調剤薬局が安い仕入れ価格を求めたことで、米国に140社あった医薬品卸は3社になった。

「個店経営か、チェーンストアか」というわが国特有の問い掛けがサイクル的に出る原因は、日米の小売業の商品仕入れ方法の違いに求めることができます。

 第2回は、小売業への就職を希望している男子学生(大学4年生)の江口大雅君と一緒に商品流通への理解を深めていきます。

 吉田:最初に、前回、申し上げたことを店舗の商品仕入れから振り返りましょう。

  わが国では卸売業が発達していて、全国隅々の個店にまで、一個一個の商品を運んでくれますね。米国にはこうしたことがないのです。 日本のメーカーも例えば、花王のようにベンダー部門(販売部門)を持っていて、卸と同じように少量の商品でも店舗まで配送してくれます。ベンダー部門を持たないメーカーは卸に委託して、個店への小口の商品配送をしています。卸はメーカー各社の商品を持っていて、商品総合をした卸になっているのです。

 商品により、若干の違いがありますが、この中間流通のマージンは5~10%です。 メーカー商品の輸出入を行う商社のビジネスモデルが元になっていると思います。

 江口:他の国は知らないので、卸があるのは普通に思えますが、米国では卸はないのですね?

 吉田:米国と欧州では、店舗数を増やしたチェーンストアが価格競争からメーカーとの量の直接取引やプライベートブランド(PB)商品の開発をしたため、ほとんどの商品分野で卸は消えてきたのです。

 わが国では、卸の存在が個店での単品バラでの仕入れを可能にしています。ここから個店経営という考えが出てきます。総合スーパーの経営者も、商品は卸から仕入れればいいと思っているからです。

 わが国の卸も180万店もあった商店街型の家業店が減り始めた1980年代からは、統合・合併をして26万事業所(社数で13万社)に減っています(商業統計2014年)。毎年、ほぼ3%ずつ10年で社数が3分の2になる速度で減ってきたのです。この原因は主要顧客だった商店街の家業型店舗(100万店)の多くがなくなったからです。

  この卸の存在のため、日本ではメーカー直の取引は少ない。小売りのPB開発も衣料と家具ではユニクロやニトリなどの先行企業によって90年代から増えましたが、最も需要額が大きな食品で、PBが増えたのはやっと08年からです。

 もっとも、増えたとは言ってもまだ総合スーパーを中心とした年商の大きな大手小売りでも15%程度でしかありません。これは、仕入れ価格の高さをいとわなければ、個店での仕入れが存分にできるからです。 大手の小売りでも卸からの仕入れが多いため、5~10%くらいの卸マージンを売価に加えても、それが他より高いとは意識されていないのです。

  この卸の存在がわが国でセントラル・バイイングではなく、個店で仕入れる個店経営が可能になっている理由です。

 中間物流のバラ配送のコストダウンを行って機能が進化した総合商品型の卸は、店舗に品揃え、つまり売場づくりのサポートをしています。

 これをリテールサポートと言っているのです。店舗の棚の80%くらいはリテールサポートとして卸からの品揃え提案でつくられています。

日本は消費財流通の9割を卸が担っている

 吉田:具体的にするため、数字で言います。

 わが国の卸の総年商は14年で492兆円と、小売総額127兆円の3.8倍もあります。経済産業省の商業統計の小売総額は約27兆円の自動車とガソリン小売りを含んでいますから、いわゆる店舗販売の小売総額は、78万店で、100兆円程度です(14年)。

 国内卸には一次卸、二次卸、三次卸まであり、工場への原材料の卸もあって売上げは二重、三重に計算されています。

 わが国の78万店の店舗仕入れ額(75兆円)では、68兆円(約90%)以上がメーカー直でなく、店舗まで単品バラ配送をしてくれる総合型卸から来ていると言っていいでしょう。数字で見るとびっくりすると思います。

 編集部:本当に、わが国の消費財流通のおよそ90%以上を卸が担っているのですね。しかし、消えたということは、米国にも日本型の卸はあったのですね。

 吉田:米国で卸が存在したのは70年代まででした。チェーンストアの店舗数が増えると、DC(ディストリビューションセンター:集配センター)での価格の有利さを求めて、セントラル・バイイングでの「量の仕入れ」になって行ったので、卸は事業閉鎖するか、物流業に転換したのです。

 そして、この物流業はメーカーとチェーンストアの集配センターの間の商品配送を担うようになります。大手チェーンのウォルマートなどは、この物流業を買収しています。

 米国で大陸のフリーウェイを走ると、ウォルマートやコストコと大きく書いた白い大型トレラーが走っているのを見掛けます。その多くがメーカーからウォルマートやコストコの集配センターへ商品を運んでいるものです。

 ただし、米国や欧州でも医療用の医薬品(医師の処方が必要な医薬)では、病院と調剤薬局の小口仕入れが多い。このため、マッケソン(医薬品卸シェア35%)、カーディナル・ヘルス(同32%)、アメリソース・バーゲン(同28%)の3大医薬品卸が医薬の小口分割配送の機能を担って活躍しています。

 しかし、米国に140社あった医薬品卸も卸価格の競争のため、今は3社に減っています。病院、ウォルグリーンやCVSなどの大手チェーンドラッグ、個人経営の調剤薬局が安い仕入れ価格を求めたからです。