「ららぽーと名古屋みなとアクルス」の場合

 東邦ガス跡地再開発プロジェクトの中核商業施設で、東京なら江東区のような名古屋市有数の工業地帯ゆえ製造業従事者が多く、所得水準も女性比率も低く人口も減少傾向という難点のある立地だった。それ故、北側の中川区、北東側の熱田区、東側の南区など良質な近接地域から集客する必要に迫られ、ららぽーととしてはコンパクトなスケールにもかかわらず、さまざまな分野の有力企業と取り組んで食や住、スポーツやカルチャー、エンターテイメントなど、ライフスタイル軸でアップスケールな構成が図られた。

 
 

 正面右翼に2層の独立棟を構え、Tサイト風にカフェ一体で早朝から営業する蔦屋書店をはじめ、フードエンターテイメントとスポーツ&アウトドア、インテリア関連主体に、ファッションもライフスタイル業態と外資ブランド中心に構成して周辺の「郊外型SC」とは一線を画している。その一方で「赤ちゃん本舗」を軸に手頃なベビー〜キッズ関連や日常食品、ららぽーととしては手頃なフードコートなどで足元の集客にも気を配っている。

 近年の大型SCとしてはコンパクトな6万㎡級ながら、緻密に構成して足元と広域の多様なニーズを捉える「ららぽーと名古屋みなとアクルス」は、計画的に多様性対応を図った好例といってよいだろう。

多様性対応の二重構造が不可欠

 大型商業施設の構成は商圏と競合を精査してさまざまな二重構造を仕掛けるのが定石で、よほど深刻な競合に直面する劣位の施設でもない限り、リスクが大きく変化にも弱い“一本足打法”は現実的ではない。

 二重構造の軸は(1)足元対応と広域対応、(2)平日対応と週末対応、(3)日常カテゴリーと非日常カテゴリー、(4)主客層とサブ客層、(5)もの消費とこと消費、(6)時間節約と時間消費などでそれぞれが絡むが、近年のネット社会ではローカルネット対応も考慮されるべきだろう。アプリとGPSなどを活用するローカルSNSやローカルECはローカルテレビ同様、ナショナルなECに圧迫される地域の商業施設にとって画期的な反撃策となり得る。

 多様性対応は施設の建築やモールレイアウト、テナント配置にも反映されなければならない。電車客/バス客/自転車客/乗用車客はもちろんドライブスルー客やお急ぎ(時間節約)客と時間消費客、ペット同伴客や要支援客、表通りと裏通り、客数業態と客単価業態、時間節約業態と時間消費業態などさまざまな考慮が必要だ。

 そんな対応が必ずしも実行されないのは建築規制や経済的制約に加え、開発・建築部門と企画・リーシング部門の連携の悪さが指摘される。建築先行でハードが固まってから企画・リーシング部門に手渡されるという悪習は何とかならないものだろうか。稀に開発段階で建築部門に注文をつけでもすれば“越権行為”として叩かれる組織体質にも唖然とさせられるが、そんな悪しき二重構造は誰のためにもなるまい。