かつて、ファミリーマートには「パン・パシフィック構想」という大戦略があった。

 それは2005年前後、上田準二社長の時代の話。

 台湾(1988年)、韓国(1990年)タイ(1992年)への進出に続き、2004年は7月に中国・上海で店舗展開を開始。10月には米国進出のために現地法人「FAMIMA CORPORATION」を設立し(伊藤忠商事、ITOCHU International Inc.と)、年末にはアジア1万店を達成、翌年7月からアメリカ西海岸への出店を開始と、店舗展開の軸足を海外に移し始めようとしていたころのこと。パン・パシフィック(環太平洋)の地域・国でファミリーマートを展開し、2008年度末にはグローバル2万店を達成、2010年度頃には世界最大規模のチェーンになろうという壮大な構想であった。

 だが、海外店舗の約6割を占めていた韓国からは2014年に撤退。米国での事業も2015年に清算し、ファミリーマートの店舗を太平洋を取り巻くように配することはできなかった。

ユニーは任せるが、ドンキホーテHDの株を持つ

 2018年10月11日、ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)が「株式会社ドンキホーテホールディングス株式に対する公開買付けの開始予定及び子会社の異動を伴う株式の譲渡に関するお知らせ」を発表した。

 この内容はこうだ。

(1)ユニー・ファミリーマートHDの完全子会社がドンキホーテHDの普通株式を公開買付けする(買付予定数の上限は3210万8700株〈所有割合20.17%〉で、買付代金は2119億1742万円)。

(2)ユニー・ファミリーマートHDの連結子会社であるユニーの全株式をドンキホーテHDに譲渡する(譲渡株式数は12万株、譲渡価格は282億円/ドンキホーテHDは既にユニー株式の40%を保有しているので、これで100%の株式を取得することになる)。

 また、同日、ドンキホーテHDも「ユニー株式会社の株式取得(子会社等の異動)及びユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社の完全子会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関する意見表明のお知らせ」を発表。

「本公開買付けが開始された場合、本公開買付けに賛同し、また、本公開買付け後も当社株式の上場が維持される予定であるため、株主の皆様が本公開買付けに応募するかは否かについては株主の皆様のご判断に委ねることについて決議いたしました」との意見表明がなされた。

GMS撤退だけなら現状から後退してしまう

 一昨日から(2)に関するニュースが流れ、ユニー・ファミリーマートHDはコンビニ事業だけに集中するとの報道があったが、それではユニー・ファミリーマートHDのGMS事業がドンキホーテHDに移るだけ。ドンキホーテHDと共同実験を行うコンビニの取り組みは残るだろうが、現状から後退した業務提携関係に戻ってしまう。

 これに対して、(2)に(1)が加わると、意味合いは全く違うものになる。

 ユニー・ファミリーマートHDは本業(前身はファミリーマート)のコンビニ事業を伸ばし、不慣れなGMS事業はノウハウを持つドンキホーテHDの力をより借りて成長させる。ユニー・ファミリーマートHDがドンキホーテHDの20%強の株式を持つことでグループ関係を築きながら、持分法適用関連会社として連結決算へのプラスの影響も得る。

 自分たちの弱い部分は強いところに任せ、大資本を背景に、そこと結び付きを強める。日本のコンビニ本部が商社資本の会社になってから鮮明になった『餅は餅屋』の発想を今回もしているように感じる。

商号変更でドンキホーテHDは環太平洋の企業に?

 今回、もう1つ、注目の動きがあった。

 それはドンキホーテHDが10月11日開催の取締役会で、商号を「株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」に変更したことを決議したことだ。

 この社名を見て、思わず、ファミリーマートの「パン・パシフィック構想」を思い出してしまったわけだが、これをドンキホーテHDの大原孝治社長は「強い決意の表れ」と言い、環太平洋地域での事業拡大を進めると受け取れる発言をした。

 ユニー・ファミリーマートHDの髙柳浩二社長も「海外も含めて、ぜひドンキさんと一緒にやらせていただきたいと思います」と言い、台湾のファミリーマートでドン・キホーテとの共同店をやるなどのアイデアを例に挙げ、「伊藤忠を含めたグループ全体の強みもございますので、それらを総動員して、新しい業態、新しいモデルをつくっておきたい」と話す。

 

 今回のユニー・ファミリーマートHDによるドンキホーテHDのグループ化。これはユニー・ファミリーマートHDにとって国内でのGMS事業とコンビニ事業のさらなる成長に加え、海外での事業拡大を目指すもののように感じる。

 ドンキホーテHDにとってもパン・パシフィック・インターナショナルHDとして環太平洋で事業拡大をする際に伊藤忠商事の力は役立てられるし、ユニー・ファミリーマートHDにとってもインバウンドに加え、アウトバウンドでも強さを発揮しつつあるドンキホーテHDの力を取り入れることができる。

 ドンキホーテHDの力を借りて再び、「パン・パシフィック構想」を実現させる。しかも、今回はコンビニに加え、GMS、ディスカウントストアの3業態をベースに、国や地域に合わせた攻め方ができる。そんなユニー・ファミリーマートHDの「長年の夢」実現を目指す姿を、今回の発表で想像してしまうのは私だけだろうか。