目標と自分との距離を最短にする

 例えば、小林氏と怒った当事者とはこのような会話になる。

小林「忙しい状態の中でホールの人に洗い場に入ってほしかったのですよね。それが怒ってどうなりましたか」

当人「ものすごく嫌な顔をされました」

小林「あなたが怒って目的を達成することができましたか」

 そして、小林氏はこのように促していく。

「目的を達成するための方法とはどのようなものなのかを考えようよ」

「目的と自分との距離が最短距離になるようにしようよ」

「あなたが相手にこうして欲しいと思ったことは、お願いすることで最短距離になりますよ。怒鳴ってしまうと距離が離れてしまいますよ」

「あなたが相手にお願いをすると、相手はあなたの中に快く入ってくれるはずです」

 小林氏はこう語る。

「このようなことは自分がいざこざの渦中にいると見えてきません。自分がそこから身を引いて、この状況を客観的に見たときに見えてきました。『なぜこの人は怒っているのだろう』という疑問から始まり、起こっている理由を解消すればいざこざは解決するのではないか、『なぜ怒っているのか』ということを分かろうとしないから、いざこざが絶えることはないんだと考えるようになりました」

 こうして同社には理不尽ないざこざがほとんどなくなり、W&Wとしての企業文化が醸成されていった。

あるべき労働環境を優先した現場体制

 同社では1店舗当たり正社員6人体制で営業している。そして、日ごろ「アルバイトファースト」の発想でアルバイトに大切に接している。

 例えば、雨の日はアルバイトの家に車で迎えに行き、帰りは家まで送る。誕生日プレゼントを手渡す。試験の準備で休むこともさることながら、店の繁忙期に旅行に行きたいという希望も受け入れている。そこで、正社員がアルバイトの抜けたシフトを補うようにしている。 

 このようなことから、店の都合でアルバイトの出勤時間が変更になっても、アルバイトからの不満が生まれないとのこと。アルバイトは15人いるが、求人で採用したのは3人だけで、他は全て既存のアルバイトの紹介である。

 正社員は22人いて新規採用の場合、既存の社員の紹介で入社してくる。「月6休」の体制になっているが、今後、さらに正社員の数を増やすことによって「週休2日」を早期に実現したい意向だ。

「正社員を増やしていく」という姿勢は、小林氏自身の経験則に基づいている。その考え方は「投資する方向が間違えていなければ、投資した以上に必ず成長することができる」というものだ。

 1号店の当時、売上げがない状態の中でこのような投資を行った。まず、料理の撮影をカメラマンにお願いし、メニューブックや看板に採用した。さらに、他の店にはない独創的な器を買いそろえて料理を盛付けした。すると、売上げが伸びていった。このようなビジュアルを向上させる努力が地元のお客さまに良い印象をもたらした。

 さらに、既存の社員に「社員比率を高めるぞ」と宣言して、実際に社員を増やしていったところ、お客さまが増えていった。従業員がゆとりを持ってお客さまに接することができたからだ。

 昇給についても同様だ。「これが達成したら、給料を上げます」ではなくて、「給料を上げるから、これを達成しよう」という考え方を取っている。小林氏はこう語る。

「この方法は、従業員のモチベーションを相当に高めます。『結果が出る前にやらないといけない』と考えるようになるからです。前者の方は、従業員からの信用度はとても低く、大抵は達成することができません」

お客さまがお帰りのときに、店内でお見送りをする

 店の運営では売上げを追うことをしない。常に、あるべき労働環境を優先して考えている。

 例えば、今年の8月にオープンしたばかりの4号店は店舗の体制が整っていないことから、店の休業日を月に6回設けている(9月中旬現在)。その理由は、いきなり無休で営業をするよりも、従業員の体制が整って、それによってお客さまが満足した方がいいと考えているからだ。お客さまが満足することによって、従業員も安心して仕事をしてもらうと考えている。

「あるべき労働環境を優先した現場体制を維持するのは、飲食業に入った人たちが飲食業から流出することを防ぐためです。そして、飲食業界の地位を向上させていきたい」

 このように小林氏は、飲食業界を変えていく姿勢を自社が率先して示していこうとしている。