークステーションによる分散処理、そして今日のネットワーク処理とブロックチェーンという情報システムの進化と民主化を思えば、70年代の米国で確立された中央強権的なチェーンストア・マネジメントに固執してきたわが国のGMS企業が衰退を余儀なくされたのも必然と思われる。既に欧米の先進チェーンは大なり小なりネットワーク型マネジメントに切り替わっているのに、わが国大手GMS企業は前世紀の遺構にしがみついたままだ。

プラットフォーマーとしての責務を放棄

「日本型GMS」のもう1つの欠陥は流通プラットフォーマーとしてのアイデンティティの欠如だ。流通プラットフォーマーのレーゾンデートルは消費者とサプライヤーの間に立って両者の利便を最大化しコストを最小化せんと切磋琢磨し続けることであり、プラットフォーマーとしての利益をコンテンツ開発に投じたり、両者を不要に選別して利便と品揃えを限定するのは本道を外れている。

 PB商品開発に過剰に入れ込んだり(PBコンテンツ型への先祖帰りでもある)、ゲタ履きの顧客を切り捨てて高級化路線に迷い込んだり、外部コンテンツをシャットアウトして顧客とサプライヤーを遠ざけ、経費率を肥大させ多様性を損なって競争力を失ったことが悔やまれる。そんな余力があったらプラットフォーマーとしての利便とローコストを追求すべきではなかったか。

 そんなわが国GMSに比べれば、アマゾンは何と真摯にプラットフォーマーとしての責務にひた走っていることか。広くサプライヤーに門戸を開き、ライバルも導き入れ、顧客とサプライヤー双方の利便とローコストを追求して膨大な投資を続けている。「デス・バイ・アマゾン」は店舗からECへという購買慣習の変化のみならず、流通プラットフォーマーとしての在り方も問うているのではないか。

 店舗流通業でもドンキは勢いを失っていないし、ECでも勢いを失って行き詰まる事業者もある。何が明暗を分けているのか、商人の原点に立ち返って考えるべき刻だと思う。